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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第二部 魔界偏 新に掴むべきもの
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大国ジュネルバ2

 ジュネルバの市場は静まり返り、コウヤ達を歓迎している様子はなく、人々は家の中へと姿を消していた。

 余りの露骨すぎる行動、まるで初めから何もなかったかのように人影はなく、商品は慌てて片付けた事が分かるほどに散乱している店すらも存在していた。


 コウヤは不思議に感じていた。


ーー何で皆こんなに怖がってるんだろう? いくらヴァルハーレンが怖くてもここまで姿を隠す必要があるのかな?


 一行を案内するマドック事態も何処かよそよそしく、しきりに周りを確認している。本人は上手く隠しているつもりの様子立ったがコウヤ達から見たマドックの動作や視線を向ける方向には明らかに不可解な物も多く、警戒を強める理由として十分であった。


 マドックに気付かれぬようにヴァイキング達に戦闘準備を手を使い合図するヴァルハーレン。


 何食わぬ顔でジュネルバの街中を歩く両者には見た目からは想像できない程の距離感が僅か数歩程度の距離に作り出されていた。


 しかし、マドックは街の案内を一通り終わらせた後、次に街の外を案内しだしたのであった。


 街を抜け、切り開かれた森の一本道を抜けた先にあったのは巨大なコロッセオであった。


 そこには街に居た国民と違いリングの上で荒々しく戦う男達の姿、其れを楽しそうに眺める観客と悔しそうに眺める観客が左右に別れて腰かけている。


「ここは何?」


 コウヤの質問に不適な笑みを浮かべながら自慢気にマドックがコロッセオの説明を開始した。しかし、それはコウヤにとって不快な物となるのだった。


「ここは我がジュネルバのコロッセオ、つまりは剣闘試合をする為の会場です。剣闘士には奴隷や兵士、我が国の剣に覚えがある者達も参加いたします。更に剣闘試合に20連勝した奴隷は自由を得られるのです!」


「奴隷以外の人は何を得るの……」


 コウヤの素朴な疑問にマドックはゆっくりとコロッセオの中間に作られた鉄格子の窓を指差した。


「勝者には奴隷の中から好きな物を差し上げています。実に素晴らしいと思いませんか……奴隷が20連勝する試合の掛け金は計り知れない富を我が国ジュネルバに運んで来るのですから、奴隷の生死一つが大金になるのがコロッセオです。宜しければ、お賭けになりますか?」


 リングではジュネルバの戦士が逃げ惑う奴隷を追い詰め今にも勝敗が決しようとしていた。


「ううん、賭ける気はないよ……あと、僕の妹を捜すって言ったよね?」


 コウヤの言葉に笑みを作り直し、頷くマドック。次の瞬間マドックの表情は凍りつき、コウヤの殺伐とした眼を見た瞬間に腰を地面に着くことになる。


「僕の妹……アイリはカラハ大陸にあるアグラクトから……()()として、このジュネルバに売られたんだ……もし、アイリに何かあれば……僕はジュネルバに何をするかわからないよ……」


 その事実はヴァルハーレンを含む皆が驚愕する事実であり、一人真実を知るランタンはコウヤが会話を終わらせる前に姿を忽然と消していた。


「さっき? 賭けないかって僕に聞いたね……マドックさん、いいよ賭けてあげる。僕に全額賭けるよ……」


 そう口にしたコウヤはテレパスを使い、奴隷兵士を切り勝利したジュネルバの戦士の前に移動した。


「なんだ? 俺様に何かようか」


 大柄の男がコウヤの乱入に気に食わないと言わんばかりに話しかける。


「僕は今、全額を僕に賭けてきた、この意味わかるよね? オジサン」


 その言葉に男が剣を振り上げ、コウヤの頭部目掛けて振り下りす。


 コロッセオでは直ぐに賭けが始まり、コウヤと大柄の男の試合が正式に受理されたのだ。


 慌てて試合を中止するようにマドックに迫るヴァルハーレン。


「一国の王と戦士の剣闘試合を認めるとはどういう事か! 今すぐ止めぬならば、儂自らがアヤツを粉砕してくれよう!」


しかし、其れを更に止めたのはミーナ達であった。


「大丈夫よ、寧ろ相手が心配だわ?」


「そうだねぇ、確かにあの大男じゃ役不足だね?」


「ですね、コウヤさん、熱くなると手加減しませんから」


 ミーナ、キャスカ、ディアロッテが次々にそう口にする中、シャーデ、キュエル、ベルミは、コウヤの勝つ方に密かに一人1000ロンド、合計3000ロンドを賭けたのであった。


 心配を他所にコウヤは頭部目掛けて振り下ろされた剣を難無く躱すと大男のリングにめり込んだ剣の横に何食わぬ顔で立っていた。


「僕は……凄く不機嫌なんだ!」


 凄まじい殺気を目から放つコウヤ。


「あり得ねぇだろ……なんなんだ! あの目は……本当にガキの目かよ!」


 大男が剣を其のままに後退りしていく、そんな男にゆっくりと真っ赤な紅い瞳を輝かせたコウヤが近づき、刀の束と鞘に手をかけた。


「奴隷なら……難無く殺せるんだよね? なら殺ってみてよ……僕も同じだからさ」

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