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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第三部 光の先に見える物
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戦場を染める者3

 ブラッドマンの言葉を聞き、ロナを安全な場所に移動させようとするコウヤ。

 怒りに震える拳を必死に堪え、ブラッドマンの動きに警戒しながら、ゆっくりと移動を開始する。


「随分と慎重ですね? ですが慎重なのは大切な事です。特に相手が得体の知れない相手ならば尚更です」


 その瞬間、コウヤの目に入ってくるブラッドマンの指先から地面に滴る赤い液体。


 即座に魔眼を発動し、地面を確認した瞬間、コウヤは地面を力強く蹴り横に跳ぶ。

 コウヤが回避した瞬間、地面から突き出された赤い棘の刃。


「おや? 躱しますか、やはり簡単にはいきませんね。実に結構な反射神経を御持ちの様で関心いたしました」


 ブラッドマンは透かさず両手にナイフで傷を刻むと流れ出した血液をコウヤに向けて打ち出していく。


 打ち出された血液は酸のように姿を変えると辺り構わずに猛威を奮っていく。


 酸からは有毒ガスが発生し周囲は次第にガスで靄が立ち込め始めていく。


 コウヤは即座にロナを地面に寝かせれとテレパスを使い海岸に移動する。


「なんと! 可愛そうなロナ……コウヤ=トーラスに見捨てられてしまうなんて、ですが大丈夫……直ぐに後を追わせて差し上げますので、安心して死んでください!」


 ブラッドマンがロナに対して手を伸ばそうとした瞬間、ロナとコウヤの位置がテレパスにより入れ替わる。


「ウオォォォォッ!」



 掛け声と共にコウヤは目の前のブラッドマンに対して斬り掛かったのである。


 テレパスで海岸に移動したコウヤは体外魔力を使いロナに視点を合わせ、再度テレパスを使うタイミングを見計らっていたのだ。


 ブラッドマンが慌てて回避をする瞬間、コウヤは片手に火炎魔法を作り出すと顔面に目掛けて打ち出したのである。


 その瞬間、ブラッドマンは左右のどちらかに回避する他ない状況に追い込まれるもコウヤは即座に左右に石壁魔法を発動していく。


「ヌゥグアァァァァッ!」


 ブラッドマンの叫び声が発せられるがコウヤは攻撃の手を緩めずにひたすらに火炎魔法を撃ち続けていく。


 10秒程の間、撃ち込まれ続けた火炎魔法、左右を石壁に覆われ逃げられぬ熱がブラッドマンを覆い尽くす。


 勝負は一瞬で決まったかの様に思えた瞬間、コウヤは急ぎその場から移動する。


 地面の中から姿を現したブラッドマンは無傷であり、高温に晒された筈のスーツもシルクハットもまるで新品のようにシワ1つない状態であった。


「実に危なかった、なんと冷酷かつ容赦の無い殺意、此こそが魔王となった男の本性なのですね! 感動でこの身が弾けてしまいそうですよ」


 幸福に満ちた表情の先に立つコウヤを見つめながらブラッドマンは始めて自身から駆け出していく。


 加速と言うべき人では出せぬ程の速度で一気にコウヤの目の前に移動するブラッドマン。

 それに対して冷静に距離を取ろうとするコウヤ。


 両者が正面を向き合うとブラッドマンは高速で血液を撒き散らし、辺り一帯を更にガスで充満させていく。


 コウヤは必死に回避する最中、次第に攻撃速度が上がっていくブラッドマンに押され始めていく。


 ブラッドマンは自身の血液を凄まじい速度で一気に撒き散らし、コウヤはひたすらに其を回避する。

 しかし、更に攻撃速度が上がるとコウヤは防御と回復に力を裂くことになっていく。


 ブラッドマンの狙いはコウヤの足であった。

 次々に撃ち出される酸の血液がコウヤに当たり始めると状況は更に不利な物へと変化していく。


 戦いの主導権を完全にブラッドマンに持っていかれたコウヤ、そして回復に耐えられなくなった足の神経が悲鳴を上げ始める。


 激しい痛みで足が中から破裂してしまいそうになる中、コウヤはテレパスを使うに使えない状況で起死回生の突破口を探していた。


 本来ならば逃げると言う選択を選ぶべきであるにも関わらず、コウヤの中に逃げると言う選択肢は存在していなかった。


 友であるガンドラとヴァルハーレンの仇を目の前に逃げる事など出来なかったのである。


 ブラッドマンは其を承知してわざとガンドラの最後をコウヤに見せ、更にヴァルハーレンから奪った戦利品をチラつかせたのである。


 全ては最後を最高の物にする為の演出に過ぎない。

 ブラッドマンは最高のコウヤ=トーラスという御馳走を喰らう為だけに用意したシナリオであり、ヴァルハーレンから先に仕止める選択をしたのもそれが理由であった。


「アハハ、実に名残惜しいですが、そろそろ終わりにしましょう。料理とは、熱いうちに食べねば味が半減する物も多い……今が最高に美味しく頂けそうに感じますよ。コウヤ=トーラス」


 そう言うとブラッドマンは自身の両肩から右手までをナイフで切りつける。

 勝利を確信した下卑た笑みがコウヤを包み込んでいく。

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