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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第三部 光の先に見える物
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ブラッドマン2

 ブラッドマンは自分の手に巻かれた包帯と起きた瞬間に頭から膝に落ちた濡れたタオルに気づく。


「これ、土汚れがない……綺麗な水を使ったのか! 言っとくが食べ物すら無いんだから金も無いぞ……」


 弱い口調でそう言い放つとソルティーは呆気に取られた後、腹を抱えて笑っている。


「大丈夫よ。私達が好きで人を助けたんだからお金なんて要らないわ。それより名前は何て言うの?」


「名前なんて……俺には無いよ。みんな俺を「お前」とか「ガキ」としか呼ばないから」


「それは酷いわね? なら私が名前をあげるわ! 格好いい名前をあげるから期待しなさい」


 成人であろうソルティーが子供のように無邪気に笑う姿に馬車の手綱を操るもう一人の獣人からも笑いがこぼれ出した。


「取り敢えず自己紹介は済んだようだな。オイラはベルモ。妻のソルティーと旅をしてるんだが運が良かったな」


 ベルモと言う男の獣人はそう言いながら、煙草を加えた口から煙を豪快に吐き出した。


「ゲホッゲホッ、それって煙草! 貴族が吸う高級品じゃないか、まさかアンタ達、貴族なのか?」


 ブラッドマンの言葉に顔を見合わせるソルティーとベルモは腹を抱えて笑い転げそうになっている。


「アハハ、アンタ私達が貴族に見えるわけ? ないない、私達はダルメリアの獣人さ、有名だから聞いた事はあるだろう?」


 ブラッドマンの頭の中で聞き慣れないダルメリアと言う言葉が脳内で浮かんでは消えていく。


「駄目だ。俺にはわからないや、学校に行ってたら分かるんだろうけど? 俺、学校に行てなかったから」


 ブラッドマンの言葉に驚くソルティー、しかし、ベルモは黙って煙草を貝の灰皿に擦り付けると軽く頷き口を開いた。


「世界は争いを好む人間に支配されてるからな。その争いから新たな悲しみが無限に生まれ、強き支配者達は皺寄せを弱者に払わせる」


 ベルモの言葉を聞き“グッ”と拳を握るブラッドマン、怒りからの握り拳でなく、悔しさから握ぎられた拳であった。


 ブラッドマンの悔し泣き寸前の表情にソルティーがベルモ睨みつけると慌てて手綱に集中する。


「ごめんね、まさか貴族に間違われる何て思わなかったし、ベルモも悪気はないのよ?」


 申し訳なさそうに後ろをしきりに確認するベルモ。

 そんな時、ソルティーが声をあげる。


「決めた! 君は見つけた時に血だらけの傷だらけだったから“スカーボーイ”よ」


 その発言にベルモが驚き、後ろを振り向く。


「なんでソルティーは何時も変な名前しか思い付かないんだ!」


「いつも……他にもあるの?」


 ブラッドマンの質問に対してベルモは頭を抱える。


「嗚呼、オイラ達には娘が居るんだが、凄く可愛くて、天使みたいなんだぞ。彼氏なんて出来たなら、オイラは泣いてしまうよ!」


 その後も続いた愛娘の自慢話に困り果てるブラッドマンは話の途切れた一瞬に話を切り出した。


「ならさ、娘さんみたいな、いい名前を付けてくれよベルモさん!」


「そうだな? だが、ソルティーの言い分も捨てがたい。拾う位置が悪いんだろうな? 血だらけの男……なら、ブラッドマンでどうかな?」


「ブラッドマン? “マン”ってなに?」


「島人の世界には英雄や奇跡を起こす存在と言われる人に“マン”と言う言葉を尊敬の込めてつけるそうだ」


 その言葉に目を輝かせるブラッドマンに笑みを浮かべるベルモ。


「なんせ、砂漠を一人の少年が生き抜いてオイラ達に出逢ったんだ。奇跡だとは思わないかい?」


 此れがブラッドマンが名を手に入れた瞬間であった。


 其からの旅は一週間程であったが、ブラッドマンの人生の中で一番の幸福を感じた瞬間であった。


 ブラッドマンは無事に砂漠を抜け緑の大地に辿り着いたのである。

 旅の終わりは涙と共に笑顔も溢れていた。


 一週間と言う短くも長い時間の中でブラッドマンは少なくも教養を学び、言葉を読めるようになり、言葉遣いを教わる事で近隣の村での生活を許される程に変化していた。


 それはブラッドマンに取って欠け替えの無い時間であった事は言うまでも無いだろう。

 其からの数年、ベルモとソルティーとの交流は続きブラッドマンは少ない魔力を上手く使う方法を教わり、狩りなどにその力を発揮していた。


 初めは体外魔力を教えようと試みるソルティーであったが、体外魔力を使えないブラッドマン。

 その際にベルモとソルティーが話し合い地脈から魔力を吸引する方法を教える事を決めたのである。


 二人に会う度に笑顔が増えるブラッドマンを見て喜びの笑みを浮かべるベルモとソルティー。

 ブラッドマンはその頃、医療を学ぶ為にソルティーから多くの知識を会う度に教わっていた。


「ブラッド、貴方は此れからも多くを学んで欲しいの。だから貴方にプレゼントよ」


 ブラッドマンに渡された三つのロストアーツ。

 それこそがブラッドマンの後の武器となるロストアーツである。

 本来の使用法は、輸血の血液の作製、DNAを適合させる為の変化、血液の流れの操作をする為の医療用のロストアーツであった。


「ソルティー、俺は絶対に医者になる。多くの助けるべき命を助けて、戦争で無抵抗の人が死なないように必死に訴えるよ!」


 医療を学ぶブラッドマンは村の小さな診療所で助手として働き出していた。

 充実した日々がゆっくりと過ぎていく。


 しかし、そんな生活も突如として、崩れ去る事になる。


 ブラッドマンがその事実を知る事になったのは、ダルメリア襲撃事件の噂を耳にした事から始まる。


 ダルメリア襲撃により、他の獣人への事件がうやむやに為っていたのである。


 ブラッドマンの住む村を訪れた集団、その出会いはブラッドマンの人生を大きく変える物となるのであった。

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