『ミカソウマ』の先へ2
テルガはバーバリアンの部族長が集まった事を確認する。確認が終わると武器を天に掲げ、戦士の誓いをたてる。コウヤも同様に刀を天に掲げた。
武器を天に掲げるのは単なる風習ではない。掲げた武器のみで戦うと天に約束をする言わば天との約束であった。
「待たせたな、コウヤ。準備はよいな!」
テルガの掲げた武器は石斧ではなく、鉄製の斧、クレッセント・アックスと呼ばれる三日月型の斧であった。
「死んでも恨むなよ!」
テルガの眼は戦魔祭の時よりも遥かに好戦的な目をしている。
「死ぬ気はないけど、テルガも気を付けてね手加減はしないから!」
まるで二人の子供が決め台詞を言うようにして始まった戦いであった。
テルガの斧がコウヤを襲うと透かさず躱しコウヤが刀を向ければ其れをテルガが防御する。
互いに手の内を探るように戦う。両者が武器の角度を若干ずらしたと同時に空気が針積める。
コウヤの斬撃が次第に速度を上げていく。
テルガが弾こうとするが弾いたその場から次の斬撃が次々に全身に襲い掛かった。
「ぐぁあぁぁぁ!」
斬撃と呼ぶには余りに激しく繰り出される剣に声をあげて応戦するテルガ。そんなテルガに対して斬撃を一切止める事なく斬り続けるコウヤ。
コウヤは息をする事をやめていた。息を吸えば若干のズレが生じるからだ。
コウヤの限界は六分程であり、激しく斬りつけている分更に半分の三分が限界であった。
苦しくなれば成るほどに、コウヤの一撃一撃が加速していく。無我夢中ではなく……生命の本能、終れば息が出来ると言う暗示にも似た感覚がコウヤの脳裏に広がり其れを可能としていた。
テルガからしても、次第に加速するコウヤの剣を受けるのは至難の技であった。
この戦いが他のバーバリアン為らば勝負は既に決していたであろう。
テルガは強く賢いかったからこそ、まだリングに立っていたが既に全身に刻まれた斬り傷が熱を帯びており、風が吹くだけで全身に電流が走る程な激痛を伴っていた。
コウヤも既に息が限界であった。
ーーあと、少し……!
コウヤの全力を込めた一撃がテルガに斬りつけられる。それを斧で受けるテルガに激震が走る。
コウヤの一撃にクレッセント・アックスが斬られ、テルガの体に斬撃が直撃した。
「ガハッ」
テルガは咄嗟に後退した為に大事には至らなかったが、コウヤの実力を目の当たりにしたバーバリアンの族長達がコウヤを王として認めたのだ。
ボルトは、いきなり立ち上がるバーバリアンを見て、コウヤに襲い掛かる気ではないかと焦っていたがバーバリアンがコウヤに頭を下げるしぐさを見て、安堵の表情を浮かべていた。
バーバリアンには回復魔法は伝わっていない為、コウヤとボルトが直ぐにテルガの傷の治療を行う事になった。
治療の光景を見たバーバリアン達の驚きは凄まじい物であった。
そこからは宴が始まり、コウヤをテルガが肩に乗せて皆にバーバリアンの新王として紹介していったのだ。
コウヤはボルトにこの事実をシアンに知らせるように言付けるとボルトが直ぐにシアンの元に向かい、コウヤの言葉を伝えた。
「あははは、いやぁ、久々に面白い報告だねぇ。わかったぁよ、為らばバーバリアンが支配する土地をコウヤ=トーラスに任せるから、宜しくと伝えてねぇ」
シアンからの許可と手紙を預かったボルトがミカソウマに帰還する。
「見つけたわよ、ボルト? コウヤは何処だい?」
ボルトの後ろには、キャスカ、ミーナ、ラシャ、シャーデ、ディアロッテの五人が鋭い視線を向けていた。
「皆さん、なんでしょうか……」
ボルトの額に汗が滲み出る。
それから直ぐに、ボルトがコウヤの居場所を吐かされる事になり、コウヤの元に五人が向かう。
コウヤは無事にテルガ達と同国になることを認めてもらい、ミカソウマに戻る為、ギルホーンのいる草原でボルトを待っていた。
そこに竜馬に跨がったミーナ、更にサンドワームに乗ったシャーデ達も姿を現した。
サンドワームの先端には、ボルトが縛られて吊るされている。その圧倒的な光景にテルガを含む見送りに来ていたバーバリアン達は動揺した。
「みんな? どうしたの」
「どうしたのじゃないわよ! 何で一人でいくのよコウヤ!」
ミーナの怒鳴り声を合図に全員に連れていかれるコウヤ。
「テルガ! みんな、近いうちにまた来るからね、皆もミカソウマに遊びに来てね!」
こうして、コウヤの王としての外交が一つ終了したのであった。
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