肉体と精神のタイムリミット
今まで感じた事が無い程の凄まじい輝きを前にコウヤは体外魔力を解除しようとしていた。
その時だった、ミーナが手を力強く握った。
「怖くないよ、大丈夫だから。コウヤ落ち着いてゆっくり光の先を見てみて」
“光の先を見る”その言葉を聞き、必死に意識を集中させた。
さっきまで、眩しくて何も見えなかったその先に微かに道が見えた。
次の瞬間、光は弱まり今まで知らなかった景色が目の前に現れる。
ーー此処は何処なんだろうう?
辺りを見渡したが、やはり見たことの無い景色。
「驚いたかな?」
ミーナはそう言うと簡単に今の状態を説明してくれた。
「コウヤ、君は死ぬか生きるかの本当の2択を迫られているの」
ミーナの表情は重く、今の状況が緊迫しているのだと理解した。
「ミーナ……僕はやっぱり死ぬのかな?」
「君を死なせないよ! どんな事が有っても、この身に代えても私が絶対に連れて帰るから」
その言葉に嘘は感じられなかった。ミーナは今も自身を危険にさらしているのだとコウヤは理解する。
「帰るならミーナも一緒だよ、二人一緒だ……一人で帰るのは嫌だよ」
素直に感じるままにミーナへと向けられた言葉。甘ったれな発言だった。ソウマなら、もっとましな言葉を選ぶであろうと思いながらも今のコウヤから素直に口から出た言葉はその一言であった。
「君は素直だね、コウヤ嬉しいよ、なら二人で帰りましょう」
そこからは、記憶が曖昧であった。
ミーナに手を引かれるままに光を進む。気づくと光の先にある出口に立っていた。
「ミーナ、此処は何処なの?」
「此処は“ダルメリアの森”よ」
ダルメリアの森コウヤの知らない地名だった。
「ダルメリアの森は人間側からは見えないのよ、獣人の森って言った方がピンと来るかしら?」
獣人の森と言う言葉には聞き覚えがあった。しかし、コウヤにとってその名は名前だけは知っている程度のモノであり場所や詳細は知る処ではなかった。
この大陸の全ての獣人の産まれる神秘の森であり、世界に幾つか存在する人間の立ち入れない禁断の地の1つであった。
「なんで、獣人の森に僕なんかがいるの」
コウヤは自分が何故、森に居るのかが気になっていた。
「今、コウヤの肉体はダルメリアの森にあるからよ」
その言葉に耳を疑った。訳がわからなかったからだ。
「どういう事、僕にも解るように話して、ミーナ……」
ミーナは此方を見てハッキリと言った。
「コウヤは刺されて死ぬ寸前だったの。其所に君の師匠ソウマが駆け付けたの、必死の回復魔法のお陰で、何とか命だけは繋ぎ止めたのよ、もしソウマの帰りがあと少し遅ければ確実に君は死んでいたわ」
ーーソウマが来てくれたんだ、あの時の声は間違いなくソウマと母さんだったんだ。
「私も事件を聞いてから、君の家に通うようになったの、私とソウマは毎日交代で治癒魔法と再生魔法をひたすら君に使ったの、だけどそれだけじゃ力が足りなかったのよ」
ミーナとソウマは、持てる魔力と知識を使いコウヤの為に寝る事もせず交代で回復魔法と蘇生魔法を掛け続けていた。
二人の魔力は、王都の医療魔導師よりも遥かに高く、ミーナの医学知識はその更に上をいっていた。
ソウマも医学に精通しており、二人の力があればこそ、コウヤは命を繋ぎ止められたのだ。だが二人が交代でコウヤの回復に力を注いでも、命を繋ぎ止めることしか出来なかったのである。
「コウヤの肉体と精神をダルメリアに入れるのに、本当に苦労したわ、ダルメリアが禁断の地と人間が言うのは入れないからなのよ」
立ち入れないのではなく、“入れない”その言葉にコウヤは違和感を感じた。
「どういう事?」
「簡単に言えば、ダルメリアに拒絶されるのよ、ダルメリアには意思があるの」
ある事件が切っ掛けでダルメリアは人間を完全に拒絶するようになった。
人間の欲望や嫉妬は自然界のどの生物よりも、遥かに強く、ダルメリアはそんな人間の全てを嫌うのだとミーナは説明してくれた。
「そんなダルメリアにコウヤは受け入れられたの」
コウヤの見ていた日常は、ダルメリアからの試練だったのだろう。
ダルメリアは人の一番いたい場所を試練に選び、そこに魂を縛りつける事で人間の侵入を拒絶し続けてきたのだ。
だが、ソウマのくれた木の実がダルメリアに何らかの影響を与え、その試練にずれが生じたのだ。
そのお陰でコウヤの精神はダルメリアに入れたのたのだ、ソウマと母の思い、愛情を全身に感じた。
「コウヤ来て、貴方の肉体のある場所に案内するわ」
言われるがままにミーナの後ろをついていく。
しかし自分の姿を確認するのが、こんなに嫌だと感じる日が来るとは想像もしていなかった。
案内された先にあったのは、二人のあった大樹より遥かに巨大な大樹だった。
「これがダルメリア、“母なる大樹”」
その下の幹にまるで包まれるように、眠りについているコウヤの肉体が横たわっていた。心なしか痩せているようにコウヤには見えた。
「僕が僕を見てるって変な感じがするな」
母なる大樹、ダルメリアに抱かれ眠るその顔は安らかな表情をしていた。
精神と肉体は一時的に分担されているとミーナから聞かされた、コウヤはこれからの日々を此所ダルメリアで過ごす事になる。精神と肉体を繋ぐために、精神であるコウヤはミーナから知識を得るために学ぶ事になる。
精神が成長をやめれば、肉体はやがて朽ち果てるだろうとミーナは語った。コウヤ自身にタイムリミットが存在する事をその瞬間、知ることになったのだった。
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