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逃亡そして・・・ って奴です

この頃「更新速度遅っそ!俺、遅っそ!」って思わず自分にツッコミました。

3日も空けてるよ・・・(´・ω・`)


 冬休み、終わっちゃった・・・・。

side 魔王




「くそッ!!」



家臣の一人が荒々しく椅子を蹴飛ばした。

狼族の彼の一撃によって壁へとぶち当たった椅子は粉々に砕ける。

破片は其処ら中に散らばり、あれでは掃除が大変だろう。


「少しは落ち着け、レイバレン」


「どう落ち着けと言うんだ!?

 我々が奴を処分しようと言う話は聞かれたんだぞ!?」


興奮気味に話すレイバレンに対し、座って紅茶を啜る鳥族の家臣は冷静だった。


「元々は暗殺の予定だったのだろ?

 黒龍ならともかく相手は6歳の子供だ、殺すのは容易い」


「仮にも黒龍とり合って退けた化物だぞ?

 そう易易やすやすと成功するとは思えん!」


「貴様は心配性過ぎだ」


「戦いを知らない腰抜けには確かに分からんだろうよッ!」


「・・・何?」


僅かに腰を浮かせた鳥族を見て、私は声を上げた。


「いい加減にしろ」


それだけで場は物音一つしなくなった。

家臣全員が動きを止めて私を注視する、私は全員に目線を配りながら口を開く。


「我々が今する事は”エルシア”をどうやって無力化するかだ

 殺害も確かに視野には入れているが、極力殺したくはない」


私は自分でも分かる程憤怒していた。

ミシミシと私の魔力で周囲が軋むのが聞こえた、これでも魔王だ、飾りの象徴などでは断じてない。

静かに立ち上がるとその場に居る全員を見下した。


「速やかにエルシアの捜索を開始しろ、1秒を惜しめ、日の出までに見つけられなければ・・・」


私の拳が静かに壁を打った。





「全員の首が飛ぶと思え」




轟音、壁が円型にくり抜かれた様に粉砕。その一撃で屋敷の半分が吹き飛んだ。

そのまま全員が首を縦に振った。急ぎ足で部屋を出て行く家臣達。それを横目に見ながら私は月明かりに照らされた窓辺へと歩み寄る。

そして手を合わせ祈る様に膝を着いた。


「すまない、ケイズ、テルエ・・・」


月明かりに照らされた一室。


そこで呟かれた魔王の言葉は、誰も居ない静寂へと吸い込まれていった。








              ✖✖✖








空を飛び続け数時間、何度か休憩を入れて辿りついた場所。目下に広がるのは瓦礫だらけの城跡だった。

雨は既に止み、濡れた石造りの壁や床、天井などが散乱している。

中には壺や剣、いかにも貴族などが好きそうな趣向品も転がっていたが最早見る影もない。

私はそのままそっと地に足を着いた。

私の足を中心に波紋が広まり、薄く地面に膜を張った雨水が揺らぐ


「・・・ここが」


ラーグ家の始まりの場所。


目の前に延々と続く様なボロボロのレッドカーペット。


それは恐らく城であったのだろう、その最も奥の部屋へと繋がっていた。

ほんのすぐ近くには王の間を遮る大きな扉の成れ果てが。

静かに手を掛けて、押す。

見た目に反して大きな扉は簡単に開いた。地面をズリズリと引き摺って最後に大きな音を鳴らす。


「ぁ・・・」


扉を開いた先、紅いカーペットの続く先には朽ちた王の間が広がっていた。

表面の剥げた壁、崩れ落ちた天井、蔦の絡む柱、そして散乱する無数の瓦礫

その最も奥には上半分の掛けた王座が月明かりに照らされている。


月明かりはゆっくりと、その角度を変え。



私の目の前に一体の騎士を映し出した。



「・・・・・」


息を飲む。


それはその鎧から放たれる尋常じゃない程の威圧

黒龍程でも無いものの、腰に下げた剣の柄に手を添え佇む一体の騎士からは酷く危険な匂いがした。


一瞬の静寂の後、騎士から声が発せられる。



「貴様は、何故なにゆえこの地に足を踏み入れた」



カチャリと鎧が音を立てる。

私との距離は目測で10mも無い、飛び掛れば私など一刀の下に両断されるだろう。

その威圧を前に、私はそっと口を開いた。



「あの・・・・此処にラーグ家に伝わる”魔装具”が有ると・・・」



開いた口は言葉を紡ぐ。言い終わった後に訪れるのは静寂。

ぐっと堪えるように沈黙に耐えると鎧はゆっくりと剣を抜いた。


「!?」


「やはり、貴様も”魔装具”を狙う賊か」


一言、吐き捨てる様にして言い放つと同時に鎧は私の目の前から消えた。

後に残ったのは砕けた石床。


「違ッ」


”違う”と否定する前に火花が散る。見れば私の側面で剣と翼が競り合っていた。

何時の間に移動を!?驚愕すると同時に私は距離を取る。壁を背にして鎧と対峙した。


「その翼・・・もしや魔力で編まれたモノか」


静かに再度剣を構える鎧。


「ま、待って下さい! 私は賊何かではありませんっ!!」


「賊も同じ事を言うッ!」


目にも止まらぬ速さで振り抜かれる剣戟、屈んで避けると同時に頭上の壁に一文字の傷が出来上がった。

2撃目、そのまま剣が振り下ろされる。


「ッ!」


避けられない、そう悟った私は即座に対応出来る様予あらかじめ組んでいた魔術を発動させた。



石之壁ロックウォール』+『即興爆破クイックボム



瞬間、私の足元から粘土の様な物体が飛び出し、硬質化を遂げる。そのまま鎧の剣戟を防いだ。

剣戟で目の前の壁が深く抉れる。


「! 何と強固なっ」


一瞬驚きの声を上げる鎧、今まで攻撃を防がれた事がなかったのだろうか。

剣を一度下げ、一瞬の溜めを作って瞬時に斬りかかってくる。薙ぎ払うような横からの一撃。

このまま壁ごと私を切り伏せるつもりなのだろう。私は壁に手を当てて叫んだ。


爆破ボムッ!」



ー 目の前の壁が唐突に爆散した。


「なッ!?」


破片は全て鎧の方へと向かう。小爆発では然程ダメージを与えられないが、魔力で硬質化した石を爆発で飛ばす。

さながら”ショットガン”の様なモノで威力は折り紙つきだった。

鎧は咄嗟に体を捻るようにして破片を回避する。だが”面”の攻撃を完全に避けることは不可能で、幾つかの破片が弾丸のように鎧を撃った。

広間に鉄同士のぶつかる音が響く。


「ぐぅッ!」


鎧が声を上げる。そして一歩、仰け反る様に後ろへと後退した。

私は屈んだ状態で胸を撫で下ろす。ダメージを与えれば相手も冷静になって話に耳を傾けるかもしれない。

元より殺す気はないし、私は本当に賊でも何でもないのだ。話せば納得してくれる、私はラーグ家の人間なのだと。

そして戦いを止めるべく、声を掛けようと視線を鎧に目を移した時。





 私は目の前に迫る大きな手に、目を見開いた。





「あぐっ!」


喉を強く掴まれ、そのまま鎧の方へと引き倒される。

どうして動けるの?言葉は掴まれた手に遮られ、鎧には確かに穴が空いている事が視認できた。

そのまま石床へと強引に押し倒される。


「んぐぅっ、かはっ」


強い衝撃が体を襲い、思わず呻く。衝撃で『白い翼』が硝子の様に砕け散った。

締め付けられた喉は必死に酸素を求めるが、細い腕ではその強靭な手を引き剥がす事は困難だった。

必死に藻掻く。だが予想以上に鎧の力は強く、呪文も唱えられないよう手で口を覆われた。

その代わり喉を開放される。

咳き込む私を横目に、鎧は剣を静かに握りしめた。


「んぅ!んぁっ、んんッ」


殺される。私はそう感じ体を必死に動かした。

しかし鎧は跨るようにして私の動きを封じ、私自身その重さに苦しんでいた。

鎧の手は徐々に高ささを増し、その切っ先は私の喉へと定められる。


「本当に・・・優秀な魔術師だ、貴様が賊でなければ・・・あるいは」


そして剣が空中で停止する。

振り上げた剣に月光が反射した。あの輝きが私の命を奪うのか。

私は思わず目を固く閉じ、枯れた筈の涙が一滴だけ頬を伝った。

ここで私が死ねば、皆が幸せになれるのかと自問しながら。







「だが此処ここまでだ    死ね    」







夜の支配する暗闇の中、振り下ろされる刃の先を月光が照らした。










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