新風……新たな国を夢見る者達1
目の前に現れたガザの存在に動揺する二人、そこに合流したシャーデ達は、ヴァイキング達を乗せた馬車に乗り込み馬車を操りながら、ジュネルバ国内を強行突破していく。
ガザ自らが先頭の馬車を操り、後方の馬車を部下達が操りながらついてくる。
戦禍の真っ只中となったジュネルバ国内は、逃げ惑う人々で溢れ返っていた。その人だかりの中を更に速度をあげて馬を走らせるガザ。
「道をあけよォォォ! あけぬと引き殺すぞぉぉぉ!」
荒々しくそう口にするガザ。
「あんた! さっき城で会った時と随分雰囲気が違うじゃないのよ」
「そうですか? 獣人とは言え敵か味方か分からぬ状態だったんでね、許してもらえたら嬉しいんだがね?」
「そろそろ、種明かししなさいよ! あんた達は何なの!」
「まぁ、そうですね! コウヤ殿が起きたらお話致しましょう……今は急ぎますんで!」
馬車と違う激しい地響きと同時に大量の馬からなる足音が次第に馬車に向かって近づいてくる。それを笑いながら見詰めるガザが大きく手を天に掲げた。
隣の林道から駆け抜けてくる大部隊も同時に片手を天に掲げると一斉に馬車に近づいてくる。
一行がグレーキャッスルに向かう途中に合流したのは、ガザの仲間達であった。数十人の馬に跨がった部隊と横並びになると仲間の一人に手綱を任せたガザ。
「すみませんが、先に行かして貰いますで、後程、御会いしましょう。でわ!」
ガザが荒々しく走る馬車の上からタイミングを計り、駆け抜ける一際巨大な一頭の馬に颯爽と飛び移る。
「風名よ、頼む。よし! 行くぞぉぉぉ! 皆我に続けェェェ!」
掛け声を合図に一斉に馬に跨がった一団が速度をあげて馬車の横を走り抜けて行く。その姿はまさに一筋の風のようであり、嵐の如く沸き起こる馬の足音は瞬く間に前方へと駆け抜けて行く。
「速いわね……ちょっとアンタ! もう少し早く走れないの」
馬車を操る男に八つ当たりのようにそう口にするミーナに困り果てる男、そんな姿に苛立ったようにディアロッテが手綱を奪い取る。
「馬は……こう操るんです! はいやァァァ」
ディアロッテが手綱を握り出した途端にみるみると速度をあげて行く。後方にいた馬車を置き去りにする勢いで走る馬車は前方に走り去ったガザ達の後ろにまで迫る勢いで疾走する。
「スゴいねぇ? まさか馬車に追い付かれるなんて思わなかったな」
「隊長、呑気過ぎますよ! どうするんですか! 馬車の護衛をしながら戦うなんて敵に的を与えるような物じゃないですか」
ガザと並んで走る女戦士が強い口調でそう口にする最中、馬車の手綱がディアロッテからミーナへと交代する。
「ディア! 振り落とされないでね」
「御冗談を、ミーナ様の手綱捌きを信用してますし、このディアロッテ、馬から落ちた経験は一度も御座いません」
そう言い斜め前方に構えた魔導銃に魔力を注いだ魔弾を一気にセットすると魔弾を城門に向けて一気に撃ち放った。
余りの威力と強引すぎる行動、更に前方のガザ達を追い抜かんとするミーナの手綱捌き、全てが一団の予想の範疇を上回っていた。
「た、隊長……前言撤回です……護衛は、無用らしいですね」
「アハハ、みたいだね! さあ、暴れようじゃないか、今から姿を戻す! いいなァァァ」
「「「オオオォォオオオ!!!」」」
ガザが胸のペンダントを握ると一団が一斉に輝きだし、その瞬間、靄が現れ直ぐに消えていく。
靄から姿を現した一団は人の姿ではなくなり、獣人に姿になっていた。
「やっぱり! 人間じゃなかったのね、まぁ、気づいてたけど!」
「ミーナさん達はやはり気づいてましたか? いつからです?」
ミーナ達はガザの匂いが人の物と異なる事に気付いていた。更にコウヤ達を襲撃した村人達も同様に匂いを誤魔化していたが獣人だからこそ気付けるレベルの匂いが仄かに残っていたのだ。
話を進めながら城門に辿り着いた一団は、激しく暴れまわるヴァルハーレン達と合流する。
大国ジュネルバ最大の危機がその場に揃った瞬間であった。




