新たな生命1
コウヤ達の元に毒の大地が襲い掛かるまで時間は掛からなかった。
コウヤ達が大地を広げる事で自ら毒の大地に迎っていたからである。
ある朝、コウヤとミーナの嗅覚に“ツン”とした独特の香りと鼻に痺れが襲う。
お互いに異変に気づくとコウヤは風魔法で防壁の周りに緩やかな風の渦を作り出した匂いを防壁の外に流していく。
ミーナは自身の植物達から何が起きているのかを尋ねる。
『悪い草がくるよ、悪い花がくるよ』とミーナに教える植物達。
その事実をコウヤへと伝えるとコウヤは自身の周りの汚染された空気を浄化するように変化させ正常に戻しながら自身の足で調査を開始する。
そして、目の前に広がる禍々しい黒紫の草木が鬱蒼と生い茂る毒の大地、姿を現した毒地を前に言葉を失うコウヤ。
急ぎミーナの元に戻ろうとするコウヤに毒の大地こら大量の毒虫達が襲い掛かっていく。
火炎魔法を使い、昆虫を焼き払うも次から次に止むことなく羽を羽ばたかせ襲いくる昆虫達。
「くっ、此のままじゃ魔力を大量に消費しちゃう、まずいなぁ……」
コウヤは自身の周りの空気を浄化する事を一旦やめると息を止める。
そして、今撃ち出せるだけの風魔法と火炎魔法を合わせると渦のように放ち、昆虫達を一気に巻き込み天高く火柱を作り出す。
昆虫を一掃すると、コウヤは残った僅かな魔力で空気を再度浄化する。
息を止められる時間が長くとも動けば体内には負荷が掛かる。
コウヤは9分程息を止めながら風魔法と火炎魔法の二種類の魔法をつかったのだから、肉体に掛かる負荷は計り知れない。
ミーナの元に戻ったコウヤはその目でみた物をミーナに伝える。
体外魔力を使いコウヤの見た毒の大地を確認するミーナは驚きの声をあげる。
「あれって、毒草の塊じゃない。しかも見た事の無い種類も混ざってるから、詳しくは何とも言えないけど、指定危険毒物になってる物も確認出来たわ、毒の大地は燃やせないわね……燃やせば何年も空気が染されるわ……苦労が無駄になっちゃうわ」
ミーナは口にするとコウヤにある提案をする。
「コウヤ、あの毒草は何十年もかけて枯れていくの、普通に放置し続けたら無限に増え続けるわ」
「そんな……今までの日々が消えるってこと!」
「ええ、だから無理にとは言わないけど、本当に何とかするなら今しかないわ、あの範囲なら時空王に蓄えられた魔力を私に流し込んでくれたら……あの毒地を今の範囲なら何とか出来るの……決断はコウヤに任せるわ」
コウヤは頷くと「ミーナ、もし足りない時は僕の魔力もギリギリまで渡すから」と口にした。
その間も毒地は昆虫達により運ばれ風もその手助けをするように種を運んでいく。
自然界が世界を支配するようにその力を見せつける最中、コウヤ達と出会ったことは互いに不幸と言う他無いだろう。
互いに別の大陸に存在したならばぶつかり合いどちらかが消える運命は避けられたのだから、しかし……現実に毒地は出会ってしまった、世界を、時空を壊した魔王コウヤ=トーラス、そして、獣人の最強植物魔導士であるミーナと言う存在に。
「さぁ、コウヤ行くわよ。久々に私の本気を見せてあげる、あの毒地を私達の前から消滅させるわ」
手を繋ぎ、コウヤはミーナに魔力を注ぎ始めるとミーナはその魔力で毒地全体を包み込むように巨大な花を作り出した。
禍々しくも美しい真っ赤な花はゆっくりと毒地を飲み込むように花を閉じると蕾に姿を変える。
花の中からは全てが溶かされていくような“ジュゥゥゥ”と言う音が響き、蕾の天辺から白い煙が上がっていく。
「な、何なのこれ……初めて見る魔法なんだけど」
ミーナは自信満々に答える。
「此れは本来は獣人が人間を全滅させる為に編み出した禁忌の魔法なの、結局使われる事は無かったけど、植物魔導士の上級者の中でも限られた存在が条件を満たした時に教えられる最強の植物魔法なの、知ってて正解だったわ」
「条件?」とコウヤが不思議そうに首を傾げるとミーナは条件をコウヤに教える。
1つ、上級植物魔法を全て使えること。
2つ、ダルメリアの意思により選ばれた者であること。
3つ、人間の世界で修行をして、人間に対して敵意を示さない者であること。
4つ、ダルメリアに住む獣人の長達の過半数から認められること。
以上の4つの条件を満たした時、初めて学ぶ事を許される魔法であるとミーナは語った。
「私は幼い頃に人間に襲われてダルメリアの為に戦ったから、長の方々は全員が私に許可をくれたわ、実際は使う事を望んでたんだと思う、人間への恨みは簡単には消えないから……でも、私は使わずに居たわ。今となったら本当に使わなくて良かった、コウヤに会えなくなるところだったし」
話が終わる頃、花が再度咲き始める。
中に飲み込まれた毒地は跡形も無く消え去り、代わりに花の中心には透き通った綺麗な水が大量に溜まってる。
ミーナは花の中に水が溜まっている事を確認すると更に植物魔法を使い始める。
大量の種を作り出し、溜まっていた水の中に入れると花は蕾になり、天辺から大量の水と種を凄まじい勢いで辺り一面に噴射していく。
「何が始まるの?」
「見てなさいコウヤ、ダルメリアの獣人が何故、獣人の中心であり、森と生きる存在なのかを教えてあげるわ」
噴射された水と種が地面に触れた瞬間、その目を疑うコウヤ。
次々に草木が姿を現し、汚染されていた大地が浄化されながら草むらが林になり木々が次々に姿を現し森に姿を変える。
それでも止まらない花からの噴射、気づけば辺り一面が立派な森に姿を変えていたのである。
「凄いや! なんで初めから使わなかったの?」
「使わなかったんじゃなくて、使えなかったのよ。この【全てを喰らう生命の花】って魔法の問題は花に大量の栄養が必要なの、今回は毒地だったけど、人里や王国で使えば全てを森に変えるくらいヤバイ魔法なのよ」
ミーナは花には善悪がなく、花に触れる全てを喰らい尽くす魔獣のような物だとコウヤに伝えた。
その日、コウヤとミーナは毒地を利用して広大な森と生息範囲を手に入れたのである。




