命の天秤2
コウヤの質問は単純に考えれば、死ぬか生きるかを決めろと言っていた。
ボルトは、一度だけ眼を瞑り、次に瞼を開くとコウヤの眼を真っ直ぐに見つめる。
「時間を頂きありがとうございます。コウヤさん、自分の命一つで彼等を全員救うと言う意味で良いのでしょうか?」
「そうなります」
それは初めてボルトから出た質問であった。
ボルトの表情は堅く、コウヤの眼を見てから一度も瞬きをしなかった。
「ボルトさん。質問の答えをお願いします」
「自分は喜んで死を受け入れます。ですのでそうなった際には、この場にいる彼等を助けてください」
ボルトの眼は死を受け入れた者の眼をしていなかった。寧ろ覚悟を決め、全てを受け入れるような真っ直ぐな眼をしていた。
「そうですか。わかりました」
コウヤはそう言った瞬間、即座に刀を抜きボルトの首元ギリギリに斬りつけた。
周りがどよめく中、コウヤとボルトは、互いの眼を真っ直ぐに見つめていた。
「今の一撃なら避けられた筈だよねボルトさん?」
満面の笑みでそう尋ねるコウヤ。
「無事に避けれたかはわかりませんだ、確かに避けれます」
ボルトの回答に対して、コウヤが刀を鞘に収めた。
「僕は……ボルトさんを助けたいです! 絶対に譲りません!」
コウヤの言葉に全員が驚きながら笑っていた。
そんな中、一番驚いていたのはボルトであった。
其所からはラシャも反対する事は無く、ボルトを魔界に受け入れる事が決まった。
ボルトを魔界に受け入れる際にボルトに出された条件は三つ。
『一、魔界での犯罪行為を禁止する』
『二、人間を捨てて、島人として生きること』
『三、コウヤの思いを裏切らないこと』
ボルトはこの条件を受け入れたのだ。
条件、三はラシャが出したものであった。
「もし、妾の夫であるコウヤの意思に背き、約束を違える事あらば、ラシャ=ノラームがソナタの首と胴体を切り離すと覚えておけ、よいなボルト!」
「わかりました、このボルト=レンチ、命を賭けて、その思いに恥じぬよう、全身全霊を持って、コウヤ=トーラス王に仕えさせていただきます!」
ボルトの発言に更に皆が大声で笑った。
「うんうん、どうやらきまりだぁね。ボルト君の引き受け人はコウヤだぁねぇ」
「コウヤ坊しっかりやれよ!」
シアンと源朴が笑いながらそう言うとランタンも其れを了承した。
こうして、年上の部下ボルト=レンチがコウヤに仕える事になったのだ。
ボルトの部下だったエルフ達はラシャが面倒を見ることになり、泣きそうな顔をしながらラシャに付いていくエルフ達であったが、ラシャなりに責任を感じていた為の行動であった。
その後、コウヤはミカソウマに戻る事になる。
ミカソウマでは幼き王の為の祭りが模様され、コウヤの帰りを待ちわびる住人の姿が目立っていた。
「ここが王の国ですか! 小国であると聞いていましたが、なんと立派な国ではありませんか!」
ボルトは、まだ魔界を理解しておらず、初めて魔界を訪れた頃のコウヤ達と同じようにミカソウマの島人の技術に驚いていた。
ミカソウマ事態は復旧は出来ていたが改善すべき点は山積みであり、コウヤもまた、王としての勉学にいそしむ日々を送ることを余儀無くされるのであった。
コウヤの家庭教師にディアロッテが付き、ミカソウマの防衛等をキャスカとシャーデが行う。
実際に戦闘などは起こらないが防衛力が在ること事態に意味がある。
ミカソウマと同盟扱いのエレとダルメリアを含めるとシアンの王国である『バライム大陸国家魔界』に続く第二位の規模になっていた。
更にエレとバライム大陸のエルフの国である、リディオロがラシャの力で統合される。
しかし、戦魔祭での戦闘を見たリディオロのエルフ達はラシャを神のように崇め、問題には為らなかった。
そして、一年の月日が流れ、ミカソウマも徐々に安定し始めていた。




