新たなる者達2
テルガの目に写る光景……笑みを浮かべ楽しいを全面に押し出すように、それは始まった。
悪戯にNo.2の腕がガザの剣先に触れた瞬間……ガザの鍛えられた刀に霜がおり、そして指先をの感覚が一瞬で遮断される感覚に即座に自身の掌に手刀を食らわせる。その途端に砕け落ちる自身の指と掌をだった物が地面に落ち更に砕け散る。突き刺さる刀の束が砕け刃は白く輝く。
「コイツは参りやしたね……まさか、こんなあっさりと利き腕が無くなる日が来るなんて思いやせんでしたよ」
ガザの言葉にNo.2も驚いていた。今までの経験から腕や足が無くなれば誰もが慌てふためき、自身の状況に絶望する、それを笑いながら、冷静に呟く姿に怒りすら感じていた。
「つまんない奴、もういいや……」と呟くNo.2はその手をガザの頭部に向ける。
全ては刹那、ガザの毛先が砕けた瞬間それは起きた。
「ヤァメローーォォオオオッ!」
殺気をまとう声と共に切り落とされるNo.2の腕、そして付着した血を地面に滴り、その血液を即座に振り払い再度構えを取った存在、紛れもなくコウヤである。
「え、うわぁぁぁ、僕の腕が腕がぁぁぁ……なんちゃって?」
切り落とされた腕を拾い傷口にくっつけると一瞬で繋ぎ目を凍らせるNo.2そして即座に凍りに覆われた剣の形になると自慢気にそれをチラつかせた。
「痛くないの……間違いなく切ったんだけど」
そう不思議そうに尋ねるコウヤ、それに対し、痛覚を遮断していると答えるNo.2、その顔はまるで今の状況を楽しんでいるようであり、死を恐れないと言わんばかりの傲慢な表情であった。
仕切り直しをするように身構える両者に対して、No.1が「ズルいよ! 私も殺りたい」と口にする。その姿は幼子が玩具を取り合うような光景であった。そして、二人は話がまとまらないと分かるとニッコリと笑みを浮かべた。
そして、コウヤ達の目の前で互いに攻撃魔法を放ち始めると冷気と熱気が互いにぶつかり、凄まじい水蒸気が立ち込める、そして勝負が決まった。
水蒸気の先に凍り付けになったNo.1の姿があり、それを嬉しそうに見つめるNo.2。
「コウヤ=トーラス君のせいで僕は大切な姉をこんな姿にしなくちゃいけなくなったじゃないか?」
その発言にコウヤは、目の前にいる少年が常軌を逸する事実を理解した。
無言でいる中に吹いた風……それを皮切りに地面を踏み込み、束を確りと握るその腕から横に振り払うように速攻を掛けるコウヤ。
それに対しNo.2は再度、距離を取りると周りを逃げるようにして移動する。
コウヤの攻撃が激しさを増す中、No.2の掌から冷気が漏れ出すと即座に撃ち放たれる。
No.2が逃げるように移動する理由は相手の温度をあげる為と汗をかかせる為であった。
体温の上昇が冷気を緩和し、ゆっくりと冷えていく感覚を忘れさせる、更に汗をかかせる事で即座に冷凍するのが目的であり、上がった体温が臓器を守り即死は無くなる。つまりは断末魔を聞く為の行為であった。
「終わりだよ! 凍り付けコウヤ=トーラスッ!!」
一瞬で氷の溶け始めた地面が銀色に染まり、高速でコウヤに襲い掛かる。しかし、コウヤは冷静にそして、残酷に判断を下した。
テレパスを使い後ろに移動すると体から掌に向けて刃で貫く、そして、激しく振動する刃は一瞬でNo.2と言う結晶を塵にした。
突き刺した刃は掌からNo.2の内部を一瞬で凍らせた。一瞬の痛みすらも痛覚の無いNo.2には感じられなかっただろう。
そして、振動する刃が内部から崩壊を誘発し、コウヤに冷気が伝わる前に砕け散ったのだ。更に凍傷を防ぐ為に火炎魔法を既に掌に発動していた。
ランタンの作った合成ロストアーツでなければ、束が変形し使い物にならなく為っていただろう。
コウヤ自身、セテヤ大陸から来たヴァルハラにセテヤの獣人であるバゼル達が居たからこそ、魔力が回復していたがそうでなければ、勝機は薄かった。
そんな時、氷がひび割れる音がなり、後方から巨大な炎が天高く舞い上がった。
「No.2ゥゥゥ! ハァハァ……」真っ白い息を吐き、氷を粉砕し姿を現したNo.1は青ざめた顔で辺りを見渡す。
「何処に行ったのッ! 私は負けてないんだから」
透かさず刃を向けるコウヤを見て、理解したかのようにその口を閉じる。
「聞きたい事があるんだ。だけどその前に、この死人の群れを止めて」
コウヤの言葉に静かに目を瞑り「止め方なんか知らない」と口にした。
コウヤは頷き、テレパスを使い首の皮切一枚まで刃を突き付けるがその瞳は微動だにしなかった。
「本当に知らないんだね」
「知らないし、No.2が殺られたんだよね、なら私も死ぬしかないわ、早く切りなさい」
本気の目を見て、コウヤは鞘に手をかけ、静かに刃を収めた。
訳を尋ねるNo.1は納得がいかないと言わんばかりにコウヤに詰め寄る、しかし、攻撃の意思はまるで無かった。
「僕は人殺しが好きな訳じゃない、僕の殺めた少年だって本当に殺したかった訳じゃないんだ……」
コウヤは自分と同年代であろうNo.2を殺めた事を悔やんでいた。しかし、他に方法は無く、感情を必死に堪えながら今に至っていた。
そんな姿を目の当たりにしたNo.1は静かに燃え盛る森の中に残された大地に腰をおろした。
「あんた、変わってるよ。本当に国潰しのコウヤなの?」
国潰しのコウヤ、それはアグラクトでのコウヤに付けられた通称である。
「僕がコウヤなのは間違いない、戦う気が無いなら手伝って、責任はちゃんと取って貰うよ」
そう言うとコウヤはテルガを起こし、ガザを抱えて運ばせるとNo.1に死人が群がる中に炎の道を作らせた。
予想以上に素直に従うNo.1の姿にテルガもガザも驚きを露にしていた。
そんなNo.1の周りにも次第に死人が群がりその爪で襲い掛かる。避けようとしない姿に即様に死人を斬りに掛かるコウヤは声を荒げた。
「死にたいのッ!」
そして静かにNo.1が答えた。
「ええ、だって私はもう用済みだから」




