動き出す時
コウヤは荒々しく攻撃を繰り返し、次々に液体を消滅させていく。
余りに一方的な戦いに誰もがコウヤの存在を救世主のように感じただろう。
そんなコウヤ達の目の前に姿を現したのは女性であった。
新たな敵であろう存在、液体と同じ物であろう透き通るボディに薄い布を纏い強調された谷間、その中心には真っ赤な宝石が輝いている。
「おかしいねぇ? この時代の残ってる兵器で私の“スライミー”達がやられるなんて……話が違うわねぇ?」
悪戯な笑みに大人びた体つきからは想像できない幼い少女のような声を発しながら手を頬に当てて悩むような素振りを見せる。
そんな女に対して、コウヤは質問をする。
「お前がこの悲惨な状況を作り出したのか!」
コウヤの質問に対して、おどけたように笑みを作り出す女。
「何の話? 私は何もしてないよ、只、可愛い子供達にご飯を食べさせただけ、寧ろ、子供達に手を出したアンタ達の方が最低なんだけど」
罪悪感は微塵も無いと言わんばかりに語られる女の主張、コウヤは話し合いなど無意味だと理解はしていたが、その範疇を大きく上回る発言に怒りを感じずにはいられなかった。
「ご飯って……相手の中には無抵抗な者も居た筈だ! それを……」
「それをなに? 人間だから食べたら駄目なの? 人間は家畜を食らい、野性動物を欲望の為に殺すのに? 傲慢の極みね……貴方は獣のように見えたけど、中身はお子様ね、綺麗事ばかりで現実を理解していないのよ!」
そう語ると女はスライミーと呼ばれている液体から紙の束を受け取るとコウヤに向けて、紙の束を投げつける。
「見て理解できるなら話が早いんだけど、どうかしら?」
其処には多くの家畜が小さな檻に入れられ、押さえつけられ焼き印を押し当てられる写真と笑顔で微笑む人間の姿が写し出されていた。
他の物も同様に別の家畜が強制的に焼き印や殺される様子が写し出され、銃を手に狩りの獲物に足をのせ、勝ち誇っている物や笑いながら獲物を追い回す光景が幾つも写し出されている。
「ふふっ、わかった? 貴方の守ろうとする人間は自分より弱いものを狙うの、もし私が弱者なら容赦なく私を殺すのが人間なの、自然界の掟なのよ。生きるから殺すの、食べたいから殺すのよ」
女の冷たい目線がコウヤに向けられる。
目の前に写し出された写真を手に握ると軽く握り潰した。
「だからって、それと同じ事をしていい理由になんか為らないよ!」
コウヤは拳を前に突き出す。
女はコウヤの言葉に呆れるように溜め息を吐く。
「ハァ、くだらない……この世界は強者が弱者を食らう、力の差を理解していない奴から先に食われるのよ!」
醜く歪む女の表情、そんな女に向けて突き出された拳が開かれると握られていた写真が地面に落下する。
それを合図に両者が同時に動き出すのであった。




