時空の先にある世界4
天に向けて魔法を撃ち放つミカソウマの魔導部隊、その間を縫うようにハーピィーとガーゴイル部隊が飛び立ち、空に亜人の大部隊が展開していく。
同時にテルガ達バーバリアン部隊が勢いよく敵に向けて石を投げつける。
石が悪魔達に触れた瞬間にテレパスで石と入れ替わるバーバリアン達。
「オリャアァァァァッ!」
目の前に姿を現すバーバリアンに隙が生まれた悪魔達が次々に地面に叩き落とされていくと次の石が別の悪魔達に向け投げられる。
テレパスを繰り返し一斉に敵へと襲い掛かるバーバリアン達に悪魔達は恐怖を感じずには要られなかった。
地上からはミーナ達、獣人が植物魔法を使い巨大な木を足場にして一気に成長させる。
空と言う最大の武器を無くした悪魔達は獣人の戦士達の身体能力に敵うわけもなく次々に切られていく。
一方的な戦いにチェルバランは自身の目を疑った。
幾多の戦いのデータから勝利を確信していたチェルバランは理解できない戦況と次第に自身に迫るミカソウマの亜人部隊に心臓を鷲掴みにされたような息苦しさと恐怖を感じ、怒りと憎悪が掻き消されていく。
「何が起きているんだ……何故だ! 未来を知る我等が何故苦戦する」
兵士に対して取り乱すチェルバランの姿に自信に満ちていた指揮官としての姿は既に無い。
「答えを教えてあげるよ、チェルバランッ! 僕達ミカソウマを敵に回した事が最大のミスだったんだよ。“ミカソウマに手を出せば国が滅ぶ”大陸すら落とした僕達に敵はないッ!」
チェルバランの前には刀を向けるコウヤの姿があり、既に悪魔達の戦意は失われ、戦うべきかを悩み出していた。
覚悟を決めたミカソウマの戦士達と数で勝とうとした悪魔達では戦いになる筈もなく、命乞いを赦さぬ修羅と化した亜人部隊に悪魔の大部隊が無惨に平らげられていく。
「こんな事をすれば、お前達の未来は無くなるんだぞ! 自分達の存在を賭けて戦うなど馬鹿げている……今からでも手を組まないか、お前達と私達が手を組めば世界が、全ての時代が好きに出来るんだ! 悪くない話だろ?」
咄嗟に口に出されたチェルバランからの提案。
「ふざけるな!」
拳を強く握り声をあげるコウヤに後退りするチェルバランは何かを待っていたかのように後ろを確認する。
そして、下卑た笑みを浮かべると手を翻したように声をあげる。
「アハハ、やっとだ、やっと来た! 残念だがさっきの交渉は無かった事にしてくれコウヤ=トーラス、今から死ぬ君達を仲間にしても意味がないからな」
チェルバランの後方から雲を割り姿を現したのは、巨大な空に浮かぶ大艦隊であり、周りを悪魔達が飛び交い大空を覆うように堂々たる姿を皆に見せつける。
形勢を覆す最終手段と言えるチェルバラン指揮の戦闘部隊が到着すると悪魔達に戦意が戻り攻撃は激しさを増していく。
そんな最中、大艦隊を目の当たりにしたコウヤは刀を鞘に収めると手を開き艦隊に向ける。
命乞いをするかのような振る舞いを前にチェルバランが勝利の雄叫びにも似た笑い声をあげる。
「アハハ、さぁ……言ってみろ命乞いが気に入れば私はお前達を助けてやるかも知れんぞ?」
コウヤは真剣な表情から一変して笑みを作り出すと一言だけ口にした。
「滅ぼせ……〔全ての元素は元の形となり静かに眠れ時は時間を遡り全てを無の元素へと誘いたまえ〕“ラスタム”ッ!」
その瞬間勝敗は決したと言っても過言ではなかった。
チェルバランの後方を飛行していた大艦隊が一瞬で砂になり、チェルバランの頭上に降り注いでいく。
「何をした……私の艦隊に何をしたッ!」
怒鳴り声をあげるチェルバランに冷たく視線を合わすコウヤ。
「ミカソウマは敵に情けは掛けない。戦うなら死ぬ覚悟も出来てるよね……チェルバラン」
コウヤは静かに収めた刀を抜くとチェルバランの前に歩みを進めていく。
1歩、また1歩と近づくコウヤに怯えるチェルバランはコウヤに再度命乞いをするが、コウヤに言葉が響く事はなかった。
振りかざされた刀は三日月のように綺麗な半円を描きながら振りおろされる。
「此れでチェルバラン、お前は終わりだ! 多くの悲しみを生み出した報いを受けて散れぇぇぇッ!」
「や、やめろ! ヤメテクレェェェ……」
チェルバランは自身が喋りながらに切り裂かれる事となる。
鋭い切れ味はチェルバランに恐怖を刻み死んだ事実すらも気付かせない程であった。




