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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第三部 光の先に見える物
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ミカソウマ……ブラッドマン

 巨人の足に刀を突き立てたコウヤに迷いはなく、怒りに震える手から刃の先に魔力を注ぎ込み、魔力を炎に変換すると“ドガン”と言う鈍い音がなり、同時にコウヤの作り出した防御魔法に泥の塊が飛び散っている。

 コウヤは巨人の足に対して内部爆破を起こさせたのである。


 無表情のままにバランスを崩す巨人、そして、跳ね返ってきた巨人の一部が泥である事実を目の当たりにすると刃を感情のままに振るい、最後は火炎魔法で巨人の全体を吹き飛ばした。


「酷いなぁ、オイラの作品が粉々だわ?」


 無事なゴーレムの肩の上から声を掛けてくる男、戦いには不向きなタキシード姿に全身を彩るように輝く金品、綺麗な顔に似合わない下卑た笑みを浮かべている。


「はじめまして、オイラは」


 自己紹介を始めようとする男、しかしコウヤが話を中断させるように一言口にする。


「名前なんか聞きたくないッ!」


「ギャアアアアァァァ」


 コウヤはテレパスにより男の背後に移動すると刃を迷う事なく斬り付ける。

 更に男が本物かを確かめるように前に移動すると首を掴み、刃を眼球すれすれに近づけ反応を窺う。


「ヒグッ、助けてくれ、オイラは兵士じゃない! 只の運び屋なんだよ……島を大陸まで引くのが仕事なんだ、頼むから助けてくれ」


 男の目から流れる涙と命乞い。


「あの巨人の顔は貴方が選んだの?」


 その言葉に視線を動かし動揺する男、コウヤはその反応に眼球に向けていた刃を耳に向け下から上に振り上げる。


 “ベチャッ”と肉の落ちる音と共に「うぅぅぅぅううう」と口を押さえながら上がる男の叫び声。


「時間がないんだ……あの顔は貴方が作ったの?」


 怯える男が身を震わせると刃がもう片方の耳に当てられる。


「言うから! 言いますから……」


 男は人の骨から土の巨人を作り出す事が出来るロストアーツの所有者である事とアルディオから渡された小さな骨の欠片からソウマそっくりの巨人を作り出した事実をコウヤに伝えた。


「わかったよ、貴方の名前は?」


「オイラは、エイレンだ」


 名前を聞いたコウヤは笑みを浮かべ口を開く。


「アルディオの仲間は一人も生かす気はないんだ。サヨナラ、エイレン……」


「ギャアア……」


 コウヤがエイレンを始末すると巨人達が次々と崩れ去り、時空島から次々に悪魔達の大部隊が姿を現していく。


 ランタンと飛行部隊と共に真夜中の星空にその身を置いた。

 悪魔達の殆どが人間に翼が生えたような姿をしており、斬る度に自身に吹き付けられる反り血はコウヤの全身を真っ赤に染めていく。


 噎せ返るような他者の血の臭い、次第に赤く染まる自身の視界、コウヤは戦い続ける中で自分自身が魔物(モンスター)になっていくような感覚に襲われていく。

 感情が次第に闇にのみ込まれようとする最中、時空島から姿を現した海水で造られた巨大な怪鳥、その背中にはブラッドマンが立っており、コウヤに向かって一心不乱に突っ込んでいく。


「今日こそ、決着をつけましょう! コウヤッ!」

「今日こそ、仲間達の仇を討つッ! ブラッドマンッ!」


 互いに叫びを上げ、コウヤは自身の火炎魔法を最大にして、撃ち出すとブラッドマンの怪鳥が炎とぶつかり、凄まじい爆発が起きる。


 ブラッドマンはロストアーツの力で海面の一部を血液に変化させ着地する。

 コウヤも同様に海面を凍らせる事で足場を作り出す。


 ブラッドマンとコウヤが駆け出し、正面からコウヤの黒刀とブラッドマンの血液で造られた血の刃がぶつかり合う。


 激しい斬撃を互いに紙一重で躱していく。


 コウヤの怒りとブラッドマンの怒り、互いの憎悪が形となるよう入る隙のない戦いにランタンはコウヤの身を案じていた。


 コウヤは自身の力を未だに完全に開放していない。

 その事実を知るランタンは力の暴走を恐れていた。


 冷静で誰よりも仲間に優しく、守りたい物の為に自身の身を危険に晒すコウヤ、その胸に輝くロストアーツ(瑠璃色の王)の暴走が現実になった時、コウヤの大切な物を全て無にする力を秘めているからである。


「ブラッドマンッ! お前は絶対赦さないッ!」


「誰が貴方の赦しを求めましたか! コウヤ=トーラスッ! 蛮族の王にして、大罪人よ! 骨すら残らぬように世界から葬りましょう!」


 斬り合い、刀がぶつかり合った瞬間、

ブラッドマンの血で造られた刃から無数の針がコウヤを襲う。


 回避しようと体勢を変えるコウヤ、その瞬間、ブラッドマンのもう片方の手に作り出されるもう一本の刃。


「アハハハッ! 終わりです!」


 ブラッドマンの刃が頭目掛けて斬りつけられようとした瞬間、テレパスを使い回避するコウヤ。

 悔しさと苛立ちが沸き上がるコウヤはブラッドマンの背後にテレパスで移動する。

 ブラッドマンは既にコウヤが背後に来るであろう事を予想し、足元に血溜りを作り出していた。

 コウヤの足が血溜りに触れるとコウヤの足を針となった血液が貫き、コウヤの足から無数の針が飛び出す。


「グッ……ウオォォォォ!」


 足を貫かれたコウヤは更に足に力を入れて踏みしめると刃をブラッドマンに対して振り抜こうとする。


 ブラッドマンは血液で作った壁でコウヤの刃を防ぐとコウヤに対して自身の刃を振り上げる。


「その足では集中する事は難しいでしょう……逃げてばかりでは終わりません、大人しく死んで頂きたい!」


 コウヤに振り掛かる最大の危機、その刃はブラッドマンの予想だにしない人物により防がれる事になる。


 あり得ない速度で氷から姿を現した巨大な植物の幹がブラッドマンの刃を止め、コウヤを守るように包み込んだのである。


「無事みたいね。君はいつも無茶し過ぎよコウヤ」


 コウヤの危機を救ったのはミーナであった。

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