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亜人と歩む ~瑠璃色王のレクイエム~  作者: 夏カボチャ 悠元
第二部 魔界偏 新に掴むべきもの
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キャスカの親心とシャーデの涙

 シャーデが笑みを浮かべたまま、キャスカとコウヤに楽しそうに話しかける。


「二人探してたムシ呼んだ。エライ? コウヤ、キャスカ嬉しい」


「嬉しいと言うか…… 正直、僕は驚いたよ。シャーデはサンドワーム達を操れるの?」


「ワタシの笛はスゴい。食べたムシの血が掛かったら言うこと聞くようになった。耳のないサンドワームも言うことキク」


 そのシャーデの発言を聞いてキャスカが何かを納得したかの表情を浮かべる。


「そう言う事かい、ロストアーツの中にも色々あるらしいが、血から情報を調べる物があると聞いたことがある」


「そんな物があるんですか」


「ああ、赤い十字架クロスの建造物から大量に見つかったロストアーツだ。そのロストアーツのお陰で王都の人間や貴族達は輸血と言う他の人間から血を奪い自信の体に継ぎ足す事が可能になったと聞く」


「うんん? それって大した事ないですよね? 輸血なら僕も母さんから分けてもらいましたよ」


「コウヤ、この話は輸血がスゴいんじゃないんだよ。身内以外の人間から血を選んで輸血出来るところにあるんだよ」


ーーーーーー


 コウヤ達の世界に DNAディー・エヌ・エー を調べると言う考えは定着は愚か提案すらされていなかった時代に現れたそのロストアーツの力は強大であった。

 医療において血を輸血出来る事はメリットになる。

 家族を輸血用に育ててる貴族がいるような世界に革命的な発見になった。

 其から多くの学者がDNAのメカニズムと配列、構成変化など今でも研究が世界中で行われた時代があった。


 しかし、研究が進むに連れて人間の欲も増えていく。今では一部の大貴族と王族達のみが知るばかりになってしまっている。

 今ではDNAの存在を知るものも少なくなり、研究者の殆どが亡くなり、使い方だけが引き継がれて今の時代に至る。


ーー


「なんとなく理解しました。つまり、シャーデのロストアーツも時代を変えるくらいヤバイ物って事ですか」


「ああ、多分な…… コウヤの“瑠璃色の石”程じゃないといいんだが…… 蟲達の情報を記憶して脳に直接音を届けているんだろう、其れならサンドワームも操れるって話もなっとくだ」


 強張った表情を浮かべるキャスカとコウヤを見てシャーデが下を向いて黙ってしまった。そして、シャーデの足元に“ぽたっぽたっ”と数滴の涙が落ちる。


「ワタシ、なんか悪いことした? ナンで…… そんな顔でワタシの方をミル……」


 シャーデは二人が蟲が居ないとずっと口にしていたので蟲を呼べば喜ぶと考えていた。

 しかし、蟲を呼んだ際のコウヤとキャスカの顔は予想と違っていた。硬く険しい表情に危機感に満ちた顔でシャーデの後ろにいる蟲達を見つめていた。


「は…… 違うんだシャーデ、損なつもりはないんだよ」


 キャスカが慌てて訳を説明しようとするがシャーデは首を横に振った。


「ミンナ嘘つきだ…… ワタシはもう…… 一人がイヤなだけなのに、優しくして欲しいのに……ミンナ、ミンナ……ウソつきだ」


 シャーデはそう言うと蟲達の方に高く飛んで行く。その中で一番大きいサンドワームの頭の上に着地するとそのまま、そっぽを向いてしまった。


 早い話が拗ねてしまった。


「どうしよう…… 師匠」


「仕方ない私が行ってくる。コウヤすまないね、少し時間をくれ」


 キャスカがそう言うとギルホーンから降り、そして、腰から武器を取り外した。


「師匠、何をする気ですか。剣も持たずに行きつもりですか、無謀すぎますよ!」


「初めから戦いに行くつもりは無いよ、私はシャーデの機嫌を取りに行くだけさ、それに娘に刃物を向けるような母親になる気はないんだ、心配には感謝するよ。コウヤ」


 キャスカは一気に駆け出した。


「あっ! 師匠オオオォォォ」


「心配するんじゃないよ。アンタの師匠は剣星なんだ、簡単にゃ死なないし、死ぬ気もない!」


 そう言うとサンドワームとサウンドワームの大群の中に走って行く。

 サンドワーム達がキャスカの体温を感じ一斉に攻撃を開始し始める。


 シャーデの乗るサンドワームがその振動で揺れた瞬間、シャーデは周りのサンドワーム達がキャスカを狙っている事に気付いた。


「ダメーーぇぇええ、攻撃しちゃダメ!」


 シャーデが叫ぶが既に数匹のサンドワームがキャスカを取り囲むように渦を巻き強襲を掛けようとしている。


 三匹のサンドワームの攻撃を躱しながらシャーデの乗るサンドワームを目指していく。そんなキャスカが空中に飛んだ瞬間、サウンドワームが地中からキャスカ目掛けその口を開き砂の中から天高く飛び出してきたのだ。


「ダメぇぇぇ! キャスカァァァ」


「クソ! ミスったね……まさか私がサウンドワームの存在を忘れるなんて」


 キャスカがシャーデに向けて優しく微笑んだ。


「ごめんね……シャーデ……」


「グヤァァァオオオン」


 激しいサウンドワームの声が鳴り響く、そしてキャスカを飲み込んだ。


「イヤァァァアアア、キャスカ……オカアサン…… 」


 シャーデがそう叫ぶがキャスカの声は返ってはこなかった。


 サンドワームの上で大声で泣くシャーデは自分の呼んだサウンドワームにキャスカが食べられる様を目の当たりにして泣きながら絶望した。

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