月夜の散歩
夜中、静かに眠り着く、夢から体外魔力へと繋がり、何時ものように森を目指し、ゆっくりと大空の下を飛行する。
風になったような感覚を全身で楽しむコウヤは町の上を飛んでいく。
体外魔力は色んな物や景色をコウヤに見せると同時にコウヤの中で興味と探求心は日々膨らんでいっていた。
夜の町に酒を飲み騒ぐ人に歌う人、ベンチに横たわり酒瓶を手に眠る人、その表情は様々であり、コウヤの中に“ふっ”とある疑問が浮かんだ。
「僕の寝顔ってどんな風なんだろ? ん~……よし、自分で見てみよっと!」
コウヤはその日、寝むりについた道場に意識を集中させると体外魔力が道場へと移動し眠っているコウヤ自身の姿が確認できたのである。
コウヤは内心、包帯姿でどんな風に寝ているのかを見る事を怖くも感じていたが、変鉄の無い寝顔にホッと精神を落ち着けた。
そんなコウヤは隣に寝ている筈のソウマの姿がない事に気づき首を傾げていた。
「トイレかな? ソウマの寝顔も見てみたかったんだけどなぁ、仕方無いか? そんな事より森に行かなくちゃ」
最近、コウヤは森にある一番大きな大樹がお気に入りの場所になっていた。
そこから見える景色はとても美しく、村を一望出来る事が一番の理由であった。
だが、その晩は普段とは違い大樹の枝に先客が居たのである。
「誰だろ、こんな時間に誰か居るなんてはじめてだ、とりあえず僕の姿は見えないわけだし! 行ってみるか、僕のお気に入りの枝に先客がいるなんて初めてだ、この大樹は凄い高さなんだけどな?」
大樹の高さは60メートル程はある。
※20階建てのビルと同じくらいの高さ。
コウヤが人影に近づくと一瞬、月に雲が掛かり辺りを暗闇が覆う、そして、雲が風に流され月光が大樹を照らす、その神秘的な輝きにコウヤの眼は釘付けになっていた。
女神と言うに相応しい美しい女性の姿があり、頭にはベレー帽のような帽子、そして腰まである綺麗なロングの赤毛が夜風に靡くとコウヤの心は一瞬で鷲掴みされたような感覚に襲われていた。
「なんて綺麗なんだろ。僕じゃ多分この大樹に登るのは無理、この人と話す事はきっと無いんだろうなぁ」
しかし、コウヤの発言に対して振り向く素振りを見せる赤髪の女性は“じっ”とコウヤを見つめていた。
「見えてるのかな、なんてね……僕が見える筈無いよね、今の僕は実体が無いんだし」
それとなく呟いたコウヤの言葉に赤髪の女性が緑の瞳を確りとコウヤに合わせ声をかける。
「ねぇ、随分大きな独り言ね、何をぶつくさ言ってるの?」
コウヤは驚きながらも、周りに誰も居ないことを確認し勇気を出して赤髪の女性に質問をしてみる事にしたのである。
「え、お姉さん、僕が見えてたりする?」
「むしろ、見えてなければ話し掛けないわ、こんな時間に何か用かしら?」
そう言うと微笑みを浮かべてコウヤに質問を返すように問い掛ける。
「もしかして貴方、自分が見えてないと思ってたの? そう言えば、私もこの姿で喋り掛けられたり、喋り掛けたりするのは初めてね……貴方は何者なのかしら?」
「僕が何者かって、どういう事? 僕にわかるように教えて貰えたら助かるんだけど」
コウヤは驚きよりも、何故目の前の女性に見えているのかを知りたくて仕方なかった。
「えっと、先ず私は今、大地の声を聞くために体外魔力を集めていたのよ、そしたら貴方の姿が眼にとまったの? ふふ、まさか、私の姿が見えてるなんて、ビックリよ。しかも実体がない子に会うなんて思いもしなかったもの、今日は不思議な1日だわ」
「不思議な1日ですか。でも、それは素敵だと思います」
嘘のような出会いでありながら、笑い合う二人。
「貴方面白いわね? 普段はこんな時間に来ないんだけど、大地から魔力を大量に分けてもらう為に私は会話をする必要があるから仕方なくね」
「会話が必要ってどう言う事? 体外魔力を集めるのに会話をするなんて初耳なんですが?」
「まぁ、簡単に言えば御礼を伝えるためかしら? 大量の魔力を補充するから大地に感謝を伝えないといけないの、まぁ私の村の掟みたいな物ね? それより、体外魔力の事をよく知ってる見たいね? 人間の中でも限られた者しか理解してないと思ってたわ」
「そうなんですか? 師匠が僕の為に毎日特訓してくれてるんです。あと、僕も大地に感謝しなくちゃ、ありがとうございます。お姉さん」
「ふふふ、貴方やっぱり面白いわよ? 私はミーナ、よろしくね」
「え! ミーナ先生!」
「あら? 私を知ってるの変ね? 私は貴方を見たことないのかしら?」
「えっと! とりあえず、また会える日を楽しみにしてます! また」
「あ、ちょっと……行っちゃった、あんな子いたかしら?」
急ぎミーナの側から離れて湖で一息ついくコウヤ。
「ふぅ、焦ったな、僕ってそんなに印象薄いのかな?」
湖に写し出される自身の顔を目の当たりにして驚くコウヤ、包帯が無い状態で目を瞑ったままであったがそこには紛れもなくコウヤの姿が写っていたのである。
「これが包帯が無い僕の顔?」
何とかして眼を開こうと試みるコウヤ、しかしその瞼は重く閉ざされ開く事は叶わなかった。
コウヤは、一旦自身の体に戻ると朝日が昇るまでの間、再度眠りに着くのであった。
中々寝付けないコウヤ、月明かりに照らされたミーナと名乗った女性の姿が頭から離れないコウヤ、それと同時にロナの怒る顔が浮かんできた夜であった。
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