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生命の砦、エデン。

 ダニエル達からリーの元に緊急の通信が入ったのは夕暮れの事であった。


 雑音が混じる通信……


「ザザッ……此方……ダニ……ェル……エデンが……襲わ……もう……たない……エデンは終わり……逃……ろ」


「え、ダニエル! ダニエルッ! 返事をして、何に襲われてるの、ダニエルッ!」


 只為らぬ雰囲気に慌てる明日菜とアリス。

 先端の切られた銃を肩にかけ、防護服のマスクを被りファスナーを閉めると走り出そうとするリー。


「何を考えてるのリー! 一人で何をする気」とアリスが止めに入る。


「ダニエル達が、エデンが何かに襲われてる! 今行かないと、ダニエル達が死んじゃうかもしれない」


 アリスの制止を振りきろうとするリーの前に明日菜に呼ばれたコウヤとミーナが立ちはだかり、行く手を塞ぐ。


「退きなさい。私は今からエデンに向かう。貴方達と話す時間はない」


 リーの言葉にコウヤは道を譲るように1歩横に移動する。


「一人で死にに行くの? 言っとくけど、勇気と無謀は紙一重だよ」


 足を止め、コウヤの胸ぐらに掴み掛かるリーは涙ながらに怒鳴り声をあげる。


「わかってる! だからって仲間のピンチに指を加えて見て見ぬふりを出来るほど私は冷静な性格じゃないんだ!」


 真っ直ぐに向き合う両者。


「死にに行くの……助けに行くの、どっち?」


「助けに行くに決まってるじゃないか! 死ぬ気で戦って仲間を助ける!」


 コウヤは一旦目を瞑り、見開くように瞼を上げ、リーの頬を平手で叩く。


 パチンッ! 皆が騒然とする中、コウヤは声をあげる。


「死ぬ気で戦って死んだら意味ないんだよ! 助けたいなら口に出せ! 僕は助けを求めるなら協力する。でも死ぬ気の相手には協力する気はない。だからもう一度聞く、生きて帰る気はあるの?」


 頬を押さえながら、悔しさで顔を歪ませ、涙腺から滴を溢しまいと堪えるリーは「皆を……助けたい、生きてまた会いたい」と口にした。


 コウヤはその言葉に無言で頷くと体の向きをかえる。


「エデンの位置が知りたい。出来るだけ詳しく方向と距離を教えて」


 明日菜は慌てて距離と方角をコウヤに伝える。


 距離は455㎞、トレーラーで六時間程の距離に位置しており、リーの無謀過ぎる救出計画が明らかになる。


 コウヤはミーナに明日菜、アリス、リーの3名をテレパスを使い移動させると告げる。

 魔力の消費を考えれば、行きだけで森から作られる魔力の大半を使うことになる。


 それを理解したうえでミーナは「遣りたいようにしていいよ。私はコウヤと一緒に行くんだからさ」と告げる。


 先にコウヤとミーナがテレパスでエデンの側に飛び、防壁魔法を展開する事に決まり、其処からミーナを見張りと防壁の担当とし、コウヤが3名をテレパスで自分と代わりがわりに移動させていく。


 初めて体感する魔法に明日菜達、3名は驚きを露にしつつも、感動していた。


「ワームホール……凄すぎる、時空の壁を一瞬で通り抜けたなんて」


 そう語る明日菜は更に防護服無しの状態で活動できる事実にも驚きを隠せずにいた。


 そんな中、アリスがグシャグシャに崩されたエデンへの扉を目の当たりにする。


「そんな、細菌兵器も核にも耐えられるエデンの扉がどうして!」


 扉には酸により溶かされた事を示すように溶けて変形した箇所が目立っている。


 コウヤを筆頭にエデンの内部に続く地下通路を進んでいく5人。


 地下通路内も至る箇所が変形し、電子ロックの扉には開けられた形跡はない。

 扉の中央から床にかけて溶けたのであろ、大きな穴が作られ、その周りには戦闘が合ったであろう、無数の銃による傷が刻まれていた。


 奧に進むに連れて、据えたような酸味がかった臭いが充満していく。


 そして、最初の犠牲者の姿を発見した時、明日菜、アリス、リーの3名は愕然として、地面にへたれ込んだ。


「そんな……エデンの警備隊長が……」


 そこには頭部の半分が溶け落ち、体の2/3を失った男が横たわっていた。


 エデンで起きている異変がその牙をコウヤ達に向けようとしていた。


 通路手前に散らばる無惨な警備隊の姿に敵が複数であり、被害はエデン全体に広がって要ることを示すように左右に別れた四本の通路の扉が溶かされていた。


 別々に行動する事は危険と判断したコウヤは3名に一番生存者が生き残る可能性のある場所を聞き向かう方向を決める。


 その場所とは、“ラボ”である。

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