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時空の先にある世界

 刃がアルディオの首に触れる直前、ランタンの大鎌の()が間に入り刃を止める。


「パンプキン……ッ! なんで、なんで止めるのさ、こいつは皆の仇なんだ! ソウマも、シアン様も、ギリオンだって、皆……アルディオのせいで死んだのに何でだよ!」


 コウヤの怒り、そして震える刃に籠る力、しかしランタンは引くことなく刃を止め続け、コウヤを諭すように声を掛ける。


「今は時間がありません。そして、無抵抗の相手を皆の前でコウヤさんに殺させる訳にはいきません。どうか、堪えて頂きたい……貴方は魔王なのです。感情で人を裁いてはいけない!」


 コウヤの刀からゆっくりと力が抜くと、アルディオの上から立ち上がり、悔しさに拳を握るコウヤ。


 アルディオはその光景に再度「本当にすまなかった」と償いの言葉を口にする。


 その場に居た者達は理解していたが割り切れる訳は無かった。

 目の前に同胞の仇が居ると感じるだけで全ての感情が怒りと憎悪に支配されるような感覚に襲われていた。


 ランタンが止めなければ、アルディオは死に皆の剥き出しになった感情は暴走し行った先で冷静な判断が出来ずに殺戮を善として行った事だろう。


 そうなれば、コウヤの心は完全に壊れてしまうとランタンは危惧したのである。

 その結果、恨まれる事になるとしても後悔はしまいと強く心を決めての行動であった。


 コウヤはランタンに対して小さな声で「僕を止めてくれてありがとう……」と呟き、アルディオを地べたに座らせるとコウヤ自身もその場に座り僅かな時間を会話に使う。


「僕は本気でお前を殺そうとした。謝る気もないし、今も殺したい程、憎いよアルディオ」


 低く冷たい声でそう語るコウヤ。


「殺してくれて構わない、もう準備は整ったんだ、君の手に掛かって死ぬなら私は本望だ。君には私を殺す理由しかないのだから」


 アルディオはあっさりとした口調に申し訳なさを交えて話を続けていく。


「私は最後までダメな人間だったよ。だからかな、君の力を貸して貰う選択が出来なかったんだ。ロナも救えなかった……あんなに私を慕ってくれていたのに……最後まで助けられなかった」


 涙を浮かべるアルディオ。


「お前がロナを捨てたんだろ……其れをッ!」


「ロナの最後の私への願いは君の元に帰る事だったんだ……しかし、私の父であるディノス=タクトの支配は終わらなかった……私の側を離れれば冷血な殺人衝動と君への憎しみに支配されてしまう……次第に自我を取り戻していたロナの苦悩の日々は日に日に増していったんだ」


 アルディオはロナから自我を失う前にコウヤと会いたいと相談を受けていた事、ロストアーツ(槍の王ザルガヌ)が一時的に殺戮衝動を戦闘本能に変換し、ロナの自我を保っていた事実を語った。


 ロナと対峙した時には既にロナの精神は限界であった事実を聞かされたコウヤはその事実に気付けなかった自身に怒り悲しみが込み上げてきた。


「コウヤ=トーラス、今から君達が向かう先は異世界じゃない……過去だ。頼むからロナを救ってくれ、最後に君の村を焼いた仇を私が討ち取ってしまった事を許してくれ、全てを止められなかったんだ、ごめん……」


 そう語るとアルディオは自身の心臓を隠し持っていた小刀(ナイフ)で突き刺すと抉るように力を込めて刃を突き刺したまま回す。


「アルディオッ! クッ……最後まで自分勝手過ぎるんだよ……ロナの事は

わかったよ……でも、後で罪滅ぼしはして貰うから……許すかは其からだよ」


 予期せぬ、アルディオの自害にコウヤは戸惑いを見せたが、直ぐに冷静さを取り戻すとゆっくりとアルディオをその場に横にする。


「全ての根本を滅ぼしてから、ゆっくり言い訳を聞かせて貰うよ」


 コウヤはそう口にするとロストアーツ(時空王)の力を使い時空に亀裂を作り、ゆっくりと中に入っていく。


 ランタンもポケットに大軍勢を入れるとコウヤの後ろに続いていく。

 その後ろにマトン、源朴と次々に亀裂の中へと続けて入っていく。


 時空の亀裂の中は光の道が続き、空には七色の線が流れ星のように一定方向に過ぎ去っていく。

 次第に出口であろう亀裂が大きくなり近づくにつれて、輝きを増していく。


 光の亀裂を抜けたコウヤ達の目の前には光が失われたかのような黒い雲に覆われた悪臭の漂う世界が広がっていた。

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