赤い花と満月の晩に
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それからの日々は魔力と体力を向上させる為の特訓を開始していた。
魔術に関してはミーナの教えを徹底して実行した。学校で習った基礎がどれ程、御粗末な物かが理解できた。
ダルメリアの魔術の基礎は人間の習う上級魔法までの流れと変わらなかったのである。
衝撃的な事実に戸惑うコウヤであったが、ミーナは基礎を1から教えた。
「体外魔力が使えたので獣人の子供と変わらないわ」とミーナは笑っていた。
そんなコウヤが毎朝、欠かさなかったのはダルメリアへの挨拶と感謝であった。
毎日のように花を持って魔力を注いでくれる獣人達への感謝も忘れなかった。
赤い花を持ってきて来る少女にも心から感謝していた。
コウヤは必死に学んだ。死にたくないと言うよりもっと色々な知識を知りたくて仕方なかったのだ。
精神状態で睡眠をとる感覚になれた頃、ミーナに質問をした。
「ミーナ? 赤い花ってこの森の何処に生えてるのかな、どんなに探しても見つからないんだ?」
コウヤの素朴な疑問に少し驚いていた。
「コウヤ? このダルメリアの森には、赤い花は一種類しかないわ、それを見つけても取ることは出来ないだろうけど?」
ミーナの返答に少し疑問を感じたが、深くは考えなかった。
それから直ぐ、季節がかわる。何度もそれを繰り返していった。
気づけば年月が過ぎ、肉体は初めて見た時よりも、生き生きとしているように見えた。
精神状態のコウヤもかなり鍛えられ、知識や魔法の腕を上げていた。
不思議なのは精神状態だからなのか、一日を肉体で感じていた頃より遥かに早く過ぎるように感じる事であった。
感覚で言うならば、3日間を1日程の時間で流れて行く感覚。其れを感じさせないのは、コウヤの肉体の回復にあった。
本来ならば3日に1度の睡眠となれば、肉体は衰弱していくだろう。だが、其れを上回る精神力と獣人達による魔力供給が肉体を回復させ、更に細胞までも活性化させていたのだ。
そして、精神と肉体が繋がる瞬間がやって来たのだ。
今まで繋がれなかった事には理由があった。
ダルメリアの意思である。ダルメリアはコウヤを自身で包み込み、離さなかったのだ。
無理に精神と肉体を繋げれば、それにより生じるエネルギーにダルメリア自体が巻き込まれる事になる。
最悪の場合、コウヤとダルメリアが融合してしまう恐れがあったからだ。
その日の状況は違っていた。いつも通りにダルメリアに挨拶に行くと、何時もすぐに消えてしまう少女が、コウヤを待っていた。
「やっと話せるね。いつもお花をありがとう。僕の声は聞こえるのかな?聞こえてたら嬉しいんだけど」
少女がコウヤの声に反応して近づいてきたのだ。
「アナタハ……ココカラ……デタラ? カエッテ……コナイノ?」
少女の言葉は、 かなり聞きずらかったが確かにそう聞こえる。
「僕は此処が大好きだから、間違いなく帰ってくるよ。何度でも戻ってくるさ」
少女がその言葉を聞くと、コウヤに向かい赤い花を手渡したのだ。
「ありがとう。嬉しいよ」
少女は次の瞬間、姿を消していた。
そして、コウヤを包んでいたダルメリアの樹が開かれていたのだった。
それに気づいた獣人が慌ててミーナ達を呼んだのである。
「おめでとう。君の身体と精神は今夜1つになるわ」
ミーナは嬉しそうにコウヤに話してくれた。
満月の晩でなければ使えない、その魔法は獣人のみに扱える物であった。
コウヤの肉体は既に回復していたが、満月の現れる、月の始まりの日に成ると何故かダルメリアは樹を閉じコウヤの復活を許さなかったのだ。
ーー月の始まりの日
毎月、1日を知らせる日の事である。
始まりの日から、月が出ない、終わりの日までを1ヶ月とし、1年を12カ月とする。
だが、日数はバラバラであり、1年が400日の年も有れば350日弱の時もあるのだ。
そして今日、コウヤの肉体はダルメリアから解き放たれた。
獣人達が集まり、満月の光が空から差し込むのを確認すると、全員が同じ呪文を唱え始めた。
そして、全員が手を天にかざすと月の光が一点に集まり出し、その先にあるコウヤの肉体が徐々に光だし体内に引き寄せられていく。
コウヤの肉体は更に輝きだし、精神のコウヤも光に吸い込まれるようにして、肉体へと帰っていったのだ。
ワスレ……ナイデ……ヤクソク……ダヨ……コウヤ……
頭に声が響き渡る。
「コウヤ、コウヤ、私がわかる?」
聞き慣れた声に名を呼ばれて目を覚ました。
「ミーナ、忘れるわけないじゃないか」
コウヤが目を覚ましたのは朝になってからだった。
そして、コウヤのために集まった沢山の獣人の姿がそこにはあった。その一人一人が花を持って来てくれていた獣人達であり、心からコウヤは感謝した。
「皆さん、本当にありがとうございました。
僕は皆さんに救われました。本当にありがとうございます」
まだ、フラフラするその身体で何とか立ち上がり頭を下げようとしたが身体も足も言うことをきかなかったのだ。
「まだ無理よ? 取り敢えず、歩く練習からね」
その声を聞き振り向くと其所には、コウヤの知るミーナの姿はなかった。振り向いた先に居たのは小さな女の子一人立っていた。
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