涙の再会。アイリとコウヤ3
馬車の振動をなるべくアイリに感じさせないように風魔法でアイリを浮かし更に傷を回復魔法を使いゆっくりではあるが再生させていく。ミーナの方が回復魔法は優秀であったが風魔法と回復魔法を同時に扱い更に一定の位置に保つ程の技術は持ち合わしていなかった。
「大丈夫? あんまり無理しないでねコウヤ」
コウヤは寝ずに二日間魔力を使い続けていた。既に幼いコウヤの体は限界であった。
ガザが止まろうと提案するもコウヤはそれを拒んだ。
「僕は大丈夫だから……早くアイリを」
その強い意思を無視できないガザは馬を部下に引かせ、馬車の手綱を握る。
シャーデが屋根の上で見張りを代わり、ベルミとキュエルがコウヤに代わり風魔法を使い、ミーナが回復魔法を行う。
コウヤはそれを見て、安心したのか倒れるように眠りに着いた。限界を超える魔力供給と放出、常人には出来ない魔力操作を二日間遣り通したコウヤに皆が敬意をはらった。
コウヤはそれから一日眠り続けた。
次に目を覚ました時、コウヤの目の前には巨大な湖が広がっていた。湖には星の輝きが反射し、真っ暗な森に輝きを放っていた。その横に集まる獣人達はガザの仲間であり、コウヤに力を貸すために集まっていたのだ。
ミーナがダルメリア式の挨拶をすると長老らしき獣人が礼を返し、アイリを湖へと運んで行く事になった。
湖の中央には小さな寝台が作られており、古くからの言い伝えを今に伝えるように静かにその存在を露にした。
幼いアイリを確りと抱き抱え小舟に乗せたコウヤは、ゆっくりと湖の中を進んでいく。 アイリの首にはロストアーツ人形使いの指輪を通したヒモが掛けられている。
そして、もう一つ別のロストアーツもその身に括り付けられていた。それはガザの使っていたロストアーツ『束ねる者』と呼ばれる玉であった。ガザが全員の姿を変えた時に使ったロストアーツであり、他のロストアーツの能力を拡散する物であった。コウヤの指輪と同じ指輪をガザは所持していた。その能力を拡散して全員を人間の姿に見せていたのだ。
そして今、その二つと合わせて三つのロストアーツを身に付けたアイリは湖の寝台に寝かされた。コウヤはゆっくりと湖のほとりにその身を戻し、湖からあがった。
それを確認した長老達が魔力を湖に向ける。魔力に反応し、かなりゆっくりではあるが水嵩が上がっていく。
「ねぇ、ガザ? 本当に大丈夫なの、どうも胡散臭いのよね。アイリになんかあったら本当にヤバイわよ?」
「ミーナさん……怖いこと言わないで下さいよ……それに信じてくださいって、コウヤさんに嘘はつきませんよ。全ての傷が復活する神秘の湖なんですよ!」
そう言うとガザも両手を伸ばし湖に魔力を注ぎ始めた。
「魔力を注げばいいの?」
「ええ、ですが注げるのは体外から集めた自然界の魔力つまり、体外魔力のみなんですよ、流石にこの人数でも、直ぐには集められないんですよ」
それを聞いたコウヤとミーナは、顔を見合わせた。グラナ樹海の獣人は体外魔力は扱えるが基本がなく、ただ集めているだけであった。この場にいる獣人全てを合わせてもミーナの集める体外魔力と大差無いほどに効率が悪かったのだ。
「ミーナ、少し無茶するけどいい?」
「いつもより無茶する気なのッ!!」
二人は湖に掌をむけると深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。体の中にグラナ樹海の空気が隅々まで行き渡るとゆっくりと目を閉じ、グラナ樹海を包み込むように体外魔力を集める範囲を広げていく。
左右に別れて広がっていく巨大な体外魔力が二人の体から掌にそして湖へと放出されていく。
二人の魔力が注がれた瞬間、今まで数ミリ程度しか上がらなかった水嵩が一気に上がり始めたのだ。
「ミーナ、まだ行ける?」
「当然! 私達の妹を助けるわよ!」
「「ハアアアアァァーーァァアアア!!」」
アイリの元まで一気上がる湖の水がアイリを包み込んでいく。
それを確認した獣人達は即座に聞き取れない呪文を口にすると光の渦が湖全体を包み込み光は天高く上がっていき、空で弾けた。
辺りに降り注ぐ大量の光の雨は豪雨のようにグラナ樹海の中を打ち鳴らした。
湖の水すべてが天にのぼり、大地に降り注いだ空っぽの湖に作られていた寝台はまるで高台のようになっており、コウヤは直ぐにアイリの元にテレパスで飛んでいく。
コウヤの目の前には手足が確りと蘇生した状態のアイリが眠っていた。
「良かった……アイリ……アイリだけでも助けられて良かった……」
アイリは無事に復活した。しかし、ロストアーツを体内に取り込むことで蘇生したのだ。
ガザ達に感謝の言葉と友好を結ぶコウヤは、シャーデの呼び寄せた巨大な蝶に乗りグラナ樹海を後にしたのであった。
空を進みウルシャインに戻り、更にレクルアの港に移動したコウヤ達はヴァルハーレン達と共にジュレム大陸を後にした。
大型ガレオン船はセテヤ大陸を越えて一気にバライム大陸を目指し突き進む。
船出から五日目の朝、アイリは長い眠りから目を覚ました。
「イヤァァァァーーァァアアア!!」
耳を裂くような凄まじいアイリの叫び声が船の中に響き渡った。




