ジュレム大陸上陸目指すはジュネルバ2
ミカソウマから戻ったコウヤ達はジュレム大陸での二日目の朝を迎えていた。
全てのテントをたたみ、馬車は再度、ジュネルバを目指し山道をかけ上がって行く。山道を過ぎ、森へと馬車を進める一行はジュネルバまで一日半の距離に差し掛かっていた。
森を越えた頃、突如として複数の視線を感じるようになっていく一行は警戒しながらも、止まる事無く、ジュネルバを真っ直ぐに目指すのであった。
二日目の日が暮れ始め夜を迎えた頃であった。
茂みから微かに動くような、ガサッという草を踏み込むような音がコウヤの耳に響いた。
ーー誰かいる! 数は少なくとも10人、いやもっといる。
耳を澄ますよう、辺りの音に集中しながらコウヤは体外魔力を音の方に向けた。
其処には武装した兵士が20名とその後ろの開けた草むらに50名程の中隊を確認出来た。
コウヤはヴァルハーレン達にバレないように草むらに向かおうとした時、後ろから肩を掴まれた。
「コウヤ、一人で行くのは無しだ、私達も一緒に行くよ」
コウヤの肩を掴んだのはキャスカ、そしてディアロッテとミーナであった。
「相手もバカねぇ? 獣人が居るって知らないから仕方ないにしても、足音を発て過ぎだわ」
ミーナはそう言うと体外魔力を最大にして、植物魔法を使い敵兵を植物の檻で包み込んだ。
「はい、出来上がり。もう逃げられないわ」
「ミーナさん流石ですね、では、一気にいきます!」
「そうね、ディア。ミーナに負けてられないからね。剣星の瞬殺の舞いを冥土の土産に披露してやるか」
ディアとキャスカが天井に開けられた檻の入口から中に入り、キャスカが問答無用に敵を切り裂き、ディアが敵を撃ち抜いていく。
相手は何が起きたのか理解できず、天高く伸びる太い植物の茎を切りなんとか脱出しようと足掻いていたが、ミーナの植物魔法は繊維が複雑に要り組むように瞬時に育てられており、生半可な剣では傷を付ける事も儘ならない程に強固な物であった。
そんな中、壁の一点に光が差し込み、人が通れる程度の出口が出現するとキャスカとディアロッテから逃げるように我先にと走り出す敵兵。
出口を目指し走り出した敵兵は出口付近に立つ人影に気付くと剣を手に斬り掛かっていく。
敵兵は出口から外に出なければ全滅になる事を理解していた。
一人、二人と出口の人影に斬り掛かっては即座に斬られていく。
出口までの数メートルが遥かに遠く感じ始めていた敵兵、背後からは野獣の如く仲間を切り裂き撃ち抜く獣人の姿、出口には真っ赤な眼を輝かせ月光により、黒光りした刀を構える影、その後ろに巨大な植物に腰掛ける人影。
悪夢のような時間であったであろう。最後の一人に成るまで続いた一方的な戦いはあっという間に終了し、生かしておいた一人の兵士から彼等がジュネルバの兵で在る事とレクルアからの情報提供があった事実を聞き出したのであった。
「コウヤ? こいつ、どうするのさ?」
キャスカが生かしておいた男の髪を掴みコウヤの前に引っ張ってくる。
「不本意って言うのかな? ゴメンね、でも人間なら分かるよね?」
冷えきった眼を向けるコウヤを見た男の顔は青ざめ、口元は奥歯からの震えにより顔全体が震えていた。
歳にしたら20代前半であろう男の口から、死にたくないと小さな声が漏れだし、眼からは涙が流れ、顔は鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。
「仕方ないよ、死ぬ覚悟が無いのに殺しに来た貴方達が悪い」
その瞬間、自分が本当の意味で人間を切り捨てたと実感したコウヤの顔には笑みが浮かんでいた。
ーー僕はもう、あの日には戻れないんだ……きっと母さんとソウマは悲しむんだろうな。
コウヤは静かに刀の収められた鞘に手をかけ、無言のままに刀を抜き払った。顔面に噴き出した返り血を静かに拭い、刀を鞘に収めたのであった。
「戻ろうか、あんまり遅くなると他の皆が気付いちゃうからね」と呟いたコウヤは新たな視線を背後に感じると即座に刀を抜き身構えたのだ。
「誰! 居るのはわかってるよ」
殺気を漂わせながらそう語るコウヤ。
コウヤ達に緊張が走った。




