女の戦いと深い眠り
目の前で火花を散らしてる一人の女性と少女……何故こうなったんだろうと考えるも正解などはないのだと幼いながらにコウヤは理解した。
医務室に入ってきたロナがいきなり、ミーナに“宣戦布告”する。
「私の弟から離れなさい! この猛獣女!」
「あら? 言ってくれるわね! ちんちくりんのお嬢ちゃん」
「誰がちんちくりんよ! それよりコウヤから離れなさい! じゃないと怒るわよ!」
そう言うとロナは合気道とは違う構えをとる、明らかに攻撃を意識した好戦的な構えに隙はなく、ミーナは予想外と言わんばかりに口元を引き締める。
「やる気なのお嬢ちゃん? でもね、私は生徒に手をあげたら首になっちゃうのよね?」
ミーナは挑発するように笑みを浮かべ、ロナをあしらう。
「これだから毛深いオバサンは嫌なのよ! 性格ばっかり嫌みになるんだからさ、フン!」
ミーナの顔がひきつり、眉毛がピクピクと動きだす。
今にもぶつかり合おうとしている両者に焦りを露にするコウヤ、二人を止めようと考えを巡らすも、そんな心中などお構いなしにロナの毒舌がミーナに降り注ぐ。
流石に止めなくてはならないと思い、コウヤが口を開こうとした時、先にミーナが口を開いた。
「はいはい、わかったわ。そんなにコウヤが恋しいならしょうがないわね、コウヤ気を付けてね? また明日ゆっくり大人の話をしましょうね」
ミーナは大人の余裕を見せるように対応をする。
少し言い回しが気になりつつも、コウヤホッと一安心をする。
「ありがとうミーナ、また明日ね」
医務室のベットからコウヤが起き上がった時、それは始まった。
「待ちなさいよ、コウヤ! なんで先生を呼び捨てなの! それに大人の話って何よ!」
ーーやっぱり、そこか……はぁ。
こうして目の前で大人の女性であるミーナと、もう少しで7才になる自称【姉さん】のロナが火花を散らす結果となったのである。
「お嬢ちゃん……外に出なさい。少しきつめに御説教してあげるわ」
ミーナはそう言うと医務室からゆっくり外に繋がる廊下を歩きだす。
その後ろをロナがついていき、コウヤも二人の後ろを追う形になった。
外に出てすぐ、ロナがミーナに対して挑発をする。
「私が勝ったらコウヤには指一本から眉毛の先まで絶対に! 触れさせないわ」
「なら? お嬢ちゃんが負けた時はどうするの?」
その質問にロナは即答する。
「コウヤをアナタにあげるわよ!」
予想だにしない会話に困惑するコウヤ。
ーー僕の意思は関係なしに賞品なの……流石に止めないとまずい。
そう思い、二人を止めようとした時、後ろから肩を叩かれる。
「お前はドンと構えとけよ、コウヤ」
ガストンが後ろから現れ、そう口にする。
「でも、止めないと二人とも怪我したら大変だし?」
「大丈夫だろ? ミーナ先生、医務室の先生だし?」
ガストンの発言に確かにと考えたのが間違いだった。
いざ二人が戦いを始めるとロナは合気道と自身で稽古している魔法装備“魔動撃”と言う魔法装備を合わせた独自のスタイルでミーナに一気に襲いかかったのだ。
「ホリャアァァァ」
ロナの格闘センスの高さはミカも認めている程で、更に言えば小柄なロナから繰り出される複雑な攻撃は簡単には躱せない。
「ごめんガストン、やっぱり僕止めるよ」
ガストンが止めるのも聞かずにコウヤは二人の間に割って入ろうと走り出す。
ミーナも手加減を止めロナに攻撃を繰り出し始めるその渦中にコウヤは踏み込んだのだ。
「「え!」」
二人の攻撃は既に止められない。
ミーナが攻撃を止めようとスピードを落とすが、ロナの方が若干攻撃を止めるのが遅れたのだ、その一撃をコウヤがガードしお互いに怪我はなかった。
だが、ミーナは最後は負けようとしていたのだろう、それがコウヤにはわかった。
そしてロナにも伝わっていた。
ロナはコウヤを無言で睨み付けてから一呼吸を入れて喋りだす。
「もう、いいや……お姉ちゃんごっこ飽きたから……コウヤ、私今からお姉ちゃん辞める!」
そう言い残し走り出す。
「早くいってあげて! コウヤ」
ミーナに言われ走り出そうとした瞬間、コウヤは足がもつれ転倒する。
「しゃあないな、コウヤ任せろ!」
転ぶ寸前にガストンが走ってロナを追っかけてく姿が体外魔力を通してコウヤの眼に写る。
「コウヤ? あなた、いざって時に決まらないのね」
立ち上がろうとすると転んだ際に擦りむいた傷から血が出ていた。
「待って取り合えず、医務室にいきましょう」
医務室で消毒とガーゼをつけて貰い学校をあとにする。
帰り道にロナとガストンが立っていた、コウヤは何も言えないまま、その場で足を止めた。
短い沈黙が凄まじく長く感じる
最初に口を開いたのはロナの方だった。
「コウヤ、さっきはごめん、悪かったわ」
少し話したのち、コウヤ達は自分達の家に帰っていった。
正解なんか無かったのかもしれない、途方もなく長い学校がやっと終わったとコウヤは安堵した。
ご飯前に1度、森に行こうと考えていたコウヤは疲れからそのまま、倒れ込むようにベッドで顔を埋めて眠りに着いていた。
「おや? 寝てるのか、ミカさんに伝えるかな」
二階にあるコウヤの部屋から下に向かい階段を降りる音。
コウヤは起きないといけないと思いながら、再度深い眠りについたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
感想や御指摘、誤字などありましたらお教えいただければ幸いです。
ブックマークなども宜しければお願い致します。




