ぶつかる思い2
ディアロッテはリーに対して、多くを語らなかった。
「語れば済むであろう事も他者が語るは烏滸がましい」と優しくて笑みを浮かべ口にしたのである。
その後直ぐにカカは一旦調査を中断するように部隊に指示をする。
カカは遺体を外に運ばせると一人一人の眼を指先で撫でて瞑らせていく。
最後に皆で手を合わすように指示をだすと死者への祈りを静かに捧げたのである。
静かに祈りが終わるとカカは死者達の服を炎で乾かした後に作り出し炎を指先に集めると一人一人に炎を放っていく。
カカの行動を不思議そうに見つめるリーは質問を投げ掛ける。
「なんで、わざわざ服を乾かしたの? 火葬するならあまり意味が無いようにみえるんだけど?」
リーの質問と表情に理解できないと言う表情を浮かべるカカ。
「アナタは死ぬ時に濡れた服に見開いた目玉を晒してくしゃくしゃのまま燃やされたいのかしら? 私なら絶対に嫌よ、死に際ぐらいは人のように扱われて死にたいもの。皆! 今から20分の休憩、後に調査再開とするわ良いわね!」
「はい!」「了解しやした」とカカの指示に従う兵達は各々で休息を取り始める。
そんな中、カカはアリスとリーを呼び燃え上がる死者達の前にしゃがみこみ話始める。
「人って燃えると凄い臭いがするわよね、とても嫌な臭い、不快極まりない悪臭とも言えるわ……でも、死んでいる事実を皆に伝えられるんだよね……」
カカの言葉にリーとアリスは無言のまま耳を傾ける。
「私は死んで腐ろうが、燃やされようがこんな臭いは発生しないの……私が野垂れ死にしても見つけてすら貰えないかもしれない……私はね作り物なの、過去の遺産により、人間をベースに作られた人間の亜種なの……」
カカは自身が作られた“No.”と呼ばれる殺人兵器であった事実、コウヤ=トーラスを暗殺しようとし、任務に失敗した事実、そして、コウヤがカカと名乗るきっかけを施した事を語った。
「私はコウヤと出会わなければ、未だに無感情のままに多くの命を刈り取り燃やし尽くしていたと思う、私はまだまだ、感情を出すのが下手だから上手く言えないけど、先に言うわ……不快な思いをさせただろうから、許して……その、最初のあれは、これ以上コウヤを誰かに取られたくなかったの……」
あまりに小さくか細い声で語られた「コウヤを取られたくなかったの」と言う言葉にアリスとリーは笑っていた。
「あはは、大丈夫だよ。私達はコウヤにただ助けられただけ、安心して、にしても……誤解してたのは此方だよ。勝手に嫌われてると思ってた、ごめん」とリーがカカに謝罪する。
「あ、あの……私もカカさんが怖い人だと勘違いしてました……その、すみませんでした!」とアリスも頭を下げる。
その光景にカカは笑いながら涙を頬に流した。
嬉しかったのである、不器用ながらに向き合う大変さをカカは知っている。
誤解され、敵であった事実から、コウヤの命を再度狙う気ではないかと警戒され過ごした日々、少しづつしか築けない信頼を積み重ねる大変さ、カカの部隊の殆どはそんな信頼の積み重ねから集まった者達であり、そして今、カカの横に座るアリスとリーは部隊の仲間達と同じように信頼の眼差しが向けられていた。
「なによ、アンタ泣かないでよ、私達が泣かせたみたいじゃない」
「あ、カカさん、泣かないでください、今ハンカチ無いんですよ」
カカの涙に焦る二人、そんな二人の後ろから「泣かせたんですか?」と追い討ちをかけるディアロッテ。
その悪戯な声にカカが笑いながら「泣かされてないわ。泣きたかったのよ」と冷静に受け答えをすると立ち上がり服に付いた土汚れを払う。
「そろそろ20分よ。調査を開始するわ。内部の遺体も無くなったから調べやすくなってるだろうけど、まだあるだろうし、急がないと」と冷めた口調で語るカカ。
そんなカカの顔をみて皆が眼をそらす。
カカの目は赤く充血しており、泣いたことを物語っていたからである。
「何よ、私の指示に問題があるの?」とカカは下を向く部隊の一人に問い掛ける。
そして、部下が目の充血を口にするとカカは慌ててアトランティス内部へと歩き出す。
アトランティスに足を踏み込む寸前に、後ろを振り向き声をあげた。
「私は、今こうして涙を浮かべ友と語れる事を誇りに思う、皆にも言っておく……あ、ありがとう……」とカカは頬を赤く染めると勇み足でアトランティス内部へと入っていった。
あまりの出来事に驚く部隊の兵士達であったが、皆笑顔で「カカ様に続くぞぉぉぉ」と声を張り上げる。
アトランティス内部の調査が再開され、調べていない残り7割の探索が開始された。




