戦魔祭終了 シアンの悲しき思い出2
シアンの話が終わると直ぐに馬車が停止する、着いた先はミノタウロスの鉱山都市であった。
ドワーフ同様に鉱山から石炭や、銀や金を採掘する事を生業とする。
ミノタウロス族は魔王であるシアンが姿を現すと一同に頭を下げた。
その中には、コウヤと戦ったミノタウロスの姿もあり、コウヤと源朴に対してもシアン同様に頭を下げた。
シアンが軽くミノタウロスの王と話を済ませると直ぐにシアンがミノタウロスの鉱山都市の中央に向かって歩いて行く。その先に建てられていたのは、金のオブジェであり、其処には、若い男女が手をとる姿が造り出されていた。
「相変わらず綺麗だねぇ……もう、私は君達を許しているし、試合の出来事を咎めないと何千回も口にした筈だが、やはり此を其のままにするのかぁね」
其れは、シアンの義理の息子、カルムとアルミレアであった。
その後のミノタウロスの王達は、過去の過ちに対して、金を使い創られたカルムとアルミレアに対して、冥福の祈りと誠実で在ることを誓う事が仕来たりとなっている。其れはミノタウロス族の精一杯のシアンに対する謝罪であった。
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シアンは、カルムが自害した際に怒りを露にしたが、それでも、力によるミノタウロス族へと報復は行われ無かった。
シアンは他の種族同様にミノタウロス族を扱い、差別することも無かったのである。
新たにミノタウロス族の王になったミノタウロスは、シアンに尋ねた。
「何故、我等を生かすのです、本来ならば一族を根絶やしにしたい程の憎しみもありましょう」
其れは、死を覚悟しての質問であった。しかし、シアンは悲しそうでは、あったが憎しみを抱いた表情でなく、何処か優しげにミノタウロス王に答えたのだ。
「もし、私が怒りに任せて、君達を蹂躙すれば、其れは私の器が其処までと言うことだぁね」
「……今のシアン殿は、顔には出さないが泣いていらっしゃる、我等、ミノタウロス族にも誇りを持つ者はいます、私もその一人、命を差し出せと言うならば! 前王に代わり、この命を差し出します」
シアンを見つめるミノタウロス王の瞳は既に覚悟を決めているようにシアンの眼には写っていた。
「勝手に死ぬ気にならないでくれ、それに、戦いの中に殺しては為らないと言うルールはないんだからぁね」
「しかし……」
ミノタウロス王が言葉を発しようとした瞬間、 「はぁ……」とシアンが溜め息を吐いた。
「よく聞くんだ、私は君達を殺す気はない。それにカルムは選択を誤ったんだ、本来ならばアルミレアと生き残る選択肢は無限にあった、それをカルムは選べなかったんだぁよ」
シアンはミノタウロス王に『生きている事が全てだ』と言ったのだ。
カルムの選択肢の中に敗北を認め、アルミレアと二人で生き残ると言う選択肢が無かった事、事態に問題があったとシアンは口にしたのだ。
ミノタウロス王は、それを聞き口を閉じて頷いたのだ。その後、シアンの想いと自分達の戒めとして、金のオブジェを創り、同じ過ちが繰り返されぬように誓ったのであった。
そして、シアンもまた、戦魔祭のルールに殺す事を禁止する項目を増やしたのである。
そんな、シアンの考えに賛同しないものや反対する者もいたが、シアンとの正式な一騎討ちの元に散っていったのだ。
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シアンは、ミノタウロス王との話を終えると鉱山都市を後にした。
動きだす馬車の中、シアンの顔には笑みが浮かべられていた。
全ての訪問が終わり、馬車から降りたコウヤに源朴とマトンがある事実を話した。
シアンが戦魔祭を勝ち続ける理由の一つが、カルムとアルミレアへの罪滅ぼしであり、今もシアンの中で割り切れない想いが交差し、其れを勝つことにより、押さえてきた事実であった。
事実は余りに悲しく、コウヤの中で色々な想いが混じりあっていくのであった。
そして、コウヤはシアンに有ることを願い出たのである。
「シアン様、僕に開かずの部屋に入る許可を下さい!」
その言葉にシアンの表情が少しだが、変わったのが源朴とマトン、そしてコウヤには理解できた。
「本気かぁねぇ? あの部屋に残るカルムの想いは、余りに強いんだぁよ」
シアンの言葉にコウヤが頷く。すると首からペンダントを外すとシアンはコウヤに其れを手渡した。
「ペンダントの中に鍵がある、入るのは止めないが、死にそうなら直ぐにペンダントを翳して出てくるんだぁよ」
シアンはそう言うと姿を消した。
コウヤはペンダントを握り締めて、開かずの部屋に急ぐのであった。
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