戦場を掻き乱す者1
キャスカ、マトン共に二人の悪魔を討ち取った。が、コウヤと悪魔トルネオは移動を続けてい。
皆から遠く離れ、更に移動するトルネオに苛立ちを感じるコウヤ。
それを楽しそうに確認すると頃合いを見計らうように立ち止まる。
「此処ならジャマは入らない」
トルネオの選んだのは沼地であり、辺りには黒い沼が音を立てている。
「オマエの死体はあがらない、此処で終わると皆イナクナル」
ケラケラと笑うその姿は、まるで新しい玩具を壊すまで遊び尽くしたいと言わんばかりの子供のようであった。
「いいから戦うなら急ごう、僕はこんな処で立ち止まってる時間は無いんだ!」
得意のテルパスを使いながら小刻みに移動するコウヤ。
トルネオはそんなコウヤを沼の真ん中に誘導していく。
勿論それに気づいてはいたが、コウヤに取っては余り気にならなかった。
しかし、コウヤの考えは甘かった。
トルネオは自分が強いことを理解していた。そして、コウヤを選んだのだ。
誰よりも真っ直ぐな瞳に写る悲しみ、暖かいように見えるのに孤独、明るく振る舞うが闇がしっかりと存在するコウヤの存在を気に入ってしまったのだ。
「オレが勝ったらオマエの顔を剥がしてコレクションに加える……アヒヒヒヒ」
「僕は顔をお前に渡す気も負ける気もないッ!」
コウヤが刀を構え、片手でホルダーから魔導銃に手を掛ける。
最初の一撃を放ったのはコウヤである。
ホルダーから即座に抜き放たれた一筋の光がトルネオ目掛けて飛んでいく。
「けけけけ、ムダ!」
トルネオの魔法が沼を操り、筒を作り出すと内部が高速で回転し魔弾を内部で拡散させ更にそれをコウヤに打ち返したのである。
咄嗟に避けるも、コウヤの魔導銃が聞かない事実が明かになり、斬激も動揺に防がれて行く。
コウヤの刀の振動すらも泥沼の前には通用しなかった。
しかし、コウヤは笑った。考えれば悩む事など何もないと気付いた為である。
「僕達はある意味、似てるのかも知れない。皆が居たなら使えなかったよ!」
そう語るコウヤは即座に無詠唱で二つの魔法を発動した。
1つは土石魔法を、もう1つは水魔法を、それを合わせながら、混ぜると更に巨大な風魔法と共に撃ち放った。
それは土石流となり全てを飲み込むようにトルネオに襲い掛かる。
回避を防ぐように一斉に発動する石壁魔法がトルネオを閉じ込めた瞬間、前方の石壁が崩れだし、トルネオを襲う。
それを防ごうとするトルネオ、しかし、既に自身が操れる沼がなく、コウヤの複雑に絡んだ土石流を操る事はトルネオには出来なかったのである。
そんな土石流を耐え凌ぎ、必死に足掻くトルネオに対してコウヤは静かにリボルバーに凍結魔法を込めた魔弾をセットして引き金を引いた。
土石流の途中までが凍り付き、その中心には全身を青白く染めたトルネオの姿があった。
次第に土石流の流れが再開し始める。そして、“ガシャンッ”と、音を発てて砕けるその姿を確認するとコウヤは魔法を停止し、テレパスで皆の元に急ぎ戻るのであった。
アグラクト王国に早々に伝えられたコウヤ達、亜人部隊の足止めに失敗した事実を聞きレストが始めてアグラクト王の前で顔を歪めた。
「な、本当に大丈夫なんだろうなッ! お前達の力があれば大丈夫だと言ったではないか、どうなのだレスト!」
レストは落ち着きを取り戻し、アグラクト王を見つめる。
「大丈夫ですとも、少々予定より相手が優っていただけですので、なんの問題もありません、陛下」
そう言い部屋を後にしたレスト。しかし、その表情は醜く歪み、心中は憎悪が渦巻き怒りが全てを掻き回していた。
「コウヤ=トーラス……忌々しいガキガァァァァッ!」
レストの怒りは空に黒雲を呼び寄せる。そして、自室にて、開かれた1つの棺……レストは笑っていた。妖艶にして淫靡、恋しい者を見詰めるように熱くなる視線が棺の中に眠る男に向けられた。
「ふふふ、楽しみだわ、異端の王と亜人の王、勝つのはどちらかしら……少し細工を施さないと分が悪いけど、楽しみ……」
レストの用意した新たなる刺客、そして、悪魔兵の必死な防衛戦が開始される事となる。
そんな中、カラハ大陸に魔界より上陸する者達がいた。
源朴=虎之介である。
シアンはカラハの進行の後押しにと源朴の島人と紅眼部隊を増援として駆け付けたのだ。
「なんじゃ! これは……敵はいったい何者なんじゃ」
しかし、源朴がその眼にしたのは驚くべき光景が広がっていた。
目の前に見える戦い……戦と言うべき光景に眼を奪われた。
「此方に来てより、幾つもの戦いを眼にしたが、何故……」
源朴は急ぎ乱戦となっていた戦場に部下と共に雪崩れ込む。
大軍勢を相手に攻めては撤退を繰り返し追えば伏兵が塹壕から姿を現し、下から斜めに槍を突き立て、次の塹壕に移動する。
シンプルでありながら、広い戦場において、これ程に不意討ちを効率よく行う方法は無いだろう。源朴は敵に今までと違う危機感を感じながら、コウヤの元を目指した。
そんな源朴の不安が現実の物になる。
敵の攻撃は勢いを増しながら再度撤退をするように見せ掛け、横から物凄い速度で騎馬隊が攻め立てていく。
戦場を掻き乱し、分断される亜人部隊が次々に飲み込まれていく。
荒々しくも確実に削り尽くさんとする戦い方は豪快にして緻密であった。




