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ぶつかる思い

 互いの生き方と経験の違い……そんな一言で片付けられる訳もなくカカとリーの険悪な雰囲気はアトランティス内部の調査に向かった兵達の士気を大いに下げ結果となっていた。


 ディアロッテはカカの部隊と共に扉の開かれた各フロアーの生存者と死者の確認、敵の存在の調査を開始する。


 リーとアリスはアトランティス内部に細菌や毒物が存在しないかを確認しながら、ある決断をする事になる。


「アリス……アンタ本気でやる気なの?」


 アリスの目の前には“若い男性の遺体”が1体、“若い女性の遺体”が1体、“子供の遺体”が1体と3体の遺体が並べられている。


「リー、遣るしかないの。死因が窒息なら何故そうなったのかを調べるしかない。私は私の出来る事をやるわ」


「ちょっと、アリス……あんなに生き物の解剖に反対してきたアンタに出来るの」


「出来るよ……生き物の解剖は嫌い……生きてる物を無理矢理殺すなんてない方がいいに決まってるもん、でも今回は違う、真実を調べる為に必要だから……」


 震えるアリスの手、そんな小さな手を更に小さなカカの手が押さえつけるように被さる。


「私がやる。指示して、今の貴女にこの人達は任せられない」とカカがアリスを止める。


 震えるアリスの手が更に激しく震えだすと「すみません……」と力が抜けたように地べたに両膝をつき涙を浮かべるアリス、その両膝には血と僅かな海水が染み込み薄く鮮やかな赤がアリスを染めた。


 カカは切れ布を口に巻き、飛び散る血液を防ぐ用意をするとナイフを手に一思いに人だった物を解体していく。


 医療技術や実験といった解剖法とは異なる明らかな“()()”鮮やかにして的確なナイフ捌きにアリスとリーが吐き気を(もよお)す程であった。


「なんて奴なの、まるで解体じゃない」


 リーの言葉にカカは軽く反応したかのように一瞬、手を止める。

 その後は再開した手を休める事なく解体を終了させる。


 アリスは怯えながらも確りと目を見開き、3体の死体を内部から見合わせる。

 幼子の遺体を前にアリスは泣き崩れ、首を横に振る。


「私には出来ない……こんな小さな子の体の中を調べるなんて、やっぱり出来ないよ」


 その言葉にカカは軽く頷くとアリスを遺体から遠ざける。


「計画を変更するわ。皆、御免なさい一旦外に出て……」


 アリスが「まって、今外に出たら感染病だったら外に広まることになるわ」と慌てて口に出す。


 しかし、カカは一言、言葉を発する。


「既に扉が開かれた時点で細菌なら外に飛び出してるし、少なく私達は今は生きてる。人は死ぬものよ……私達が先に死ねば、ランタン達は必ず魔法と薬を作り出し、それと戦うわ、ミカソウマは誰にも滅ぼされない国なのよ」


 カカの言葉に従うように移動を開始する兵達、しかし、アリスは両手で頬を叩き、口に布を巻き付けると遺体の前にその身を置く。


「皆さん動かないで! 私が調べるから、少し待ってください」


 真剣な表情のアリス、震えていた腕を“グッ”と拳を作るように握るとゆっくりと開き、遺体の体内を調べていく。


 ミクロサイズの細菌ならば確実に自身が死ぬであろう事を理解しながらも慎重に臓器1つ1つを調べていく。


 臓器の損傷は殆んどなく、共通していたのは肺をコーティングしていた特殊な細胞の網であり、アトランティス内部で生きる為に空気を逃がさないようにする特殊手術の痕だけであった。


「1つ確実になったのは肺にまだ水が残ってるって事だけ……私の推測になるけど、水中に放出されていた特殊凝縮酸素が停止したんだと思う……」とアリスは下を向いて口にした。


 カカとディアロッテは意味がわからず首を傾げた。


「なんなのです、その特殊酸素と言うのは?」


 ディアロッテの質問にアリスは説明を開始する。


 特殊凝縮酸素の存在は海底で生活するアトランティス人が生きる為の生命線であり、仮に地上に浮上する前に特殊凝縮酸素が停止したならば、一瞬で地上から海底に投げ込まれる事と変わらない。


 アリスの語る説明にディアロッテは口を塞いだ。


「そんな、ならば此処に人間は空気を一瞬で失い、茂垣ながら死んでいったのですか!」


「えぇ、寧ろ体内に酸素が残っていた人は長く苦しみながら死んだと思います……」


 平穏な日常が一瞬で消え去った事実を知り、落胆するディアロッテ。


 そんな時、カカが次の扉に向かい歩き始める。


「ちょっと、何処いくの!」とリーがカカを呼び止める。


「次の部屋を調べるわ。もうこの部屋には用が無いもの」


 その言葉に怒りを覚えたリーはカカに向かい走り出す。

 リーが全力で掴み掛かろうとする手を軽く掴み返すとリーの体がカカの頭上を一回転して地面に叩き付けられる。


「悪いのは貴女よ。ディア……手加減したけど、治療宜しく、私は治療魔法使えないから」


 そう言うとカカは再度歩き出していく。


「っう……クソ、なんなのよ……私はやっぱりアイツが嫌いよ、クソォォォォッ!」


 声をあげるリーに治療魔法を開始するディアロッテ。


「カカを許してあげてくださいね、リーさんでしたね……最後のあの技はコウヤさんがカカに教えたものなんですよ」


「だからなによ……」と困ったように言葉を返すリー。


 ディアロッテは笑みを浮かべながら、カカの事を話し出す。


「カカは不器用で相手を殺めない技をコウヤさんに教えてもらったんです、初めは私もカカが信用なりませんでした」


「なんで……なんですか?」


「カカとコウヤさんの出会いは複雑なんです。でも、いきなり襲い掛かったリーさんを殺さずに私に介護しろと言えるようになったんですから、本当に変わったと思います」

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