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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第三部 光の先に見える物
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覚悟の先へ1

 要塞都市(ダルベルガ)を合流地点としてヴァルハーレンに伝えたコウヤ達は再度奪還に来るであろう、アグラクト軍に備える為、防壁魔法と作成魔法でダミーの城を造りだし、大掛かりな防衛陣を作り上げていた。


 全てが慌ただしく行われて、コウヤに代わり体外魔力を使い周囲を警戒するミーナも精神を研ぎ澄ませていた。


 そんな要塞都市(ダルベルガ)に迫る人影を見つけたミーナに緊張が走る。人影の数は分かる範囲で数百、大部隊ではないが油断が命取りになる状況に急ぎコウヤ達に報告が伝えられた。


 急ぎ戦闘準備が整えられ、先手を取ろうと開門するコウヤ率いる亜人部隊。


 しかし、コウヤ達対して馬を走らせる集団は白旗を掲げ誰一人武器を手にしていない。

 警戒しながらも前衛に防壁魔法を展開できるように指示を出し出方を窺う。


 ローブとフードを深々と被り、白旗を掲げ、一定の位置に停止する集団。その中から二人が馬に跨がったまま、減速しながら、ダルベルガへと走っていく。


「止まれッ! それ以上近付けば攻撃を開始する。敵意が無いなら立ち去れ!」


 強い口調でそう言い放つコウヤ。


 二人の人影はゆっくりと馬を止める地に足をつけるとフードを取り素顔を晒した。


「コウヤ。射たないでくれて助かった。フードを取ら無かったのは済まない」


 そう口にしたのはキリシマであった。そして、もう一人の人物は涙を流しながら走ってくる。

 皆が武器を構える中、武器を下ろさせた。そして、コウヤも走り出した。


「コウヤ、生きてたんだな、いつも死んだって噂ばかりだし……本当に死んだと思ったんだぞバカ野郎」


「ごめん、僕もあれから色々あったんだ。でも、生きててくれてありがとう。アルトネの現状は聞いたよ。本当に生きててよかった。ガストン」


 泣きながら再会を喜んだのはガストン=べラムであった。


 そして、ガストンとキリシマの後ろに不安そうに待機している部隊は“ルークス・ステラ(星の輝き)”。キリシマが助けたカラハ大陸の亜人からなるレジスタンスであった。


「コウヤ、いや、バライムの王よ。俺達で“ルークス・ステラ”を共に戦わせてくれ。皆、覚悟を決めた者達だ。頼む」


 キリシマはそう言うとコウヤに頭を下げた。ガストンもそれに続くように頭を下げる。


 戦力が欲しいのは言うまでも無いが即決で決められる状況で無いことも明らかであり、コウヤは表情を曇らせていた。


「おやおや、お困りですね? コウヤさん。ヨホホホ」


 三人の目の前に突如姿を現すランタンにキリシマとガストンが後ろに後退し身構えた。


「反応はいいようですね? 素晴らしいじゃないですか」


 そう言うとコウヤの方を向きランタンがポケットを開いた。


 ポケットから姿を現したのはラシャとエレ、ダルムルアのエルフと獣人、ゴブリンとオークの大部隊であった。


「コウヤ、妾が居なくて寂しかったであろう! だが、今日からは安心するがいい。今から一緒じょ」


 ランタンはバライムの防衛を完璧にし、第三勢力として、アルバーンの王である“ガンドラ”が同盟になった事を伝えた。


「コウヤさん、もし不安ならば、ラシャにロストアーツ(心眼)で調べて貰えばいいのですよ、勿論、黒ならば……言うまでもありませんが、宜しいですか指揮官さん?」


 キリシマがランタンの言葉に頷く。


 ラシャは一人一人を確かめていくのは無理だと語り、コウヤに“心眼”を手渡した。


「コウヤの体外魔力と合わせれば心眼と魔眼を同時に使えよう、任せるぞ」


 コウヤは心眼を握り、体外魔力をルークス・ステラのメンバーに向ける。


 結果は全員白であり、キリシマもその事実に胸を撫で下ろして喜んだ。


 キリシマとガストン、“ルークス・ステラ”のメンバーにラシャ達も加わり、大きく戦力を増大させる結果となった。


 ランタンは皆に話したい事があると伝え、主要メンバーを集めると室内に防音魔法を発動し外から話が漏れないようにする。


 集められたメンバーは、コウヤ、ミーナ、キャスカ、マトン、ラシャ、テルガ、キリシマであった。


 キリシマを呼ぶのにキャスカとラシャは反対したが、ランタン自ら話し合いに参加させたいと言うと其を受け入れた。


 ランタンは次の月の日に魔族が動く事を伝えたのだ。


 長きに渡る人間との契約、それが終わりを告げる瞬間が来た口にした。


「魔族の長きに渡る834年の悪夢がやっと終わりを告げます。歴代魔王達の無念と虐げられ散っていった魔族達の無念も10000(一万)の月の日と共に報われます」


 一万の月の日、それは人間が魔族と契約の際に取り決めた年月である。

 契約の際に有効期間がなければ、いつ破棄されるやも知れないと言う恐れから作られた物であり、その項目が有るからこそ長きに渡る呪縛が継続したとも言える。

 しかし、魔族はバライムと言うカラハ大陸から遠く離れた大陸に移動し、独自の文化を創り、更に島人や亜人の受け入れを行い人間達は攻めるに攻められない状況になり、年月が魔族打倒を忘れさせていった。


 そんな人間達は魔族への呪いが永遠であると言う、おとぎ話のような物語を語り継いできたのだ。


 そして、次の月の日にシアンを含む魔王軍が一斉にテレパスにてカラハ大陸に進行する事を伝えた。


 全ては即座に終決するだろうと話すランタンに対してキリシマは慎重な面持ちで口を開いた。


「人間達はどうするつもりだ、少なくとも全ての人間が魔族と争う気は無いであろう」


 その言葉にラシャが立ち上がり机を叩く。


「やはりか貴様等、人間の綺麗事など聞き飽きたわ! 我らエレが……エルフが人間にどの様な扱いをされてきたか知っておるのか? ミーナ達、獣人がどれ程に苦しめられたかを知って口にしておるのかッ! 答えよ!」


 場の空気が一気に悪くなるとコウヤが立ち上がった。


「ラシャ、座って。キリシマさん、僕達は既に答えを考える時間は終わったんだ。アグラクトは全滅させる。それが僕達の決断だよ、もし賛成できないなら終わるまで、ランタンのポケットに入ってて貰う」


 キリシマはその言葉に既に平和的解決が無いことを知り、うつ向き再度顔をあげた。


「それは、正義なんだな……コウヤ、後悔はしないんだな」


「キリシマさん、世界に正義なんてないよ、僕達は今から大陸を滅ぼすんだから、正義なんかじゃないんだ」


 キリシマの心を人知れず調べるラシャ


 その心には、悲しみと新たな覚悟が確りと刻まれていた。


「すまなかった、俺は勘違いをしていたらしい、ルークス・ステラを作った際に誓った筈だった。人間と亜人の平和な世界を創ると言う目的、それには大きな犠牲を払わねばならない事実、改めて参加させてくれ」


 キリシマの覚悟に嘘がない事をライエスでコウヤに伝えたラシャ。


 ランタンは最後にあることを口にした。


「アグラクトに忠誠を誓う者とアグラクトに加担する者が今回の敵です。虐殺と蹂躙を我等の魔王は好みません、そして、コウヤさんも強がっていますが、優しい御方ですので考えは同じでしょう」 


 それはキリシマへの配慮であり、その場に居る者へのシアンの考えを伝える物であった。


 カラハ大陸に大規模な拠点を有したコウヤ達、魔界軍は更なる拠点強化に力を注ぐ。


 キリシマの連れていた亜人の殆どはエルフと獣人の孤児であり、戦える者は全体の半分であった。

 ランタンに頼み戦えない者をミカソウマのボルトの元に送ってもらい。戦える者は死なぬようにキャスカとマトンが戦闘の基礎を叩き込んでいく。


 三将到着までの三日間が慌ただしく過ぎ去っていった。

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