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絶望と力3

 訳がわからずに腰を抜かす明日菜、アリス、リーの3名。


 倒れ込むように床に触れた手に付着するべたつく血液と溶けた肉片混じりの液体に声すら出せずに怯えた表情を浮かべる3人、しかしコウヤはそのまま、第2エリアを突き進んでいく。


「あ、待って……置いていかないで」と言う明日菜の言葉にコウヤが立ち止まり、口を開く。


「この先、何が起きるか分からないし、ミーナはともかく、3人は外に止めてあったトレーラー(乗り物)で待ってた方がいいと思う。魔力が尽きたら生きて外に出られる保証がないんだ」


 その言葉の意味する死を想像する3人は下を向き言葉を失う。

 新たな沈黙が生まれた瞬間、それを打ち破るようにアリスが立ち上がり声をあげる。


「わ、私は行く! それにエデンの内部は簡単に別れてるけど、エリアごとに扉の位置が違うから……案内が必要なの」


 3人は命を賭ける決断をする。


 決意を決めた3人に対してコウヤは「わかったよ」と一言呟くと、それ以上の言葉を口にしなかった。


 冷たく突き放すようなコウヤの態度、しかし、それはエデン内のリスクを考えた結果の態度であり、コウヤの内心は複雑であった。

 更なる犠牲者を増やしたくないと言う気持ちと3人の気持ちを無下にする事が出来ない甘さからの嫌悪感が混ざり、コウヤを苦しめていた。


 無言のまま、第2エリアを進む5人、その間も度々襲い来る紫の液体。


 コウヤは魔力を使わぬように刀の速度を上げる事で液体を吹き飛ばしていく。


 飛び散った液体は再度、形を形成し襲い来る。

 しかし、再生までのラグタイムがある事実に気づいた5人は一気に第2エリアを駆け抜けていく。


 第2エリアから第5エリアへと抜ける扉に到着する。


「ミーナ、3人を後ろに、先ずは奴等を焼き尽くす! その間に扉をなんとかしてみて!」


 迫り来る紫の液体に対して火炎魔法を使おうとした時、明日菜が黄金色の液体を次々に投げつける。


 更に転がっていた割れ瓶に紙を突っ込むとマッチで火をつける。

 その瓶を勢いよく紫の液体の中心に向けて投げ込む。


 凄まじい勢いで燃え上がる紫の液体、明日菜が投げたのは油である。


 食糧貯蔵庫である第2エリアを進む際に拾っていた大量の油を一気に投げつける事でコウヤと同じように紫の液体を倒そうと考えていたのだ。


 結果に満足そうに明日菜が声をあげる。


「どうよ化物! 人間には化学があるの、私達は諦めない!」


 明日菜がそう言い放ち勝利を確信する。


「明日菜ッ! まだ来る避けろ!」


 コウヤの叫び声。それは一瞬であった。

 燃え上がる紫の液体の間を引火しながら高速で移動する新たな液体、そして、明日菜の頭上から飛び掛かるように宙を舞うと覆い被さるように明日菜の全身を飲み込んだのである。


 紫の液体の中脱出しようと飛び出した明日菜の腕が床に落下する。


 紫の液体の中に明日菜の姿は既に無く、無情に落下した腕すらも紫の液体により溶かされていく。


「クッ……」


 コウヤは魔力を使い紫の液体を焼き尽くす。

 明日菜の攻撃により魔力の消費は最小限に収まるも、4人になった事実を前に無念さだけが皆の心に襲い掛かっていく。


 第5エリアへと続く扉が開かれ、先を急ぐ4人。


 警備隊が戦ったのであろう、無惨な第5エリアの内情に絶句するアリス。


「なんでよ……此処は第5エリアなのよ……なんで、なんで誰も居ないのよ!」


 目の前に広がる予備電源に照らされた第5エリアに動く者は誰一人いない。


 紫の液体と激しい戦闘があったのであろう事を物語る真新しい傷の刻まれた壁や床、その周りに散らばる警備隊の残骸と武器、警備隊はその任をやり遂げていた。

 警備隊の予想だにしなかった事実は警備隊の全滅であった。


 第5エリアに生存者は無く、コウヤ達は感情の整理が出来ないままのアリスを連れて第7エリアを目指す。


 その際に第5エリアでリーが第7エリアに向かう非常口のカードキーを手にする。

 第7エリアを目指すコウヤ達が非常口から第7エリアへと移動していく。


 そして、コウヤ達の眼に非常口の出口が見えてくる。


 第7エリアへと到着したコウヤ達が見たのは紫の液体に襲われているエデンの民の姿であった。 

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