砂漠のシャーデ。泉の先へ
コウヤの前に現れたのは薄紫なのにも関わらず、透き通るように美しい肌をしたい綺麗な白い髪を腰まで伸ばした水色の瞳をした15歳くらいの少女であった。
「うわあっ!」
コウヤは慌てて刀を握っていない方の手で眼を隠した。少女は肌にボロボロの布を纏っていたが全身の殆どが穴だらけで肌は全く隠されていなかった。
「アナタ誰?」
少女に恥じらう様子はなく、コウヤにそう問いかける。
眼のやり場に困りながら「僕はコウヤ、入り江から魔界に帰るところ」
「ナンデで眼を合わせない? ワタシが嫌いか?」
「そうじゃないけど、その、服が」
そうコウヤが答えると少女は不思議そうに頷いた。
「なら、これを取ればワタシを見るのだな?」
そう言うと纏っていた布を目の前で脱ぎ始めた。
「待って、違うから! あのうしろ向いてくれる」
「構わない、でも、ワタシがキライだから逃げるのか?」そう言いながら少女は後ろを向く。
コウヤは眼を瞑りながら後から服を引っ張り後ろで結ぶとその上から自分の着替え用の服を被せた。
少し胸の辺りがキツそうではあるが問題は無さそうだった。
コウヤは真っ赤な顔になりながら、余った布を腰にも巻き全身を何とか隠した。
「ナンデわざわざ隠す? ワタシにはわからない」
「女の子がそんな格好してたらダメだよ、ましてや僕は男なんだから…… 」
後ろ向きで話すコウヤと少女。
少女は理解できないと言う感じで悩んでいるようであった。
「アナタ? オンナが嫌い、オトコが好き?」
「違うから!」
少女はコウヤの反応にクスクスと笑っていた。
「もうワタシは前を向いていいか?」
「あ、うん。ごめん大丈夫だよ」
少女が前を向くとコウヤの服はやはり小さかったのかお腹の少し上の辺りで止まっていた。
「ワタシはシャーデ=グーレ、アナタはコウヤ」
「そうだよ、僕はコウヤ。シャーデはこんな所で何してるの? 一人なの」
シャーデが少し頭を上向きにしつ悩む。
「ワタシは一人じゃないけど一人」
その答えにコウヤは混乱した。
ーーもしかして、シャーデは言葉が余り分からないのかな?
「えーっと、シャーデの仲間はいる?」
「イル」
「そうか、此処で何してるの?」
その時、オアシスの茂みを掻き分け、キャスカが走ってきた。
「コウヤ! ソイツから離れろ! 直ぐに泉から離れるんだ」
コウヤがキャスカの方を振り向こうとした瞬間、シャーデの顔がコウヤの前に現れた。
互いの眼が向き合った瞬間、シャーデがコウヤの問に答えた。
「ワタシは此処にコウヤが欲しくて来た」
コウヤはシャーデと眼が合った瞬間にまるで夢の中に居るような感覚に襲われ意識が遠退いていく。
それを見たキャスカがシャーデに斬り掛かろうと走る。そんなキャスカの前にシャーデと同じ様な姿をした女達が地面から姿を現した。
「イカセナイ」
「ジャマさせない」
「貴様らが一番邪魔だァァァ」
キャスカの声がオアシスに響き、両手の剣が女達を切り裂く、しかしキャスカの剣には切った感触はなく、まるで実体のない影を切り裂いているようであった。
その間にコウヤはシャーデと共に泉へと入っていく。
「コウヤ! 目を覚ませ。コウヤァァァ」
キャスカの声はコウヤには聞こえていなかった。
シャーデがコウヤを後から抱き締めるとそのまま泉の中へと姿を消した。 それと同時にキャスカの廻りにいた女達も姿を消したのである。
「くっそぉ! バカ弟子が」
キャスカが直ぐに上着を脱ぎ捨てると泉の中に飛び込む。
泉の底に向かうシャーデとコウヤの姿を見つけるとキャスカは全力でコウヤの元に向かう。
「コウヤこんな所で死ぬには、まだ若すぎだよ。早く地上に連れ出さないと」
キャスカに気付いたシャーデは急ぎ泉の底を目指す。
キャスカはシャーデの向かう先を見て目を疑った。オアシスの底に大きな亀裂があり、その周りにさっきの女達の姿が見える。
シャーデが亀裂の奥に進むのを確認した女達も亀裂へと入っていく。
キャスカは覚悟を決めた。自身の息が尽きるのが先かコウヤを救い出すのが先か魔族のハーフであるキャスカの息はもって15分程だった。
既に亀裂に辿り着く迄に5分を使用しており、5分でコウヤを救い出さねば共倒れになる。
キャスカはズボンを脱ぎ捨て、亀裂の中へと泳いで行く。




