ミカソウマ……最後の戦場4
海に散っていったギリオンの最後の使命はコウヤへの敵撃破失敗のライエスと謝りの言葉であった。
『コウヤ様……僅かに我が刃、敵将、ブラッドマンに及ばず……御武運を……』
『ギリオンどうしたんだ!』
『…………』
『返事をしてくれ……クッ、ギリオォォォン!』
ライエスにギリオンからの返答は無く、コウヤはギリオンの身に何かあったのだと理解した。
コウヤ達の戦っていたゴーレム達はレイシアの能力から切り放された事により活動を停止していた。
ギリオンは自身の命と引き替えに犠牲を最小限にする為の戦いに勝利していたのだ。
ギリオンの身を案じるコウヤは体外魔力を自身に集中させると刃をゴーレムに突き立て雷魔法を刀を通して送り込みゴーレムを次々に粉砕していく。
日が暮れようとする海上、コウヤはゴーレムを粉砕後も必死にギリオンにライエスを送るが返ってくる事はなかった。
敵部隊は進軍を中止し静けさと潮風だけがコウヤを包み込んでいく。
コウヤ達もミカソウマの港に作られた本陣に帰還する事になり、其から直ぐに兵士達の被害状況と傷の有無を確認していく。
明らかになったのはギリオン隊の全滅という最悪の結果であり、帰還した部隊からはゴーレム以外の目撃報告は無く、ギリオン隊が唯一、敵部隊と戦闘を行った事実をコウヤは知る事となる。
深く落ち込みコウヤは自身が戦争をしている事実と敵に攻められている事実を改めて感じていた。
多くの犠牲を出した島での戦闘後にギリオンと言う存在を失ったコウヤは激しく怒り、その怒りは憎しみに変わっていく。
そして、コウヤはギリオン隊の穴埋めを自身が引き受ける事を決める。
コウヤの受け持っていた中央にランタンが移動し、マトンが副官としたのである。
コウヤの部隊はギリオン隊同様にガーゴイルとハーピィー、セイレーンの部隊が新たに構成され、部隊の副官として、キュエルとベルミが加わる事になる。
部隊が構成されるとコウヤは日の出と共に攻撃を開始する事を皆に伝え、見張りに獣人よりも夜目に優れたゴブリン部隊を起用した。
真夜中になり、月が無い夜に無数に光る星明かりが海を照らしている。
しかし、静かな海に波が次第に起き始める。
星明かりに照らされる巨大なゴーレムの軍勢を眼にしたゴブリン部隊から緊急の連絡がコウヤの元へと届くとミカソウマの港は慌ただしく武器を手にした兵士の姿で埋め尽くされる。
そんな中、コウヤ自身は自分の目を疑うような光景を目の当たりにする。
急ぎ敵を駆逐しようと船に乗り込むヴァイキングとドワーフ達を前にコウヤは声をあげる。
「な、朝よりも速度が速い! 船は出さないで! あの速度に船は対応できない……飛行部隊だけで行くしかない」
ゴーレムは朝の3倍もの速度で海を進行しており、コウヤ達の眼には、進軍速度がその何倍にも早く見えていた。
コウヤとランタンを筆頭に海に飛び立つ飛行部隊がゴーレムに向けて飛んでいく。
次第に距離を縮めるコウヤ達はゴーレムに対して違和感を感じていた。
確かに巨大であったが朝のゴーレムよりもサイズは小さく、何より海水で出来ている筈の体は星明かりに光りもしていないのだ。
部隊が近付くにつれて、明らかになったのは、ゴーレムと思っていた其は巨人であり、体には鎖が巻かれて、その先に海水を固めた土台乗せられた時空島の姿があったのである。
「此れって!」
驚きの声をあげるコウヤ。
「此れは、島その物をミカソウマに進軍する船としている見たいてますね。急がねばミカソウマに時空島が激突します!」
ランタンの声に急ぎ攻撃を開始しようとするコウヤは次第に見えてくる巨人達の姿、そんな中、星明かりに照らし出された一人の巨人の顔を目の当たりにして声を失う。
「なんで……ソウマと同じ顔をしてるんだ」
巨人の一人はコウヤの師であり、コウヤの母、ミカの旦那となった存在である、ソウマその物であった。
ランタンも目の前に姿を現した巨人の顔を見ると拳を握り怒りに震えるように声を響かせた。
「死人を悪戯に復活させるだけでは飽きたらず、この様な真似をするとは、些か不愉快です!」
コウヤ達の存在に気づくと数人の巨人がまるで蚊を潰そうとするように両手を飛行部隊へと向ける。
見た目と違い俊敏な動きに慌てて回避するコウヤ達。
「悩めば……此方が殺られる! ランタン、あのソウマそっくりな巨人は僕が引き受けるよ。他の巨人も手分けして全滅する……」
震える声でランタンにそう語るとコウヤは鞘に手を掛け、戦闘体勢に入る。
「コウヤさん、私がやりましょう。流石にあの見た目ではコウヤさんには辛すぎます」
「いいんだ……あれはソウマじゃない! ソウマは僕の中に生きてる……偽物は僕が絶対に赦さない!」
コウヤは刀を抜くと巨人に対して刃を向ける。
覚悟を決めた男の眼を敵に向けるコウヤの姿にランタンはそれ以上の言葉は無意味であると理解した。
そして巨人とコウヤの戦いが始まる。




