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海の魔物6

 スキュラとの激しい戦いが終わりを告げる。


 コウヤは懐かしいランタン達の姿に自身が夢を見ているのではないかと感じていた。


 皆に支えられて海面に辿り着くと巨大鯨(バレーナ)と鮫の使い魔達が堂々たる姿を露にしていた。


 アトランティスとほぼ変わらないサイズに巨大鯨(バレーナ)は成長していたのだ。

 その背には多くのミカソウマの戦士達の姿があり、皆がコウヤの姿を前に歓喜の声をあげる。


 そしてランタン達はコウヤとミーナを巨大鯨(バレーナ)の背に寝かせると回復魔法を発動する。


 体の痛みが消えていき、次第にコウヤも落ち着きを取り戻していく。


「駄目だよ、魔力をそんなに使ったら……まだ、この世界は魔力が少ないんだ」とコウヤが口にする。


 それに対して、ランタンはコウヤにポケットからある物を取りだす、そして笑いながら喋り掛ける。


「ヨホホホ、魔力の心配はいりませんよ。コウヤさんを思う皆さんの気持ちが此処に詰まってますので、それよりもコウヤ王、良くぞ御無事で我等の到着が遅れてしまい本当に申し訳ありません」


 ランタンはそう言うとコウヤに膝をつき、頭を下げる。まるで波が次々に生まれるようにミカソウマの戦士達が膝をつき、ランタン同様に頭を下げる。


 ただならぬ緊迫感を漂わせる状況にコウヤは慌てて声を口に出す。


「久々の再会なんだよ、みんなと普通に話したいんだ。ダメかな? ランタン(パンプキン)


 ランタンはコウヤの言葉に頷くと頭をあげると天高く叫んだ。


「我等がコウヤ=トーラスは無事だ! 皆、面を上げよ、我等が王とミカソウマの為に勝鬨だぁぁぁぁ!」


「「「おおぉぉぉおうぅぅぅバンザーーイーーッ!」」」

「「「コウヤ王ぅぅぅバンザーーイーー」」」


 大気を震わせんと鳴り響く亜人の雄叫び、その中心にはコウヤとミーナ、その周りにランタン、ラシャ、キャスカ、ディアロッテ、シャーデ、キュエル、ベルミ、カカと囲み、その回りを更に多くの亜人達が囲む。


 その中にはマトンと源朴の姿もあり、優しく微笑みながらコウヤの無事な姿を喜んでいた。


 喜びと歓喜に包まれるコウヤの元にアトランティスからやって来た無数の船。


 敵として身構えるミカソウマの一団、そんな最中、アトランティスの船から手を振りながら聞こえるアリスの叫び声。


「コウヤさん、大丈夫ですかぁぁぁッ!」


 その声に身構えていたミカソウマの一団は顔を見合わせ、コウヤの方を向く。


 コウヤは皆に戦闘解除を口にするとアトランティスの船に同席していたシー=ブレンが顔を出し、コウヤ達に対して話し合いの席を用意したいと口にする。


 シー=ブレンの提案に対してランタンは拒否を口にする。


「コウヤさん、我々は人間を信用する気はありません。時代が違えど人間の本質は変わりません、どうか御理解を」


 ランタンの拒否には大きな訳があった。

 今の世界に干渉し続ければ未来が大きく変化する可能性を捨てきれなかったのである。


 本来起きる筈だった人類の消滅の歴史、其れが完全に起きなかった事実もランタンの拒否を口にする理由であり、ある事を恐れた結果でもあった。


 不意にランタンがコウヤに対して呟く。


「我々がこのまま、彼等に干渉し続ければ我々が知る未来は無くなるでしょう、そうなれば我々もどうなるか……」


 真剣な口調で語られる言葉の重み、コウヤはランタンの意見を聞き入れシー=ブレンからの提案を断ったのだ。


「すみません、僕達はこれ以上あなた方と歩む事は出来ません、仲間達と僕は帰ります。短い時間でしたがありがとうございました。最後に未来を過った方向に向かわせないでください……」


 その言葉にランタンが慌てて一歩前に出る。


「それ以上は禁止です、本当に彼等を信じているのは理解しましたが……どうか、それ以上の言葉は口にしないで頂きたい」


 ランタンの言葉に頷くとコウヤはアリスとリーに対して手を軽く振る。


 心配そうに見守るランタンに「わかってるよ」と呟くコウヤはアトランティスの船に背を向ける。


 コウヤの行動に頷くランタン達は持参した荷物から大量の魔弾電池をコウヤに渡す。


「コウヤさん、魔弾電池に魔力が限界まで詰まっています。其れを使いミカソウマへと帰還しましょう」とランタンが口にする。


 そして、巨大鯨(バレーナ)がランタンの指示で動き出す。


 アトランティスの船から「待ってよ、こんなサヨナラって、コウヤさんッ!」と口にするアリス。


「そうだよ、私もアンタに借りを返してないんだ、いきなり過ぎるよコウヤ!」と叫ぶリーの姿があった。


 コウヤは一旦振り返ると大声をあげる。


「アリスッ! リーッ! 未来は無くならない、君達が未来を紡ぎ出すんだ……絶対に諦めるなッ!」


 本来なら全てを話したかったであろうコウヤ、しかし、それは叶わない事も理解していた。


 アトランティスの未来は歴史が既にコウヤ達に教えていたからに他ならない。


 世代をこえて、消え行く未来を口にする事の出来ないコウヤの拳が握られると口に出来ないもどかしさに拳が静かに震える。


 コウヤとミーナは複雑な心境の中でミカソウマへと帰る為の手段を仲間の助けにより手にしたのであった。


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