人と人って奴です
貴方が読んでいるのは
異世界で、幼女で、魔法使い であってます(`・ω・´)
はっきり言って、戦況は最悪だった。
初めに何が悪かったと言えば、最初から逃げ腰だった貴族どもが悪かったのだろう。
戦争開始から3時間後に届いた報告を聞いた時、我は呆然となった
「前線を受け持つ筈だった大隊長(貴族)以下4名が行方不明になりました」
居なくなりました。で済む話しだろうか?答えは否。
敵は容赦無く攻め込み、瞬く間に前線の兵士を蹂躙した。指揮官の居ない兵などたかが知れている。
我が出向いた時には、既に殆どの部隊が敗走していた。兎に角今は大勢を立て直さなければならない。
前線の部隊に撤退を命じ、道中『不可視之罠』で敵の先行部隊を吹き飛ばしてやった。
だがそれでも被害は500人程度。時間を稼ぐ程の効果は期待できないとわかっていた。
前線の支援用に建設した補給基地を臨時の防衛砦に改修
後続で突撃してきた敵兵と膠着状態に持ち込む。
だが、不幸とは連続して起こるようなもので・・・・。
結論から言えば、逃げた馬鹿貴族が相手側に寝返った。
元々伝えていた作戦、もとい部隊編成やら全て口を割った様で直様戦況は悪くなった。
最後の最後で補給基地にあった物資に火を付けて脱出した。3000人近い敵兵を屠ったものの、こちらの被害は更に大きかった。
元々「15000」対「40000」と言う戦力差だったのだ。
既にこちらの戦力は三分の一である5000を切り、本国首都まで撤退。現在は首都外壁での戦闘を余儀なくされている。
恐らく城下町まで侵攻されれば、もう防ぐ手立ては無いだろう。こちらの敗北だ。
それが分かっているのか、我が軍の兵は実に善戦してくれている。首都防衛戦が始まって既に2日。
そんな時、最後の不幸が我を襲った。
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「陛下!!」
王の間に転がり込む様にして連絡兵が我の前に跪いた。
作戦会議中だった隊長兵、他王の間に居た者達が一斉に視線を向ける。
その焦り様は並ではなく、皆が只事では無いと察したのだろう。
我は臨時の大隊長との作戦会議を一時中断し、連絡兵へと体を向けた。
「一体何事だ?」
息を整えるようにして体を上下させる連絡兵。
やがて覚悟を決めるように息を飲み込み、我の瞳を直視しながら報告を口にした。
ー 「隣国”サライ が我国に宣戦布告! 敵国”ファブニール と協定を結びましたッ!!」
我は目の前が真っ暗になった。
協定?冗談にも程がある、隣国サライと言えば・・・・。
「我国の東に位置する国ですか、北にはファブニール・・・・」
大隊長の一人が口にする。隣に居たもうひとりが激怒した。
「クソッ!背後には海、西には”魔境 !」
「・・・実質、孤立したと言う訳ですか」
大隊長がテーブルに拳を叩きつける、そう、これで我が国が逃げるルートは何処にも無くなった。
付近に頼れる国家は存在しない。海にでも逃げるか?と言う非現実的な案まで出てくる始末。
「・・・王よ」
大隊長の1人が頭を垂れた。三人の最後の一人。その顔は悲痛に歪んでいる。
「貴様の言いたい事は分かっている」
「・・・・・では」
我の顔は酷く歪んでいるだろう、それこそ自分でも分かる程歯を食いしばっている。
それでも静かに首を横に振った。拒絶の意思。
頭を垂れた大隊長は酷く悲しい顔をしたものの、我に跪く
「例えこの命が助かる方法が有ったとしても、我は戦う事から背を向ける訳にはいかん」
腰に備え付けた剣を引き抜く、そのまま剣先を床へと突き刺した。
鉄の削れた様な音だけが室内に響き、シンと静まった中で我は叫ぶ。
「既に退路は無し! この身、何時滅び様とも引きはせぬぞッ!!」
ー おぉぉぉぉぉぉッッ!!
王の間が歓声に呑まれる。
そんな中、我は静かに俯き唇を噛み締めた。
彼女が幸運に巡り合う戦争まで、あと数日・・・。
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side エルシア
「ん、んぅ・・・・」
先程まで夢を見ていた気がする、具体的に言うと動物とキャッキャうふふしていた夢。
目を静かに開くと豪華な天井が目に入って来る。靄の掛かった頭を軽く振って辺りを見回すと既に夜だった。
月明かりが部屋に差し込んで寂しさを増幅させる。少し肌寒さを感じます。
「・・・ぁ」
触れたシーツに硬い感触を感じる。どんぐりの欠片、やっぱり夢じゃなかった。
上体を起こす、開いた窓から風が吹き髪を宙に泳がせた。
「・・・私、どうなったんだっけ?」
ぽーっと辺りを見渡す、窓枠には小鳥が食べ残したのだろうパンの屑が
夢の中ではさんさんと輝いていた太陽が月に変わっていた。
聞こえるのは静寂に木霊する梟の鳴き声だけ。
シーツを退かし、床に足を降ろす。ひんやりとした感触とともに体が軽くなっていると実感できた。
休息を取ったからだろうか?
夜だと妙に心が落ち着く。
昼間の高揚した感情がすとんと抜け落ちた気がした
冷静に記憶を辿る、そういえば私はここに来た経緯を思考していなかった。
黒龍と戦って、飛び去った後・・・それから・・・・・・。
「それから・・・」
覚えてない。
私はどうなったのだろうか? そして私はどうなったのだろうか。
そっとドアに近付き、耳を当てる。
廊下側から何も聞こえないことを確かめてドアを開けた。
ひやっとした冷たい空気が頬を撫で、廊下を突き抜けていく。寒い。夜ってこんなに寒かっただろうか?
ここが何処か知りたい。事の発端は覚えている。叶うならミラさんに黙って出た事を謝って、それから・・・。
「 で だ となり」
微かに声が聞こえた。先ほど思考したことが頭を離れ、反射的にドアの影に隠れた。
耳を傾けると意外と近い。
廊下の一番端、最も奥のドアから光が漏れていた。そこから声も聞こえる。
「・・・・」
静かに、ゆっくりと歩を進める。壁伝いに少しずつ距離を縮め、こっそり中を覗いた。
其処に居たのは6人の魔族。
私に背を向けるように座る2人、向こうに3人、そしてその全員が右側に座っているのだろう声の主の方を見ていた。
深く響くような声、何処か威厳の様なものも感じる。
私はどうにかして声の主を見ようと試行錯誤したが、音を立てる訳にも行かず断念した。
「 最も問題となるのがあの少女・・・”エルシア の今後についてだ 」
どくんと、心臓が跳ねた。
すかさず付近の魔族が声を上げる。
「最悪の厄災”ヴァン=ヘルリッジ を単独で退ける少女 ・・・それは最早、我らと同類と呼べるのか?」
「そもそも何故あの黒竜と共に居たかも分からん、龍族がたった一人の小娘の相手をするものか」
「相手をしていたから問題なのでしょう。 報復しに来るやもしれません、早急に処分を・・・」
無意識に体は反応した、震える、どうしようも無く震える。
私は震える体を押さえつけて耳を傾ける。寒い、まるで内側から凍っている様
此処は何処か?わからない、きっと帝都のお偉いさんのなんだろう。
カタカタと止まない音を必死に殺した。殺されると思っているの?私が?
どうして?厄災と呼ばれる竜を退けた、なのに何故私が処分されるの・・・?
「しかし、魔王様・・・エルシアと言えば昨日謁見を予定していた・・・」
「ああ、ラーグ家の者だ。 ・・・歳はまだ6歳になったばかり」
魔王様?そこに魔王様が居る?
「6歳か・・・それこそ、まだ自分の力が何れ程のものか分からんだろうに」
「処分の対象にするには・・・その、いささか歳が幼すぎるのでは・・・?」
ダンッ、と机を叩くような音が響いた。
「何を言っている!? そもそも我らにその牙が向けられたらどう責任を取るんだ!?」
「かと言って容易に殺すのはどうかと思うが」
「所詮幼子、今から少しずつ我に従順にさせれば良いだけの事よ」
「馬鹿な!それが我ら帝都の在り方か!?」
「今更在り方どうの言って何が変わる? その様な事で他種族にエルシアを独占されてみよ、それこそ千年前の...」
私を置いて、議論は白熱していく。
殺すべき、国の為に洗脳すべき、拘束して幽閉すべき。
其処には私の意思なんて無くて、”自由 なんて言葉はひとつも無かった。
体が凍る様だ。 冷たい。寒い。
ー 「 そこまでだ!! 」
魔王様の一喝がその場を沈めたのだろう、夜に再び静寂が戻った。
しんと物音のしない空間に、魔王の言葉が再度響く。
「兎に角、ラーグ家は長年我らに仕えた一族。 そのご息女を簡単に処分するなど出来ぬ」
一度静寂が訪れ、ふと魔族のひとりが手を上げ発言した。
「しかし魔王様、あの黒龍が降りてきた事は既に大陸中に知れ渡っています。
軍も使わず撃退した事も知られている・・・となれば、エルシアの存在もいずれ・・・」
全員が俯く、そして
「・・・・その時は、我が自ら剣を」
魔王が発言したとき。
正面に居た魔族と、目があった
「 ッ!?」
魔族が声を飲み込む。
私の眼はどんな風だったのだろうか、見て取れる感情は「恐怖」「後悔」「悲しみ」負の感情
私は裾を翻し、廊下を駆け抜けた。
背後から悲鳴に近い叫びが上がった、数秒の後ドアが蹴り破られる様に吹き飛ぶ。
誰かが後ろから叫んだ。
私は振り向かない、止まらない。
先程の部屋のドアを体当たりの様に押し開け、窓の外へと身を乗り出した。
『白い翼』
純白の翼が私の背中を覆った。風が吹く。カーテンが靡いた。
後ろからドタトタと足音が複数。
部屋のドアを力任せに開け、誰かが叫ぶ。
「止めろォッ!!」
私は静かに窓枠を蹴って、空へと舞い上がった。
この頃読み専になってます(´・ω・`)
あ、感想くれると執筆速度が上がるかも・・しれないかも、しれない
(m´・ω・`)m




