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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第二部 魔界偏 新に掴むべきもの
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仕掛けられた策略。ジュネルバの罠3

 全身を黄色に黒いラインの入ったフード付きの服来た一団は、炎の防壁の中に次々と足を踏み入れる。


 その場に広がる噎せ返るような人の焼ける悪臭と血みどろになった港、更に逃げ惑う自国の兵士の姿。


「な、なんだこれは! 話が違うじゃないか……! 敵は二人で……負傷して虫の息じゃないのか……」


 炎の防壁を外からの増援を防ぐ為の物と考えた魔導師部隊は、手柄を横取りする為、中に居る者の退路を造ると言う名目で王に進言し、更に王から討伐の増援も命じられていた。全ては楽な仕事であり、上手く手柄をあげる事のみを考えていた。

 しかし、全員が目の前の惨劇に眼を疑い、噎せ返るような熱風を和らげるように唾を飲み干した。


 全ての情報が誤りであった事実を知るも既に戦いは始まっており、退くに退けない状況、まさに其処に広がる惨劇こそ、戦場とバルガスは再確認させられる結果になった。


 しかし、バルガスはそんな状況に驚く事はしても、敗北を認める気もまして、死ぬ気もなかった。


「私は、魔導師部隊全てを束ねるバルガス=ノーマ。蛮族が我らの大陸を土足で踏み居ることも赦せぬが! 飼い犬と飼い猫のしつけがなってなさ過ぎるわ!」


 バルガスは土石防壁魔法(ブロックウォール)を発動する。更に指に光る指輪を輝きだす。


 コウヤとキャスカ、二人を分断させると、同時に兵士が身に付けていた鎧や剣等に土の塊が付着し始める。

 次第に形を成していき、武器を装備した土や岩で出来た人形が無数に造り出され、瞬く間にコウヤとキャスカの周囲を包囲していく。


 勝ち誇ったかのようにコウヤを見下すバルガスの淀んだ瞳。


「ねぇ? 今のって魔法じゃないよね」


 バルガスの余りに人間離れした能力前にしたコウヤは即座にそう言い放つとその勝ち誇ったような顔に苛立ちが若干加わっていく。


「何を言うか! 偉大なるジュレル大陸の魔導師である私の力が魔力以外のなんだと言うのだ! 我が魔力を眼にして其れを認めたくないのはわかるが認めよ! 我が名は偉大なるレクルアの大魔導師……!!!」


 喋り続けようとする最中、テレパスを使いバルガスの指輪と入れ代わったコウヤ、更にその場から小石と入れ代わり、バルガスの手には小さな小石が一つ乗っているだけであった。


「な、なんだ……今の動きは……何故指輪が!」

 

「ごめん、話が長いから……取り敢えず見せて貰うね」


 コウヤが指輪を手にした途端、バルガスの造った人形達が崩れていく。その事実を確認し、コウヤが指輪を自身の指にはめた状態で再度質問をした。


「魔法じゃないよね?」


 認める以外に選択肢のない状況に勝利を確信していた表情は無惨に歪み、眼には憎悪が溢れ出さんと言わんばかりに憎しみに満ちた視線がコウヤに向けられていた。


 そんなバルガスであったが降伏をする気配はなく、小さな袋を取り出した。その中から別の指輪を取り出すと即座に其れを指にはめ、霧魔法(アクアミスト)を発動させた。


「霧ぐらいで僕達から逃げられると思うの」


 その言葉に、バルガスの笑い声が再度戦場に響き渡った。


「アハハ。霧を吸い込んだな! 愚かなる獣が、最初から手段を選ばずに戦えば私に勝てる者など存在しないんだよ」


 霧を吸い込んだ、キャスカやレクルア兵士、更に魔導師部隊すらも、膝をつき頭を押さえていく。


 バルガスの所持していた指輪はロストアーツであり、最初の指輪は、『人形使い(ドールマスター)』無機物を操る能力と作製するロストアーツであり、使う者の精神力でその能力が変わるロストアーツであった。


 コウヤ達に向けられていた使われたロストアーツは、『楽酒(ラクシュ)』本来は酒の瓶にかけて使うロストアーツであり、どんな酒豪も直ぐに酔っぱらわせる事のできるロストアーツであった。


 バルガスは、この二種類のロストアーツを使い今の地位までのしあがってきたのだ。


 バルガス達、魔導師部隊の本来の役目は戦闘ではなく、人拐いである。

 敵地の村を襲撃し、楽酒を使い、意識の無くなった村人を人形に運ばせる事でレクルアを潤し、同盟であるジュネルバには安く奴隷を流す事で、レクルアの安全を確保していたのだ。


「これが経験の差だ、まして、人間様と獣人が対等に話そうなんてなぁ、胸糞悪いんだよ!」


 バルガスはフラフラと体を揺らし千鳥足になっているコウヤに近付いていく。


 経験からの推測が軽率な行動に繋がる事は俗にあるがバルガスは他の戦場で魔導師が口も聞けなくなる様子、騎士が一歩踏み出す瞬間に倒れ込む様をその目に焼き付けてきていた。そして今も目の前にフラフラと揺れるその様子に我慢できずに近づいていた。


「倒れる瞬間の表情が楽しみだ……どんな顔で倒れるのかな……ははは」

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