瑠璃色の王4
アトランティスの扉を開き、中から流れ出す液体が大地に水溜まりを作っていく。
カカはその光景に苛立ちと嫌悪感を露にすると無言で中へと進んでいく。
アリスとリーはカカが何故、苛立って要るのか理解できず首を傾げて見せる。
「カカを許してあげてください。とても不器用ですが、悪い子では無いんです……寧ろ素直過ぎると言うべきですか」とディアロッテがカカのフォローをする。
ディアロッテに対してリーがある質問を投げ掛ける。
「カカさんて、私達が嫌いなの?」
当然の問いであると感じながらもディアロッテは首を横に振る。
「カカは、大変言いづらいですが人間があまり好きではないのです……私達の知る人間は戦争の為に多くを利用しその全ての頂点であると語り、味方すらも切り捨てる存在……それが私達の知る人間です」
ディアロッテの重たい口ぶりで語られた短くも全てを理解出来る内容に二人は下を向く。
アリスはただ一言「私達も同じに見えるのかな……」と小さな声で呟いた。
そんな二人の肩にディアロッテは後ろから手で軽く叩く。
「もし気になるなら、本人に直接聞いてみるのが一番です。どちらにしてもカカは答えないと言う選択肢は選ばないでしょうから」
そんな会話をしているとアトランティスの内部からカカが声を掛ける。
「早くして、壊すなって言われてるの、扉が開かないと次に進めない」
慌てて内部に入るアリスとリーはその場に広がる悲惨な光景に唖然とした。
アトランティス内部の至る所に倒れ絶命しているアトランティスの住民達、その殆どが首を自身で掴み引っ掻いたような傷痕があり、苦しみ絶命した事が窺えた。
「ひぃぃ、リ……リー……なんで、みんな私達が逃げた時は普通に生活してたのに!」
アリスが取り乱し、恐怖で顔を歪める最中、リーは必死に平常心を保ちながら死者を観察していく。
死者達が一致していた特徴は首の傷と苦しんで死んでいったであろう表情であり、その死因が窒息である事は誰の目にも明らかであった。
カカはそんな死人の中を気にする事なく先に進んで行き、次の扉を拳の外側で“コンコン”と叩くと「早く開けて、時間が惜しいの」とアリス達に扉を開けるように指示をする。
その態度にリーが怒鳴り声をあげる。
「アンタねッ! この状況がわからないの。もしかしたら、細菌兵器が今もアトランティスに充満してるかもしれないのよ! そうだとしたら、防護服を手に入れても手遅れかもしれない、マスクだって、理解できる! 私達が居るのは未知の領域なのよ!」
その言葉に溜め息を吐き、死体の上を真っ直ぐに歩いてリーの元へと向かうカカは徐に足元に転がる幼子の死体を優しく抱き抱える。
「貴女は今怯えてる。でも、この子はもう怯える事も泣くことも出来ない……甘ったれないで。私達は戦場に身を置いたの、私達が死んでも仲間が助かるなら、それでいい。死にたくないなら今すぐに私達の元から……いぇ、コウヤの側から消えて」
「狂ってる……アンタは自分の命がどうなろうと知らないって感じね? なら聞くわ、コウヤがアンタに確実に死ねとわかって命じた命令にも従うわけ!」
感情をむき出しにしたリーの質問にカカは悩む事なく「従うわ、コウヤの為なら」と口にした。
悩まず答えるその姿にリーもまた「なんで……」と声に出した瞬間であった。
カカは抱き抱えた幼子の遺体を優しく母親の遺体と思われる女性の腕の中に寝かせた。
「私は狂ってる……そうよ。コウヤの為に私は生きる……私の生きる意味はそれでいい。1つの物として生まれた私の存在を何も無しに1つの存在として見てくれたコウヤの為なら……死ねるわ」
そんな二人の間を割るようにディアロッテが入るとアリスがリーを押さえ、ディアロッテがカカを押さえながら互いの距離を必死にあける。
「二人とも其処までにしてください。カカも部下達の前ですよ!」
そう言うとカカは少し申し訳無さそうに頷いて見せる。
アリスに説得されるリーまた同様のしぐさで頷いて見せた。
カカとリーは互いに「「嫌な奴」」と感じながらも気持ちを改め、アトランティス内部の調査を再開するのであった。




