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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第三部 光の先に見える物
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コウヤの決断 押し寄せる死人

 ウルシャイン防衛戦、コウヤ達は戦いが開始され、一気に押し寄せる死人の軍団が次々に高く積まれたバリケードを突破しようと森の中から姿を現していく。


 辺りを埋め尽くす死人達はバリケードを破壊しようと次々にその身が砕けることも気にもせず、次々に突進してくる死人達。

 死人達を前に弓をひくグラナ樹海の獣人達、その表情は必死であり、その弓は外れる事なく相手の心臓部分に目掛けて射ち放たれていく。


 戦闘が開始されてすぐであった。『ダメだ! 炎が効かない』と言う声が至る所から叫ばれ始めていた。

 慌てるコウヤ。

 直ぐに状況を確認する。魔眼で見る死人達の体内には微量の水魔法が掛けられており、火矢が引火する前に炎が消えていた。


「く、敵にも僕達と同じ事を考えた奴がいるんだ!」


 実際には引火していたが、表面を焼くだけで動きは止まらずにいた。死人達には痛覚が無い事もあり、コウヤは悩んだ。そんな時、ミーナがその本領を発揮した。


「コウヤ見てなさい! 私達、ダルメリアの獣人が今まで話し合いが通じない侵入者と争う時にどう戦って来たか教えてあげるわ」


 そう口にすると即座に植物魔法を発動するミーナ。そして、巨大な木の丸太が数本バリケードの足場に姿を現した。


「いくわよっ! 全員で一気に丸太を押し出して!」


 言われるがままに丸太を押し出すが、下には堀があり、丸太はそのまま落下するであろう事は誰にも容易に想像できた。

 そこからミーナが更なる本領を露にする。


「見てなさいよ! ウッドロードッ!」


 丸太を落とした瞬間にバリケードの中間に巨大な木の坂道が造り出され、丸太は坂道を凄まじい勢いで転がって行く。


 丸太が次々に死人の中を転がりながら何処までも進んでいく。丸太が通った後には綺麗に平らになった大地があり、潰れた死人が砂になり消えていくのが皆の眼に写った。


「死人は不死じゃないんだ! 1度倒せば終わるんだ!」


 コウヤの言葉に皆に希望の光が見えた瞬間、山を丸々埋め尽くさんとする死人の大群が真っ直ぐにウルシャインに向けて近づいてきていた。


 次第に黒く染まる山道に皆が息を飲む。まさに大陸を覆い尽くさんとする破竹の勢いで進んでくる死人達。


 コウヤは直ぐにガザにある考えを持ち掛けたしかし、それはガザ達、グラナ樹海に住む獣人にとって苦渋の決断に他ならなかった。

 提案されたのは山からグラナ樹海までをコウヤの作製魔法(ファクト)を使い火薬に変え、全てを吹き飛ばすと言う荒い作戦であった。

 しかし、既にグラナ樹海の殆どが炎に包まれ、森は死人の腐肉に汚染されつつあり、ガザとグラナ樹海の長は涙を流しならがその提案を受け入れたのだ。


 直ぐにコウヤが体外魔力を集めると体内から体外魔力を逆に森全体に反射させる。その際に作製魔法(ファクト)を体外魔力にのせていく。

 木々は即座に形を変えて、黒い粉になり、森が一気に無くなっていく。

 そして、バリケードから風魔法を使い一気に火薬を死人目掛けて吹き付けたのである。


 魔導銃(リボルバー)を構え魔弾に火炎魔法を注ぎ込んだコウヤ。


「ごめん……グラナ樹海、いつか復活させるから……ごめん」


 その瞬間、コウヤにはグラナ樹海の周りにある体外魔力が巨大な女性の姿に見えた。そして、それは大きく両手を広げ笑いながら頷いた。

 コウヤは知らぬ間に頬に一筋の涙を流し、引き金を静かに指で引いた。


 一筋の巨大な閃光は炎を放ちながら真っ直ぐ死人の大群へと向かう。

 全ては紅蓮の炎となり激しい爆音が全てを包み込むようにして吹き飛ばした。


 爆風が到達する前にいっせいに造り出される防御魔法、激しい震動が魔法壁を揺らす。

 直ぐに体外魔力を使い外の状況を確認するコウヤ達、そして防御魔法を解除した先には全てが赤黒く燃え盛る大地と形を変えた山、全てが変わり果てたグラナ樹海の姿があった。


 しかし、真夜中の炎に照らされるように再度、蠢く死人の瞳が山の先より押し寄せてくる。


 コウヤは更なる戦闘を予期しバリケードを放棄した一同はレクルアの港を目指し後退を開始するのであった。

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