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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第三部 光の先に見える物
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“三本刀”1

 次の日の出迄の間、敵の夜襲を警戒し夜通し警戒が続いていた。

 理由、夜更けになった際、太鼓の音が突如として鳴り響き、攻めるように戦場を馬が駆け、弓矢を放ち即座に撤退する。

 そんな状態が不定期に繰り返されたのである。


 コウヤ達はその度に夜空から降り注ぐ大量の矢を防壁と防御の二つの魔法で防ぎ、敵の元に向かうも、敵の作った戦場の落とし穴に次々と仲間達が落下し下に仕掛けられた木の杭の餌食になっていた。


 落とし穴を掘り、敵をわざと呼び込み、罠にかける。そんな戦術の前に空から移動する者も居たが、敵の大砲から放たれる巨大な網が空での自由を奪い地上に全ての者を落下させる。


 一手を返せば、五手を打たれるような状況が夜の間、数時間、或いは数分おきに繰り返されていたのだ。


 そして、日の出と共に鳴り響く法螺貝の()と太鼓を打ち鳴らす音と共に敵兵が一斉に姿を現した。


 先手を取ろうと魔導銃部隊が前に出る。其を待って居たように昨晩の落とし穴から姿を現した敵兵が次々に魔導銃部隊を襲い、近付いてきた敵兵に魔導銃を放つも、体に巻き付けられた爆薬が破裂し極小の鉛玉が散弾銃のように魔導銃部隊の命を奪い去っていく。


 死を前提にした策略、勝利の為に死を選ぶ者達の存在。

 全てがコウヤ達の知る戦い方ではなかった。

 異なった文化、生きてきた世界の違いは命の価値すらも変える現実を目の当たりにし、コウヤ自身も知らぬ間に震えていた。


 源朴の生き残りの部下が残した塹壕の位置を確認するコウヤは走り出した。


 それに加勢するようにアルバーンの戦士と王であるガンドラが肩を並べる。

 そして、片方にヴァルハーレンとヴァイキング部隊が次々に巨大な盾を構え突撃していく。


 コウヤの右手に剣となるアルバーンが左に盾となるヴァイキングが陣形を構えた瞬間、突破口を開かんと発動される土石魔法と風魔法。


 前方に隠された落とし穴と塹壕を一気に下から土地ごと引き上げると暴風が敵ごと全てを凪ぎ払い、そこを守りに入る敵兵をヴァルハーレン達が盾を使い無理矢理抉じ開けていく。

 アルバーンの戦士達が次々に敵兵を切り刻む中、更なる追加部隊がコウヤ達の行く手を塞ぐ。


 次第に勢いを削られていく。コウヤ達に押し寄せた敵兵が退路を塞ぐようにして陣形を組み直した瞬間、前方から姿を現す三人の敵将、へし切り長谷部と薬研藤四郎、そしてもう一人。


「有象無象と老将に、わっぱが二人か。若いな……若すぎて話にならぬ……この 不動国行(ふどうくにゆき) 雑兵(ぞうひょう)を刈るような軟弱な振る舞いは断り申す。退くがよい、わっぱッ!」


 一際大きな声をあげてそう口にする“不動国行”の発言に笑いながら腹を押さえるへし切り長谷部と頭を抱える薬研藤四郎。


「不動さん、駄目ですよ? 勝手な事を言わないでください! 信長公に叱られますよ」


「確かに……殿は皆殺しを所望、不動諦めろ」


 長谷部と藤四郎にそう言われると深く息を吸い、無情と言わんばかりに大きなた溜め息を吐く国行。


「この世も無情か……信長様の願う争わぬ世とは、如何なる数の仏を築けば成し遂げられるのか……悲しいが殺るしかないのだな。我等“三本刀”は信長様の覇道の為に、怨むなかれ、わっぱよ」


 互いに向き合う者同士が相手であると無言で確信する六人。


 不動国行とコウヤ。


 へし切り長谷部とヴァルハーレン。


 薬研藤四郎とガンドラ。


 互いに睨み合い、移動を開始すると三方向に敵兵が道を開いていく。


 罠だとしても既に進む他に道は無く、その場に残ったアルバーンとヴァイキングの戦士達が敵兵と戦闘を開始する。


 最初に切り合いになったのは、へし切り長谷部とヴァルハーレンであった。


「面倒、此処でいい……早く終らせる」


「感情が無いような物言いだな、だが、その方が助かるわい」


 刀を構える長谷部はその後は無言のままに剣を振るう。

 ヴァルハーレンの巨大な盾を易々と斬りつける斬撃は次第に盾を削っていく。


「硬い……でも、斬れる……ひっひっひっ」


「何が可笑しいッ! 貴様のそのふざけた笑みを泣き顔にしてやる、楽しみにしておれ!」


 ヴァルハーレンは盾への斬撃の際に自ら盾を押し込み、長谷部の刀を盾に咬ませると地面に盾をめり込む程の力で叩き付けた。


 ズガンッ……!!!


 荒々しくめり込む盾から刀を抜こうとする長谷部の頭上に振り上げられる巨大な矛が光を浴びて艶かしい輝きを放つ。


「呆気なかったな、死をもって後悔するがよいッ!」


「オマエが後悔しろ……」


 長谷部が刀を引き抜くのを止め、両手で刀を握り横に力任せに滑らせる。


 盾から滑り抜けた刀がヴァルハーレンの矛と刃を重ねた瞬間だった。


 長谷部の刀が矛と共に砕けたのだ。そして長谷部の顔面に突如現れる巨大な拳。


 鈍い音と共に地面にめり込む拳の下に砕ける長谷部……


「戦いの最中に余所見をするなど、まだまだ戦いを知らぬようだな」


 ヴァルハーレンがその場を去った後、人知れず、へし切り長谷部の肉体が砂となり風に散っていく。

 へし切り長谷部を倒したヴァルハーレンであったが武器を失い、コウヤとガンドラへの加勢に向かえない悔しさに身を震わせた。


 ヴァルハーレンと対照的に苦戦を強いられていたのは、ガンドラであった。


 藤四郎の余裕を交えた表情と口調にペースを乱され、冷静ならば当たるであろう一撃を度々逃していた。


「どうしました? あと少しで当たりますよ、頑張らないと!」


「うるせぇッ! 黙りやがれ」


 藤四郎は短い刀、脇指(わきざし)を使いあしらうようにガンドラの攻撃を守りながら笑って見せる。


「ダメですよ! そんな無駄な動きが当たる訳ないですよ、アハハハ」


「黙れってんだ! 女みていな声が勘に触るんだよ!」


 その瞬間、藤四郎の表情が鋭く変わる。


「誰が女だって、この三下がッ!」


「キレてんじゃねぇよッ!」


 キレた藤四郎とガンドラの戦いが更に激しさを増していく。

 そして、本性を現した藤四郎はガンドラに襲い掛かる。

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