ブラッドマン
コウヤはブラッドマンに対してある疑問を感じていた。
ブラッドマンの流し続ける血液の異常過ぎる量である。
死にかけた経験のあるコウヤは、人の血液が無くなるにつれて体に起きる変化を知っている。
それがブラッドマンには存在していない様に感じていた。
敵を目の前に考えを巡らせる事は死に繋がる。
其を承知でコウヤは刹那の瞬間で思考を巡らせていた。
コウヤの魔眼に写るブラッドマンの足元から流れる微かな魔力、その光景に頭の中で浮かんだのはミーナが以前ダルメリアで教えた魔力コントロールの高等技術であった。
方法は足元から地面の魔力を吸い上げると言う体外魔力に似た技術である。
地面に魔力を流し、無理矢理地脈に流れる魔力を体に中継する事で無限に魔力を吸い上げ続ける。
人間の世界には存在しない魔力コントロールである。
ブラッドマンはこの魔力コントロールを知ったのはある獣人が切っ掛けであった。
まだブラッドマンが人間として真っ当に歩んでいた幼少時代。
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ブラッドマンは孤児として、一人孤独に生きていた。
生きると言えば聞えは良いだろう。
しかし、子供が一人で生きるには余りに過酷な状況であった。
食べる物は乏しく、孤児が溢れた貧しい敗戦国で誰にも見つからぬ様に身を隠しながら僅かな食料を口にする生活を強いられていた。
水は土と埃がで黒くなり、汚染されている。
その水でさえ僅かな配給になっており、家の無いブラッドマンが手に入れるのは困難な状態であった。
ブラッドマンはそんな生活から抜け出す為にある決断をする事になる。
国境を越えて数百キロの道のりを移動する事をきめたのである。
多くの者達が国境を越えようとするがそれを止める者はいない。
国境を越えた先に在るのは広大な砂漠であり、何処までも砂の世界が広がっていた。
死に急ぐ者の為に用意された砂の世界である。
砂漠に入り数日が過ぎていく。
ブラッドマンの手元に既に食料は無く、砂漠の過酷な環境に限界が近づいていた。
「くそ、くそ……何で、こんな所で死んでたまるか」
薄れる意識の中、瞼に照りつける太陽は砂漠を灼熱の世界に変える。
喉の乾きは限界を向かえ、舌が乾きに耐えきれずへばり付いていく。
そのまま、意識を失い砂に倒れ込むブラッドマン。
次に意識を取り戻した時、ブラッドマンの目に入ってきたのは淡い赤髪に緑の眼、スラッとした細身のショートヘアの女の獣人であった。
気にかけて喋りかけてくる獣人に驚いて飛び起きるブラッドマン。
「あら、意外に元気そうね。急いで水を飲ませて良かったわ。死なれたら水が無駄になるから本当にホッとしたわ」
その言葉にブラッドマンは喉の乾きが消えている事実に驚きを隠せずにいた。
「アンタ、俺は奴隷にされるのか?」
「奴隷なんて野蛮よ? 私はソルティー。でも人間の考える事は何でいつも好戦的なのかしらね」
ブラッドマンとソルティーの出会いの瞬間である。




