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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第三部 光の先に見える物
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“レクイエム”3

 気配を消し、コウヤ達に一気に近寄る男、殺気を出さぬよう慎重にそして確実に獲物を見つめるように自身の視界に入るギリギリまで静かに移動し隙をうかがう。


 コウヤ達の特徴から泥を全身に纏い、匂いを消し、更に周辺の草や葉を練り込む男、しかしコウヤと目が一瞬合うと静かに後退する。


 慎重に移動を繰返す男は夜になり行動を開始した。コウヤ達がカラハ大陸に入ってからの一週間、夜の見張りを一人一人が二時間で交代する。


 男は行動パターンを分析しその日を選んだ。

 コウヤの交代が丁度、中間にあり、寝ぼけ眼を擦る姿が垣間見えると男が動き出す。


 武器を手に移動を開始する、しかし予想外の行動を取るコウヤ。

 男の方にゆっくりと歩み出すと、静かに魔導銃を構えた。


 それを見て後退する男。


「そこまで、動かないでくれるかしら? でないと切り裂くよ!」


 背後からの女の声、それと同時に包み込まれるような殺気を感じ、振り向く間も無く剣先を突き付けられる男。


 キャスカは男に気付いていた、キャスカだけでなく皆が気づいていたのだ。


「何故、わかったんだ。体臭は完全に消していた筈なんだが」


 男から発せられた言葉は少し訛りがかった言葉使いであり、どこか懐かしい雰囲気を漂わせていた。


「不自然すぎたんだよ、泥の香りだけなら、もしかしたら気付けなかったかもしれない」


 コウヤの言葉に男は微笑んだ。


「つまり、過ぎたるは猶及ばざるが如しと言う事か歳は食いたくないものだな」


 男は全てを理解しそう語ると前のめりに倒れ込む、キャスカも予想外の行動に反応が後れ、コンマ数秒の隙が作られる。


 足を一瞬でキャスカの(かかと)に絡め体勢を崩させるとコウヤより小さなリボルバーをキャスカに向ける。


「女性に銃を向けるのは好みじゃないし、俺の道理に反するが許してくれ、俺はコウヤと言う獣人に用があるんだ、解るだろう! コウヤ=トーラス」


 その言葉にコウヤがリボルバーを下げる。


 男は後ろ向きのままに会話を続けていく。


「俺はキリシマだ、此方ではトオル=キリシマと呼ばれている。そして、お前が殺した! ソウマ=キリシマの父だ。駄目な父親だったが……息子を誇りに感じない日はなかった……だからこそ、赦せないんだ、コウヤ=トーラス」


 全ては誤解である。しかし、コウヤはそれを口にする気はなかった。

 口に出したなら、何処に目の前の男が感情いくのか、行く宛などないのだとコウヤは分かっていたからだ。


 言葉など何の解決にも為らない。コウヤがソウマを、ミカを失った時に感じた悲しみと怒りと同様に行く宛のない感情、コウヤは全てを受け入れる覚悟と同時に死と向き合う覚悟の両方をその身で受け止める覚悟を決める。


 コウヤはキャスカを解放させる為に一対一の戦いを口にする。


 悩む事なくキリシマはそれを受け入れ、ゆっくりとキャスカの後ろに回り、キャスカをコウヤの元に向かわせる。


「正直に言うなら、何故、お前のような眼をした少年が息子を手に掛けたのか理解に苦しむ……親バカだろうが、アイツは強く賢い……優しい奴だった」


 キリシマがソウマの死をしったのは今から2年前。

 ソウマの噂を聞き立ち寄ったカルトネ、しかし、そこには全てが焼かれた無惨な廃屋が建ち並び、死臭すらなく、僅かに残る炭の香りが漂うだけであった。


 それからの日々を情報収集に費やしたキリシマは村々で口にされる“紅眼のコウヤ”と言う名を脳裏に焼き付ける事になる。

 そして、ダムメリア戦のアグラクト敗北にコウヤ=トーラスが関わっている事実を知り急いでダムメリアに足を運ぶも其処にダルムリアの森は既になく、更に禁忌の森の消失と続く大事件の最中、絶対に耳にする“紅眼のコウヤ” “人獣のコウヤ”の名が同一人物だと、考え足取りを追う日々が続いたが、消息を掴む事は愚か噂だけが独り歩きする存在になり始めていた。


 そんな時、キリシマの前に姿を現したアグラクトの兵士が一言「バライムの地に住む王はコウヤ=トーラス」と語る、それからバライムに向かおうとした矢先に、人間と亜人の戦争へと発展し、バライムへと向かう事が叶わなくなっていた。


 そんな時、キリシマの滞在する村から遠くない港が襲われたと言う話が舞い込んでくる。

 順番に襲われていく港から方向を推測し、先回りをするキリシマが見たのはコウヤと呼ばれる青年であり、紅い瞳に獣人とは違う容姿、其は確信となった。


 そして、今、相対した二人は互いに武器を握り、その瞳を向け合い微動だにしない。言葉は全てを語らず全てを武器のみが語ろうとする最中、キリシマに向けて撃ち放たれる火矢と火炎魔法、更にコウヤ達に向けられる無数の矢。


 互いに他に敵がいると判断した瞬間、無言の休戦を理解し新たな敵に集中する。


 攻撃の勢いが増す最中、コウヤが一気に敵の位置を把握し、騒ぎに起きてきたディアロッテとミーナに敵の位置を知らせる。同時にキャスカと共に前に走り出した敵を中央から切り裂くようにその剣を振るう。

 キリシマも同様に攻撃を回避しながら敵を確実に仕留めていく、そんなキリシマ目掛けて撃ち放たれる無数の矢、回避しきれなかった一本の矢がキリシマの足を貫いた。


 体勢を崩し、足から矢を抜こうとするがキリシマの撃ち抜かれた部分には大きな血管があり、矢を抜けば出血により死は免れない。


「ふ、此処までか、すまないソウマ、やはり俺は駄目な父親らしい」


 更にキリシマを襲い来る矢が見えた瞬間、コウヤが土壁を造り矢を防ぐとミーナがキリシマに駆け寄り、回復魔法を使いながら矢をゆっくりと取り除く、慎重に抜かれた矢に毒が塗られてない事を確認し更に傷の回復に集中する。


 二人を必死に守る三人も軽傷であるが矢による傷を受けていた。


「意味がわからないんだが、何故、俺を助ける……俺はコウヤ=トーラスを」


「黙りなさい、今集中してるの、動脈に傷を残せないから黙って!」


 ミーナの言葉に黙るキリシマ。

 自分が命を狙った青年の部下に介抱され、命を救われている現状に悔しさと後悔が渦を作るように心に広がっていく。


「今は貴方を絶対に死なせない……コウヤにあんな思いは絶対にさせない……」


 ミーナの独り言のような呟き。


 完全に治療が終わるとキリシマは立ち上がり再度先頭を開始する。しかし、状況は違っていた。


「俺は、まだ真実を知らないらしい。コウヤ=トーラス、今は目の前敵に集中したい、すまないが協力させてくれ」


 たった五人で向き合う戦闘であったが、キリシマの協力は大きく大差を覆すことに貢献した。

 全ての魔法を跳ね返すロストアーツを使い魔法を防ぎ矢をコウヤ達が弾く次第に敵を追い詰めながら数を減らしていく、更にディアロッテが、敵指揮官を撃ち抜き、戦況を一気に傾けると敵が撤退を開始する。


 キリシマは圧倒的なその強さに危機感すら感じるも、不思議と出会えた喜びを感じていた。


「コウヤ=トーラス。俺は真実が知りたい、息子を……ソウマ=キリシマを手に掛けたのはお前なのか、教えてくれ」


 唇を噛み締めるコウヤ。


「本当は……言いたくなかった。ソウマは僕が殺したようなものです……ソウマは僕の師であり、父になった存在であり、最後まで僕達を守って死んでいきました」


 キリシマは一言「そうか……真っ直ぐに意思を貫いたんだな」と、涙を流した。


 キリシマは将軍を辞めた後に人知れず追われる身になっていた。

 アグラクト内部を知りすぎた危険人物として作られたリストの上位に名が刻まれ今も解除されていない。


 各地を転々とし、必要に応じて、アグラクトの助けになってきた男、キリシマが追われる身になったのは、現王が即位して間もない頃であった。


 現王に従う気はないと口にした為であった。

 本来ならば有り得ない事だが、現アグラクト王には黒い噂がつきまとっていた。

 前王を投獄し、全てを支配しようとする独裁者になろうとしている。と、噂が流れる程、野心家であり行動派であった。


 コウヤ達の知らぬアグラクト王の姿がキリシマの口から明らかになっていく。

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