新たな生命2
大きな変化をもたらした毒地の存在は多大な恵みの雨となった。
コウヤ達にとって森の存在は魔力の確保と空気の浄化をもたらす。
毒地襲来から数日、植物の成長が落ち着き始めると広大な森を中心にコウヤとミーナは水の浄化に力を入れていた。
地下水脈の浄化を開始するも、その膨大な水の量と次から次に入れ替わる汚染水に悩まされる事になる。
そんな最中、草木がミーナに森へと入り込む侵入者を感知する。
「コウヤ、昆虫以外の何かが森に入ったみたい。私の体外魔力だと無駄に魔力を消費しちゃうし、確認できる?」
「わかった。やってみる方角を教えて」
方角を伝えられるとコウヤは体外魔力の消費を最大限に落としながら侵入者を捜していく。
侵入者が踏み込んだであろう森の一角には草が踏まれた痕跡があり、その足跡は真っ直ぐに森の中心に位置するコウヤ達の元へと進んでいた。
「ミーナ、此方に真っ直ぐ向かってきてるみたい……もしも、悪魔なら捕まえてから話を聞くことにするよ」
互いに確認するように顔を見合わせ頷くとミーナがコウヤに代わり防壁を担当する。
身体強化魔法を発動したコウヤは刀を抜くと久々の実戦になる事を想定しながら確りと束を握り手の感覚を確める。
「ミーナ、行ってくるよ。もしもの時は念話魔法を絶対に忘れないで、いいね?」
「そんな顔しないで、私も其れなりに強いのよ? 心配は大丈夫だから、無事に帰ってきて、コウヤ。」
互いに心配しながらも会話を終わらせると森の中へと侵入者を目指して進んでいくコウヤ。
木々の枝を足場に突き進むコウヤ、野生の獣のように全身の神経を研ぎ澄ませた時、複数の草を踏みしめる僅かな足音がコウヤの耳に飛び込んでくる。
目の前の茂みが揺れ動いた瞬間、コウヤは木の影に身を隠し、侵入者の姿を肉眼で確める。
白一色で統一された集団が姿を現す。
全身を防護服で包んだ白い集団の手には銃が握られており、コウヤの鼻に火薬の香りが広がった瞬間、即座に刀を構え臨戦態勢に入る。
侵入者の数はコウヤの目に写る範囲で6人。
他の侵入者が居ないことを臭いで確認するとコウヤは刀を手に侵入者を全員生かすべきか、一人を残し、5人の侵入者を討つべきかを悩んでいた。
数秒の沈黙、森に風が吹いた瞬間、全てが動き出す事となる。
風が吹き抜けた瞬間、雲が流れ、木々がざわめき、コウヤの刀に太陽の光が当たる。
一瞬の輝きに気付いた侵入者の一人が声をあげて光が反射した方向を指差した。
「何かいる! 木の上だ」
侵入者達は慌てて、銃を構える。
しかし、コウヤの目に写った光景は銃口が定まらず、怯えるように辺りを警戒し動く白い覆面を付けた侵入者達の姿であった。
一人の侵入者が銃の引き金に指を掛けるとコウヤのいる方向に銃口を向ける。
弾が発射された瞬間を狙い攻撃をしようと考えるコウヤは引き金が引かれた瞬間に「ハァァァァァッ!」と勢いよく飛び掛かるも弾は発射された様子はない。
突如姿を現したコウヤに驚きの声をあげる侵入者達。
「これは……核の影響なのか? それとも汚染による突然変異の一種なのか?」
「人間に近いが、耳は獣か? ワーウルフとも、違うまるで吸血鬼のような……」
「とにかく、早く銃を構えろ! 安全装置は外すんだ! 少なくとも武器を使う知能は有るらしい……用心しろ!」
侵入者の3名は声から男性であると理解するコウヤ。
「銃は無しよ! 出来たら行け止まりにしたいわ。この生物が本当に突然変異なのかも調べないと」
侵入者は男性が3名と女性が3名である事実を会話の中から読み取るコウヤ。
そして、一人の女性侵入者がコウヤに対して銃を地面に起き真っ正面から会話をしようと試みたのである。
「えっと、私はアリス、アリス=ブラウンよ。わからないかも知れないけど、私達は驚いて銃を……この筒を向けてしまったの、私達は貴方と話がしたいの、わかるかな?」
手足を使いジェスチャーを交えてそう語る女性侵入者に対してコウヤは困っていた。
コウヤの知る言語に含まれない言葉であったからである。
女性は同じ言葉を何度も言語を替えてコウヤへと訴えつづけた。
最初にコウヤが聞いたのはスペイン語であり、次に英語、ポルトガル語と続いていく。
コウヤが言葉を黙って聞く姿に侵入者達は入れ替わり立ち替わり、わかる限りの言葉で語り続けていく。
そんな最中、リンクしたミーナがコウヤに「今までのを聞いてたわ、多分、彼等が語ってる言葉は島人の言葉よ」そう告げられたコウヤは源朴から習った島人の言葉を使い話をしてみる事にする。
片言のような言葉であり、完全に使いこなせる訳ではないがミーナのサポートを得て会話を成立させようと試みたのである。
「|ボクは、コウヤ=トーラス《僕はコウヤ=トーラス》……|アナタ敵でないですね?《アナタ達は敵ですか、それとも別ですか?》 |でも戦うならいきます《もし戦う気なら容赦しない》」
うまく繋がらないコウヤの言葉、しかし、一人の小柄な女性が日本語で受け答えを返した。
「私は高見=明日菜。貴方の話してるの日本語よね? 私の言葉わかるかな?」
日本語を話せる事実を把握したミーナがその場に合流すると日本語で受け答えを返す。
「少しなら話せる。島人の言葉、詳しくない。だから、少し」とミーナが口にする。
その瞬間、コウヤがミーナの前に移動し刀を構える。
「ミーナ、どうなったの、今のなんて話したの」
警戒するコウヤに刀を下ろすように頼み、アリスと明日菜に対しても武器を地面に置くように語るミーナ。
両者が武器を収めると侵入者に対して、何故、森に来たのかを尋ねる事となる。
「私達は、この地球を救う為に集められた【最後の希望】のメンバーです」と語るアリスと明日菜。
新たなる言葉【最後の希望】とは何かをコウヤとミーナは聞かされる事になる。




