魔王に近き者達1
眩しい光と少し冷たい風に顔を撫でられ眼を覚ますコウヤ、そして第三回戦と第四回戦の朝がやって来た。
第一試合が始まる前から会場は超満員となり、外に光魔法を利用した投影魔法で試合を観る為の特別スペースまで設けられる程であった。
そんな、第三回戦、第一試合を選手席から固唾をのんで待っているコウヤと源朴。
「少しは落ち着けコウヤ坊、儂らもこのあとに試合なんじゃ、気疲れから敗けを呼び込んだら、本末転倒じゃぞ」
「難しくてよくわからないや、でも、源さん、はしゃぐなって方が無理だよ」
「喋り方まで子供に成りよったか、まぁ、確かに興奮するなと言うには、余りに面白すぎる試合じゃからな」
源朴の言葉通りであった。会場は既に興奮の渦となり、試合開始を心待ちにする観客の熱気で溢れ返っている。
『ながらく、御待たせ致しました!戦魔祭、第三回戦を今より開始いたします!』
会場には、第一回戦と二回戦と違い確りとしたアナウンスが流れ、それを聞いた観客が一斉に立ち上がる。
「「「シィィアァン! シアン!」」」
「「「ラシャ様ァァァ! 御武運をォォォ」」」
会場から発せられる声に手を振るシアンとラシャ。会場のリングに姿を現したのは三人であった。
三人の内の一人はラシャ、次にアルカ、そして、シアンである。
「どういうつもりじゃ、シアン、貴様? まさか、妾の力をバカにしておるのでは、あるまいな!」
ラシャが一人でリングに立つシアンを見て激怒する。
「すまないねぇ? 何故かランタンが来てないんだぁねぇ? 参ったねぇ」
その状況に慌てて審判がシアンの元に現れ、軽く会話をして戻っていく。
「問題ないそうだぁから、すまないが私一人で、ラシャとアルカの相手をする事になったんだぁよ、構わないかい?」
「此方は問題ない! まぁ、初めから主を倒すつもりじゃからな、結果は変わらぬ」
試合は二対一となり、圧倒的にラシャの方が優勢になった状態で試合開始の合図が会場に鳴り響いた。
ラシャとアルカが一斉にシアン目掛けて特攻を掛ける。シアンは、即座に攻撃を回避しながら楽しそうに鼻唄を奏でている。
「剣も抜かぬか! 余裕じゃな、だが、エレのエルフを嘗めるな!」
ラシャの剣が左右で上下に持ち替わると剣のリズムが変わる。
今までより早く、そして、しなやかで有りながら荒々しく複雑に手首を動かし左右の剣が更に変則的な攻撃を繰り出される猛攻。
ラシャの攻撃がシアンの服を掠る。シアンは、驚いた表情を浮かべていたが其処に透かさず、アルカがナイフを両手に奇襲を掛ける。
会場は、僅かな沈黙に包まれ、その一瞬に皆が固唾を飲んだ。
「いやぁ! 危ないねぇ、でも、戦魔祭はそうじゃないとつまらないよぉねぇ?」
シアンの巨大首斬り刀が背中から手に握られると、アルカのナイフを防ぎながらラシャの剣を回避していく。圧倒的なシアンの戦い方に会場は、更なる熱気に包まれる。
「すまないねぇ、ラシャ、そろそろ反撃させて貰うぅよ」
「来るがよい! 妾の剣を前に五体満足でいられると思うでないぞシアン」
シアンが即座にアルカに向けた首斬り刀に防御魔法を掛ける。
「アルカァァァ! 直ぐに離れよ」
「え……?」
次の瞬間、アルカの体が激しく弾き飛ばされ会場の壁へと激突する。
「アルカァァァ!」
余りに咄嗟の出来事にラシャが一秒にも満たないであろう、ほんの一瞬、シアンから眼を逸らした。
「駄目だぁよ? 戦闘において! 敵から眼を放すのは自殺行為だぁねぇ!」
シアンがラシャの首元に剣をつける。本来ならば、それでも試合は続行だが、ラシャはシアンに敗北を認めたのである。
エレの女王であるラシャの首に剣先が付けられた時点で敗北を認めたラシャの戦いにシアンが敬意をこめた会釈をする。
ラシャは悪あがきをせず、敗北を認める事により、エレの女王として最後まで誇りをもって魔界の王シアンと戦ったのだ。
余りに綺麗な幕切れとシアンの行動、そして、ラシャの潔さに会場からは拍手が沸き上がった。
ラシャはシアンに会釈で返すとアルカを連れてリングを後にした。
「ラシャ様……すみません……役にたてませんでした」
「よい、それに初の敗北であったが、悪くない気分じゃ。それより急ぎ傷を診て貰おう」
ラシャとアルカの涙がリングを濡らし、第三回戦第一試合はシアンの勝利で終わる。
その後のキャスカとシャーデの試合も無事に終わり、Aブロック、第四回戦は、シアン、ランタン対キャスカ、シャーデの試合に成ることが決まった。
Bブロックでは、ミーナが先に第三回戦を勝利し、第四回戦に進んだ。
そして第三回戦、コウヤ、源朴ペアは、バーバリアンの王と対戦する。
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