新たなる者達
激しい黒煙は瞬く間にバリケード内を暗闇に染め上げる。侵入される事を前提に置かなかったバリケードに出口は存在しない。
出口があったとしても、外には大量の死人、既に詰んだと誰もが絶望した。うっすらと見えた希望がゆっくりと溶けだしながら、小さくなっていく感覚、心が砕けそうになる程の圧迫感。
更に激しく撃ち込まれる火炎魔法の連弾、ガザとテルガは笑っていた。正気を失ったのではなく、最後の覚悟を互いに決めたからである。
「いきやす、今ならまだ逃げられますよ? いいんですかい」
「我等は強い。ガザよ、寝てて構わぬぞ」
互いの言葉で退かぬ事を確認すると、無言になり、バリケード内を蠢く死人を粉砕しながら、無数に開けられた入口を目指し走り出す。二人が飛び出したのを確認しバーバリアン達が死人に対し自身の体を盾に入口の守りに入る。
二人が走り出すとピタリと火炎魔法が止み、月明かりに照された敵の姿が明らかになる。
そこに立って居たのは年端もいかぬ、少年と少女だった。
青い髪の少年と赤い髪の少女が二人に対して笑いかける。
「あれれ、あなた達、コウヤ=トーラスじゃないわね?」
「みたいだね。どう見ても聞いた話と違うし」
二人を見つめながら、首をかしげる少女は仕方ないと言う顔を浮かべると両手に巨大な火の玉を作り出した。
「コウヤ=トーラスじゃないなら、待ってあげた意味無いもん! 燃やしちゃうよ? いいよね。No.2」
「嗚呼、構わないよ。No.1君の好きにすれば良いさ、僕達の目的はあくまでもコウヤ=トーラスだからね」
互いを番号で呼ぶ二人。彼等のローブに描かれたマークはアグラクト王国の物であり、アグラクトがコウヤを狙っている事実が明らかになったのだ。
「なんで、コウヤ王を狙うんです、バライム大陸を狙うなら、あんまり言いたくは無いですがシアン=クラフトロ王を狙うのが筋でしょう」
ガザの言葉に互いを目で見る二人。そして笑いだした。
「僕達は今、バライムを攻撃するように言われて無いんだ」
「私達の目的は、コウヤ=トーラス。ジュネルバからの依頼を果たすのが目的なのよ」
ジュネルバの依頼……その言葉を聞き、ガザは何故、二人がコウヤを知っているのかを理解した。そして、依頼をした人物はロサ=マドックであろう事も直ぐに推測した。
マドックはコウヤの試合で出た損失の責任を全て被らされ財産の半分を失っていたのだ。更にコウヤ達のアスライナ=ジュネルバ七世への戦闘とその勝利により、捕まり国外追放とされていた。
そんなマドックが行き着いた先こそ、アグラクト王国だったのだ。
最後にマドックがとった行動こそ復讐であり、その標的はコウヤに的が絞られたのだ。
「依頼……ですか、そんな話聞いたら、おちおち死ねもしない。まぁ死ぬ気は毛頭ありやせんがね」
ガザの発言の直後、即座に放たれる火の玉、問答無用と言うべき手加減のない攻撃。
炎が飛び火すると、四人を囲むように灼熱の世界が円を描くように広がっていく。
2対2の戦いになり、その刃を振るうガザとテルガ、しかし距離を取りながら魔法を打ち出すNo.1と動きまわるだけのNo.2。
No.2が目で合図をした瞬間だった。No.1が即座に退避すると一瞬で地面が凍り、ガザの足から動きを奪い、テルガが振り向いた瞬間に巨大な火の玉が襲い掛かる。
そしてガザに向けられたNo.2の手から次第に冷気が溢れ出す。
「シャーベットになるんだから、いい声を聞かせてよ? バイバイ獣人さん」




