チェルバラン……最悪の始まり
カカの言葉に空気が変わる。
「勘違いしないで欲しいのは、貴方の名前がコウヤにとっての危機になり得るからよ。今すぐに答えて、何故No.0なの」
強い口調、感情が先に出たように一歩前に踏み込みそう尋ねるカカ。
「その質問が来ることは予想してた。No.1……いや、カカ、君の思う存在に間違いないと思うよ、僕が君達【No.】の基本となるプロトタイプ、と言うより基礎になる存在さ」
プロトタイプと言う言葉を発しながらカカに一歩踏み出すゼロ。
「コウヤ=トーラスに話す前に軽く話しとかないといけないね、僕が何故、君達を知っているかを」
ゼロはそう言うと語り始める。
【 栄光の計画】 当初は人類を存続させる為の計画であった。
人間のデータと細胞組織から人工的に生み出し、急成長させた肉体に記憶を直接インストールして永遠に人が居なくならない世界を考え考案された悪魔の計画である。
しかし、世界はそれを赦さなかった。計画始動を目前にして、世界会議にて【 栄光の計画】は禁忌の科学として全世界で禁止される事になったのである。
【 栄光の計画】に携わった多くの科学者が拘束される事となる。
計画の発案者であり、責任者であった【科学者“レナンド=ブラウン】は人類最大の禁忌に触れた存在として無期懲役とされ、計画は完全に消滅した筈だった。
しかし、世界で起きた世界対戦が科学者レナンド=ブラウンの運命を大きく変える事になる。
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終身刑専用地下監獄【フォートレス】
レナンド=ブラウンは世界で起きた最初の戦争を「終焉の種火となるだろう」と監獄の中で口にしていた。
その言葉に対して、レナンドを嘲笑うように笑みを浮かべる男。
真っ黒の服に悪魔を思わせる羽の生えた角の悪魔をもようした銀色のバッジを襟に着け、腰には銃を装備した男、監獄で看守と呼ばれ恐れられる存在。
「何を今更、戦争が始まれば嫌でも世界は疲弊するもんさ、どちらの方向に向こうが、世界は勝利と敗者に別れるんだよ」
監獄の暗闇に光る煙草の火、看守から吐き出された煙が何時ものようにレナンドの体に吹き付けられる。
「ゴホッ、ゴホッ……頼むから煙草はやめてくれないか、煙たくてたまらん」
監獄の中で唯一の個室をあてがわれた存在、そして、薬品を使わなければどのような研究も許されている存在。
外に情報が漏れぬように徹底した情報操作をされた最先端で有りながら外との通信手段を持たぬ地下の監獄こそがレナンドの送られた【フォートレス】である。
「おっと、すみませんね。癖でつい火をつけちまう。で、博士? 今回はどんな理論を上の方々に送るんです。前回のような平和的な内容だと次は命に関わりますがねぇ?」
煙草を床に投げ捨て踏み消す看守。
「わかっている、この偽りの監獄で長生きなど望まんよ。だが、私は人の未来を、人類の希望を諦める気はない」
「変わった人だ、この地獄のような状況で希望を口にするかぃ、本当に飽きない人だ、だが……命は儚い。其れを忘れないでくださいね、博士」
部屋を後にする看守。
鉄の扉が “ガタン!” と閉められ鍵が掛かる音が室内に響く。
「私は人類の未来を悪魔のような存在に託すのか、いや……既に託しているのだな、世界は人類の住めぬ過酷な物になるだろう……その後の世界に希望を託す他ないだろう」
レナンドは静かに資料を開き、過去の自身が封印した研究を読み直す。
禁忌に触れる研究の多くはDNAに多細胞を合成し変異させるという物であり、当初の目的は感染病による組織の壊死を防ぎ新たな細胞を生み出し再生を促す為の研究であった。
しかし、レナンドが研究を封印せねならないと考える事故がラボで起きたのである。
レナンドの研究チームは成果をあげられない日々が何年も続いていた。
その研究内容こそ、封印した細胞進化型の再生プロジェクトであった。
そして、事件が起きたのだ。
研究員の一人がレナンドの許可もなく人体実験を行ったのだ。
孤児院から数人の子供を引き取り、住む場所を与え、食事を与えた。
そして、寝る前に検査と偽り、細胞進化を促す薬品を注射を使い子供達の体内に打ち続けたのである。
体質の合わない者は一月と持たずに死んでいき、半年が過ぎる頃には1人を残し全ての子供達が息絶えた。
レナンドは薬品の減り方に疑問を感じ管理を任せていた研究員を呼び出した事で全てが明らかになり、1人生き延びた少年は研究室に移さる事となり精密検査が行われた。
少年の名は“チェルバラン”……そして、全ての最悪が幕をあげる。




