遥かな世界の記憶
シャーデが絶望の声をあげた瞬間、サウンドワームの身体に巨大な閃光が撃ち放たれ、サウンドの腹と背中に巨大な穴を作り出した。
「師匠オオオーーォォォ、大丈夫ですかーー!」
サンドワーム達はシャーデの乗る1匹のみを残して、皆が閃光に向けて動き出す。
サウンドワームも同様に動き出すとその場にはシャーデとサンドワームが1匹、そしてキャスカを飲み込んだサウンドワームの死骸が残されるのみであった。
シャーデが直ぐにサンドワームから降りるとサウンドワームの側に駆け寄り「キャスカァァァ」と声をあげて泣きじゃくっていた。
そんなシャーデの側に行きシャーデの頭を優しく撫でるコウヤ。
「大丈夫だよ、師匠は簡単には死なないから」
「デモ、食べられた…… それにコウヤの攻撃に巻き込まれたかもシレナイ…… 」
「大丈夫だよ。ちゃんと確認してから射ったから、それに、ほら見てシャーデ」
サウンドワームの身体の中からキャスカが出てきたのだ。
「ハァハァ、すまないね、コウヤのお陰で命拾いしたよ、素直に感謝するよ」
コウヤはキャスカが飲み込まれる瞬間、体外魔力をキャスカに向けて発動し状況を把握すると同時に魔眼を使いキャスカの魔力から、位置を確認し、そして、撃つ位置を即座に決めたのであった。
少しのずれが全てを左右する状況下で射たれた1発の魔弾は見事にキャスカを避けてサウンドワームの身体を突き抜けた。
「それより、ごめんねシャーデ、君の友達だったんだよね」
「ワタシが悪い…… ミンナ…… ごめんね」
涙を流すシャーデに向かって、キャスカがゆっくりと歩いてくる。そして、シャーデの頭を撫でるとキャスカは、強く抱きしめた。
「ごめんよ、心配させたね、シャーデは私の大切な宝物なんだ、もう寂しくないんだよ。それに魔界にはコウヤみたいに気のいい連中がいるんだ。きっと素敵な仲間もできるぞ」
シャーデは少し悩んでいた。
そしてシャーデを乗せていた巨大なサンドワームの方を見上げた。
「ワタシいってくる、寂しくない?」
サンドワームがゆっくりと頭を下げるような仕草をする。
「どうやら、いい見たいだね。よかったねシャーデ。師匠も無事だし、まぁ始めからあんまり心配してなかったけど…… 」
コウヤの言葉にキャスカがコウヤに鋭い眼光を向ける。
「ほう、お前さんは大切な師匠が食われても構わなかったって言うのかい?」
「誤解です・・・師匠が本当に食べられて終わる気だったらと考えて助けたじゃないですか、まさか、本当にテレパス無しで走ってくなんて思いませんでしたし」
「そんなのあまり前だろ? 自分の娘を迎えに行くなら直接自分の足で行かなくちゃ」
「それでも無茶しすぎですよ! 本当に」
「確かにテレパスは便利だ。簡単にシャーデの前に行けただろうさ、でもさ、それは私の求める母親じゃないんだよ、目の前に娘が居るなら真っ直ぐに向かうのが、やっぱり母親だと思うからね」
キャスカの言葉にコウヤは、遠い日の母の姿を思い出してしまった。
ーー母さんに叱られて拗ねてしまった。僕を母さんが必死に捜しに来てくれたな。
コウヤの居場所をいつも見つける母にコウヤは質問をした事があった。
「何でいつもわかるの? いつも違う場所に隠れるのに?」
「何でだろうね? 母親になると何となくわかるのよ。それに子供の為に何でも出来ちゃうものなのよ」
ーーあの日の母さんの言葉の意味が今なら分かる気がする。
そんなやり取りをしているとシャーデがキャスカに抱きついた。
「ゴメンね…… キャスカ…… 生きててよかった、ウレシイ」
それから次のオアシスまでサンドワームの背中に乗り移動する事になった。
何故、オアシスを目指すかと言うと・・・キャスカとそのキャスカと抱き合ったシャーデがサンドワームの体液でベタベタで余りに凄まじい臭いだったからであった。
オアシスに着くとシャーデがサンドワームと会話をしているように見えた。コウヤはシャーデに質問をした。
「シャーデ、サンドワームと話ができるの? 」
「出来るよ、蟲なら何れとでもハナシ出来る」
シャーデが通訳した言葉をコウヤとキャスカに伝える。
※『我等、砂と生きる蟲は主に従う。“蟲王の囁き”の声は我等の王を伝える物、世界の蟲が王の為に従い、命を掛けるだろう。
蟲王よ、我等、サンドワームは王に忠義を尽くします』
※シャーデの言葉をコウヤが更に分かりやすくした物。
「つまり? シャーデの首飾りはロストアーツで、しかも僕と同じ “王” を選ぶ物ってことか」
「……みたいだね、まぁシャーデはいい子に育てるから。安心しな」
「うん! キャスカのイイコになる。あと、首飾りが蟲王の言葉を教えてクレタ」
そう言いとシャーデの首飾りが輝きだし黄金色の糸がシャーデの身体を包み込んでいく。
「シャーデ!」
コウヤが直ぐに走り出すとシャーデが笑った。
「大丈夫。直ぐにモドル」
そう言いとあっという間にシャーデが糸に包まれ黄金色の繭が出来上がっていった。
繭が出来上がったと同時に凄まじい地響きが繭を囲むようにして巻き起こる。更にコウヤとキャスカに対して驚くべき事が起きたのだ。
「蟲王と生きる者達よ、離れよ。直ぐに蟲達が新な蟲王の為に姿を現す。蟲王の復活は我等、巨蟲族の念願、長きに渡り産まれなかった器に成り得る者が我等を導くだろう」
そう口にしたのは、あの巨大なサンドワームであった。
「な…… 今、サンドワームが喋りましたよね」
コウヤは自分の聞き間違いでないかを確かめるように尋ねる。キャスカは目の前で起きた予想外の事態に困惑しながらも頷いたのだ。
「教えてくれ、サンドワーム。何故いきなり僕達に話しかける気になったんだ! 喋れるなら何故、長きに渡り対話をしなかったか知りたいんだ!」
「我等は対話をしなかったのではない。対話をする知識を封印されていただけの話だ」
「封印されてたって、つまり、なにかい? その封印が解かれたって事なのかい」
キャスカの質問にサンドワームは話をすると言うと安全な砂山へとコウヤ達を移動させた。
ーー
遥か昔、今の歴史が始まるよりも前の世界の記憶。
世界には、『数多の神』と『数多の王』が存在した。
神々は自身の力を使い世界を緑と水の溢れる自然の楽園を造り出した。
それを手伝う数多の王達は更にその下に従う者達を使い平和な世界を築き上げた。
しかし、時間と歴史が刻まれ始めた世界は、化学が発展し、超化学道具と言う今までになかった新な化学の歴史を紡ぎ始める。
そして、いつしか神を疎ましく思うようになり、王の存在を不要に感じるようになっていった。
世界に新な闇が生まれ闇はゆっくりと光を描き消し、時には浸食し始める。
王達は神を護るために立ち上がるが既に世界に神の味方をする者は少なくなっていた。更に王達を絶望させたのは、神を護るために与えられた力を使い神に反旗を翻した王達の存在であった。
『裏切りの王』の存在は戦いを更に悪化させた。
数多の王達が裏切りの王達により殺され次々に神達の首が切り落とされていった。
神達は世界を創る為の存在であり、王を選ぶ際にその力を王に託す。
王達が死んだ時点で神達の運命は既に風前の灯火となった。
しかし、二人の神がそれを止めたのだ。
一人の神は『神隠し』
神隠しは、全ての王の力をロストアーツに封印し、それを世界に散らばらせた。
もう人一人の神は『海神』
海神は海を操る力を使い全ての文明と大陸を海のそこに沈め、自らその罪を嘆き、命をたった。
海神の亡き後も1000年の間大地は海底に沈み続けた。
蟲王は、その際に自分を追って多くの蟲達が死を選ばぬように地底深くに巣穴を造るように命令し其れを確認すると全ての蟲達の知力を封印し本能のままに生き残れるようにしたのだ。
そして、蟲王の力は神隠しの力により封印されてた。
最後に蟲王が見たのは自分達を飲み込む巨大な津波と涙を流す海神の姿であった。
ーー
そこで話しは終わった。つまりは記憶が途切れた瞬間だった。
巨蟲族は互いの記憶を遺す為に産まれた子に、自身の血を飲ませる。そうする事により、親の経験が子に受け継がれていく。
生き抜く為の知恵であったが封印が解放された今、その行為により歴史すらも受け継がれる事になっていたのであった。そして、その引き金となったのがシャーデであった。




