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新たな生命3

 エデン……森へと侵入してきたアリスと明日菜を含む男女6人の他に190名程の科学者達が集められた巨大な地下に建設されたドームを指す言葉であり、ドームに集められた科学者達は皆、核の汚染から免れた者達の子孫である。

 多くの者が幼い頃から科学を学び、大気の浄化、水の浄化、大地の浄化をする為の知識を身につけている。


 何代にも渡り外の世界を夢見てきたエデンの住人達、まるで時が満ちたように世界は細菌に汚染され、其処から更に20年と言う年月が過ぎていく。


 6人の内、3名は世界が汚染された後に生まれた者達であり、残る3名も21歳から26歳と言う年齢であり、今回のエデンから外への初の調査に志願した勇敢な男女であった。


 コウヤ達の拠点となっている森からそう遠くない平地に地下ドーム(エデン)があり、其処から乗り物兼、移動居住用のトレーラーに乗り、辺りを3週間掛けて大気と土の調査すると同時に外の世界の生態系がどう変化したかを調査する事を目的としている。


 コウヤとミーナに対して必死に説明をする明日菜、しかし言葉を繋げれば繋げる程、理解されない状況に両者は困り果てていた。


「参った、私達の言葉を理解できる知能も確りあるのに、上手く説明が出来ないなんて」


 明日菜が困った表情を浮かべるとミーナは木の枝を手に取り、ぎこちない手つきで地面に平仮名を書いていく。


 驚く明日菜、そしてミーナは地面の平仮名を枝で指すと発音が分からない状況を何とか改善しようと試みたのである。


 コウヤとミーナは言葉を文字にすることで明日菜との会話に成功する。


 本来なら喋る事の方が簡単だが、其れは互いに言語の基礎が有ればこそであり、コウヤとミーナは知らぬ発音やイントネーションを悩むよりも読める事を利用することを選んだ結果であった。


「凄い、この二人は私の言葉を、日本語を理解してる……話せないと言うより話し方を知らないだけで知識が確りとあるなんて? 信じられない」


 明日菜の興奮が最高潮になり、コウヤとミーナをもっと知りたいと考え好意を持った瞬間、コウヤの胸元にある“ロストアーツ”(瑠璃色の王)が光輝く。


 驚くエデンの6人、しかし、驚きは更に続いていく。


「皆さん、今なら僕の言葉がわかりますか?」と言葉が何気なく言葉を発する。


 6人は耳を疑う、先程まで会話にならなかった筈のコウヤから確りとした言葉が発せられ、理解ができたからである。


「相変わらず便利な力ね。まぁ、私はコウヤとリンクしてるから助かるんだけど、島人の言葉も理解出来るようになるのね?」


 ミーナの言葉もコウヤ同様に確りと6人の耳に入っていく。


 常識では理解しがたい状況であるにも関わらず、目の前に起きた光景にエデンの民の3人が危機感を感じ、残る3名は感動と驚きで笑みを浮かべる。

 言葉に出されなかった為に口論に発展する事は無かったが、危機感を感じた3人のは急ぎエデンにその事実を伝えようと考えを巡らせる。


「アリス、明日菜、リーの3人はこの場に残り、獣人から出来る限りの情報を聞き出してくれ、あくまでも()()のみだ。此方の情報を与えすぎないように、今は害がないが……どうなるか分からないからな」


 コウヤ達から離れた場所で明日菜達にそう語るのはリーダーを勤める“ダニエル=クーペ”と言う男性であり、明日菜とアリスに釘を刺すと同時に監視として“リー=イーフォン”を森に残るメンバーに選んでいた。


 エデンへと報告を理由に帰還する3人、森に残る事になった3人、この選択が後の運命を大きく左右する別れ道になることをこの時は誰も想像していなかった。


 ダニエル=クーペと2名のメンバーが森を後にするとコウヤとミーナは不本意ながらも明日菜、アリス、リーの3名に対して攻撃の意思を口にする。


「話は聞いたよ、僕達の聴力は集中さえすれば、森全体の音を把握する事も出来るんだ……だから、敵であるなら僕達は戦う」


 雰囲気が変わり、鋭い獣のような瞳が紅く輝く姿に明日菜とアリスはその場から動けずに立ち尽くす。


「待ってよ! 私達は確かにダニエル隊長にそう言われたけど。敵か味方かって聞かれたら敵じゃない! 話が出来るなら争わないでも解決出来るの、ダニエル隊長は確かにアナタ達を警戒してるけど、人間って弱いの、自分と少し違うだけで恐怖を感じたりもするの」


 明日菜の必死な訴え、コウヤの胸元に光る“瑠璃色の王”はそれを真実だと判断する。


「わかったよ、僕もごめん……人間とは色々あったから……許して欲しいとは言わない、でも……出来たら敵にならないで欲しい、僕達からは争いを望まないからさ」


 コウヤの悲しそうな言葉と表情に明日菜とアリスは言葉を見つけられずにいた。

 そんな時、リー=イーフォンが銃をミーナに向ける。


「甘いよ、アリス、明日菜! そいつの眼は人間の眼じゃない、危険なんだ!」


 そう語るリーを哀れな表情で見つめるミーナ。


「それが貴女の答え? それとも()()()の答え? ハッキリして……私達は答え次第で敵になる。そうなれば撤回は赦さないわ」


 5人が互いに向き合いエデンのリーのみが銃を手にしている状況でのミーナの挑発にも取れる発言、リーは怒りで冷静な判断が出来る状態では無いことは明日菜とアリスの目から見ても明らかであった。


「やめてリーッ! 銃をおろして!」


「そうだよ、コウヤさんとミーナさんは私達から何もしなければ争う気はないんだよ!」


 明日菜とアリスの言葉にリーは「今の発言でわかるだろ! 私達の方が弱者の立場なんだよ! 獣は弱者に容赦しない。私達は獲物と一緒なんだよ!」と強い口調で語る。


 コウヤはミーナに向けられた銃を確りと見詰めると目にも止まらぬ速さで刀を抜き下から上に向けて振り上げる。


 一瞬の出来事だった。

 まるで突風が起きた化のように風が吹き抜けた瞬間、構えられた銃の先端が地面に落下する。

 地面に落下した先端部分は綺麗に切断され、一切の迷いを感じさせない。


 そして、リーを斜め下から鋭い眼で睨み付けるコウヤの口が開く。


「次にミーナに武器を向けたら、容赦しない。質問は最後だよ……まだやるの?」


 力なく膝から崩れ落ちるリーは首を横に振る。

 慌てて、リーに駆け寄る明日菜とアリスはコウヤとミーナに謝罪すると改めて敵意はないと語り、リーもそれに同意した。


 コウヤとミーナ、そして明日菜、アリス、リーの5名は不安要素を残しながらも互いに敵でない事を確りと口にする事で事なきを得る形になったのである。


 そして、新たな問題はコウヤ達の知らぬ場所で起こっていた。


 その場所とは【エデン】である。


 報告の為、帰還を急ぐダニエル達3名はエデンへとトレーラーを急がせていた。


「ダニエル隊長、本当に良かったんですか? 全員で帰還がエデンからの命令に含まれてますが?」


「いい、今は奴等を逃がさない事を一番に考えたい。エデンに帰還後直ぐに捕獲チームの申請を願い出るつもりだ」


 トレーラーは順調にエデンへと向かっていく。

 しかし、ダニエルと二人のメンバーはエデンへの入り口である地下通路への扉が破壊されている事実を目の当たりする事となる。


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