デノモルグルド帝国の若き指揮官 ボルト=レンチ。
戦魔祭終了から三日目の朝。シアンの元にコウヤ、キャスカ、マトン、源朴、ラシャ、ミーナが呼ばれていた。
コウヤが部屋に入った時には既に皆が集まり、その中にランタンの姿もあった。
「朝から悪いねぇ、コウヤ」
「いえ、シアン様、それでお話って?」
コウヤは他の面々を見て何故、自分も呼ばれたのか皆目検討がつかなかった。
「話は……ランタンからしてもらうぅよ」
ランタンは戦魔祭の当日に、“デノモルグルド帝国”と“アグラクト王国”の戦争が終決し、大国デノモルグルド帝国が敗北した事実を皆に伝えたのだ。
ーー
カラハ大陸を三角形に結んだように創られた、三つの大国。
『アグラクト王国』
『デノモルグルド帝国』
『クレアルバディア共和国』
そして、三つの大国の中心にあったエルフの国 『エレ』
エレが無くなった直後から三国の状況が変わった。
各国は互いに『エレ』のあった土地をめぐり争いだした。最初は小競り合いだった物がいつしか本格的な衝突へと発展していったのである。
コウヤ達がダルメリアで行ったアグラクト王国との戦闘直後、アグラクト王国はデノモルグルド帝国に対して宣戦布告したのだ。
激しい戦いが三日三晩続く最中、デノモルグルド帝国は奴隷エルフの部隊を使い、その魔力でアグラクト兵を圧倒し始めていた。
圧倒的有利な立場になったデノモルグルド帝国は、一気にアグラクト兵を蹂躙し始めたようと更に踏み込んだ時だった。
デノモルグルドの指揮官に兵からの報告が届く。
内容……それは最悪な物であった。今戦っているアグラクト王国の部隊は農民、住民であり、エルフ部隊を投入してからの二日間に正規兵は一人も導入されていないと報告が来たのだ。
「バカな、ならば何故、逃げないッ! 何故……兵隊相手に向かってくるんだ、何かがおかしい」
表情を険しくする指揮官。
ーーデノモルグルド帝国 帝都
デノモルグルド国民は、その日悪夢を見ることになった。
デノモルグルド帝国軍の一部を残し防衛としていたデノモルグルド帝国に突如、アグラクト王国軍が姿を現し、デノモルグルド帝国の四方にある全ての門に攻撃を開始したのだ。
突如鳴り響く敵襲の鐘の音。
帝都の扉を必死に死守せんとする兵隊達の掛け声と逃げ惑う人々の声に帝都は包まれた。
デノモルグルド帝国は直ぐに全軍帰還を命じる。しかし、アグラクト王国に向けて深く入りすぎた事実とアグラクトからの攻撃にデノモルグルド兵達は身動きが取れなくなっていた。
デノモルグルド帝国軍を指揮していた男は決断を迫られいた。
指揮官の名は、ボルト=レンチ。勇猛果敢にして頭のキレる青年である。
しかし、その賢さと戦いぶりから他の者に疎まれる事は少なくなかった。その結果……最前線の指揮官にされた哀れな男であった。
ボルトは全員を撤退させる事は困難だと判断し、全体の六割を本国に向けさせ、四割が帰還部隊を護衛する事を決めた。一時的とは言え部隊を別ける事を決断する他に道がなかったのである。
帰還部隊の指揮を副官に預け、ボルト自身が残る四割の指揮を取る。実際に帰還部隊を護衛し逃がした時、ボルトの指揮する四割の兵は二割程に減っていた。
それに加え、勢いを増すアグラクト兵は容赦なく追撃する。
ボルトを逃がそうと庇う部下達が次々と倒れていき、ボルト自身も足をやられ、その場に座り込んでいた。
「まさか、こんな呆気なく死ぬ事になると思わなかったな、葉巻も……もう我慢する必要ないな。はは」
葉巻に火をつけて、最後の時を過ごそうとしたボルトの目の前に予想外の者達が姿を現した。ボルトを救ったのは奴隷エルフ部隊であった。
「お前ら! 何故、此処にいる。逃げなかったのか! 命令だと言っただろ!」
ボルトは帰還部隊を逃がした後、奴隷エルフ達も解放していた。
ーーーー
ーー
「人間の戦いに巻き込んで済まなかった。今ならば、どさくさに紛れて逃げられる。無事を祈る!」
奴隷エルフの檻の鍵を開け、鎖を外してから逃がしたのだ。
そんな彼らエルフは、ボルトの為に戻ってきたのだ。
「ボルト様は、いつも我等を庇って下さいました。今度は私達が貴方を庇う番です」
「俺はいいから、早く逃げろ!」
「ボルト様、種族の壁を超える御方です、こんな所で死なせません」
必死に傷付いたボルトを守るエルフ達、そんな中、射ち放たれた矢がエルフ目掛けて飛んでいく。
「危ない! 避けろ」
間に合わないであろう、矢先は既に直ぐ目の前まで飛んできていた。
「〔物と人、全ての壁を越え互いの居場所を示せ瞬間魔法〕テレパス!」
ボルトは、エルフと場所を入れ替わるとエルフは目を疑った。死を覚悟したボルトの前に現れたのは、一人の魔族であった。
「次は魔族か……アグラクトの者なら頼む、俺はデノモルグルド帝国軍、ボルト=レンチ。今回の進行軍の指揮官だ。投降する、なので他の者達を見逃してほしい」
「ヨホホホ、何か勘違いをしているようですね?」
その言葉にボルトに緊張が走る。
「考えが甘いのは承知だ! だが頼む、部下は全滅した、エルフ達は無理矢理戦わされただけだ、見逃してやってくれ御願いだ」
ボルトは地面に痛めた膝をつき、頭を地面にめり込まさんと全力で下げた。
「私は|ランタン、今はパンプキンと名乗っているカボチャです。ずっと視ていました、本来ならば介入する気はありませんでした、貴方が私の知る人物に似ていたのでつい首を突っ込んでしまいました。頭をあげてください」
その言葉を聞いてもボルトは頭をあげようとはしなかった。ランタンの言葉が信実か否かを決めかねていた為であった。
「まったく、強情な部分もそっくりですね、ならば選択肢は二つ、このまま此処に残るか、祖国を忘れ私と来るかです」
ランタンは自分の存在を気取られる事を避ける為、その選択肢を選ばせた。
「俺は残る代わりにコイツ等を、エルフ達を助けてやってくれ」
「国を裏切れないっと言う事ですか?」
ランタンの質問にボルトは必死に笑みを作った。
「俺が居たら、ソイツ等、自由になれないみたいなんだ、だから頼む」
「解りました。ならば話は後程、ゆっくりとしてください」
その途端、ランタンのポケットにボルトが吸い込まれ次々にエルフ達が中に入れられていく。
ランタンはテレパスを使い魔界へと帰還すると直ぐに治療を受けたさせたのだ。
治療が終わりボルト達は、ランタンの屋敷に住まわされる事になっていた。
ーー
「此処にいる皆さんに、ボルトさんを受け入れるか否かを決めていただきたいのです」
ランタンは、そう口にしたのである。
いつもありがとうございます(*≧∀≦*)
感謝でいっぱいです。




