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空の王者 後編って奴です

視界を覆うようにして巻き起こる砂嵐

それは魔力球が黒龍に着弾した瞬間に巻き起こった衝撃の為だ。

光が収まり、目が慣れたとてこの砂嵐が邪魔をする。

魔力球が黒龍の胸に直撃した後、この茫々と吹き荒れる砂嵐の前に私は立ち尽くしていた。

目の前には大きく抉られた様な地面が淡々と広がっている。


「・・・・・」


疲労はない。と言うのも魔力は減れば勝手に必要分だけ補充される

『無尽蔵の魔力』と言っても、私自身が体内に保有できる魔力は限られているのだ

それは溢れる程満杯のバケツに水を入れる様なモノ

零れた水は無論元に戻らないし、ならば魔力が減少した瞬間に魔力を補充すればいい。

減った水の分だけ直様すぐさま補充する。それがこの『魔の異世界』の本質だ。

無論、魔力の受け皿である私の魔力最大保有量も前と比較にならない程強化されているワケだが・・・。


「・・・来るか?」


砂嵐が徐々に晴れていく。

僅かでは有るが黒竜らしきシルエットを視界に捉えた。影は動かずじっとしている。

魔力球が効いたのか、それとも単に様子を見ているだけなのか。


(だからと言って手を休める事は無いよね)


私は静かに演唱する


『爛れ硝煙のボマー』+『深淵の....




そこまで演唱した所で、目の前に収束する光に気付いた。





「ッ!!」




圧倒的な熱量、光量、そして威圧感

まるで太陽をそのまま詰め込んだような印象を受けた。

大きく口を開き、そのまま仰け反る黒竜。これは発射の予備動作、一瞬の溜め。そう・・・



「ドラゴンブレスッ!?」



私は全力で横へと飛び退いた。


瞬間、今まで私の居た場所が文字通り「消し飛んだ」


溶解なんて生易しい、一瞬の内に蒸発し跡形もなくなる

目の前を超高熱の何かが通過し、そこには直線に引かれた一本の道が出来た。

物語なんかでは炎と言えば、広範囲に広がるような「炎」を想像するだろう

だが”コレ は炎なんかじゃない。近いと言うならば最早「レーザー」

速度も、威力も、当たれば即死。ましてや至近距離からの回避なんて絶対に不可能。


「くぅッ!」


地面に手を着き、空中で身を捻る。

同時に第2射が今まさに放たれようとしているのが見えた。

あの威力で連射が効くなんて、洒落しゃれにもならない。



『虚像のインビシブル』+『不視の空間移動ステップ



第2射が轟音と共に放たれた。

私との間を詰めるのに0.5秒と掛からない、地面を削り取るように私へと直進する。

私が地面に足を着くのとブレスが着弾するのはほぼ当時だった。

だが、既に私は其処に居ない。

すれ違う様に、私の真横をブレスが通過して行った。


「ッ!!」


体が焼けるような熱を持つ、避けてもコレだ。全く割に合わない。

竜の事については書斎で多少目にした事がある。

・・・といっても、この世界に来て魔族にどんな種類があるのかを調べた時に少し齧った程度だが。

結論から言うと。


「・・・本気になったのね、あの黒竜」


竜が本気を出したって言う事だった。



「まさかコレを使う羽目になるとは、正直予想していませんでした」



立ち上った砂嵐がブレスで掻き消え、向こう側に黒龍が立っているのが見える

先程と違う事と言えば、僅かに胸の鱗が焼け落ち顔面の顎下に火傷の様な傷跡が見える事だろう。

だがソレを気にした様子は微塵もない。


「私とて貴方がこの世界から去った後、死に物狂いで強さを求めたのです

 故に自信が有り、誇りがあった

 この私が貴方を全てから守って差し上げるのだと・・・」


黒龍が口を大きく開けた。

その喉奥から先程とは類を見ない発光を見せる。直感でわかった、アレはヤバイ。


「だが貴方は強い、私が本気を出さなければならない程に

 無傷で連れて行くつもりでしたが、こうなってはご容赦を・・・

 多少怪我をした所で死なせはしません」


死ぬどころかソレ当てられれば蒸発するて。

私は瞬時に演唱を開始した。



『虚像のインビシブル』+『不視の空間移動ステップ



「では、これで幕引きです」



黒龍が咆哮とも言える程の音量で大地を震わせた。否、これは咆哮なのでは無い。

ドラゴンブレスが大地を削る音。

そのブレスは先程と比較する事が馬鹿らしく思えるほど、強大だった。

例えるのなら「1」と「10000」

私を本当の意味で私を無傷で捉えようとしたのが理解できた。


効果範囲は、余裕で私の回避地点を覆っている。


避けられない。其れによる私の判断は素早かったと言えるだろう。



絶壁之守護アースブロック』+『修復される遅延時間ロスタイム』+『鉄硬化ダン



瞬時に屈み、目の前に体をギリギリ覆うような防御壁を出現させた。

今演唱出来る最高峰の防御魔術


広く、薄くでは無く。狭く、厚く。


現れた防御壁に対して自動修復機能を付け、更に硬質化の魔術も付与する

防御壁とブレスは瞬く間に接近、触れると共に爆音を撒き散らした。









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side 魔王



魔王を乗せた馬は駆ける。

背後には9人の護衛を連れ、尋常ならざる速度で進んでいた。

向かうは東の森。既にかれこれ1時間は走り続けている。馬も息が上がっているだろう。


「魔王様、もうすぐ入口に到達致します」


近衛兵の隊長「シンギ・ホルン」が前方を指差した。

見れば遠目にも木々が見えた、どうやら入口へとたどり着いたらしい。馬を身近な木に繋ぎ留めると数人に指示を下す。


「ホルンと近衛の3人は一緒に来い

 残りはここで待機、万が一に備えて戦闘準備もしておけ」


やるとすれば撤退戦だが・・・と呟いたのは近衛以外には聞こえなかった

5人はそれぞれ森へと入っていき、残りの兵は各々周囲を警戒する

森の中は霧が濃い、5人の姿はたちまち霧の中に呑まれた。

黒竜の居るだろう方向に向けて歩く。近衛兵の中に探索兵が居り、その兵を先頭に進んだ。

不気味な闇の支配する早朝の森を進む中、魔王は配下の報告を改めて考えていた。


「・・・黒龍と並ぶ魔力反応、か」


「先の件ですか?」


ホルンが横から呟きに返事を返した。

それでも眼は左右に向けられ、警戒を怠っていない。


「ああ、調査兵の報告に有った強大な魔力反応についてだ」


「確か突如巨大な魔力の渦が形成され、その中から現れたとか」


「そう、それだ

 問題なのはその魔力反応が我々にとって”敵 なのか”味方 なのか・・・」


そこまで言って魔王は「いや・・・」と首を振った。


「味方は高望みしすぎか、少なくとも国に害を為す存在でなければ上々だ」


「・・・最悪なのは単なる縄張り争いだった場合ですね」


ホルンが苦い顔をする、それもその筈。

そうなるとこの国の周辺には「飛竜種」が2体も居る事になるのだ。

飛竜同士の縄張り争いに巻き込まれ滅んだ街は少なくない。


「そうなったら防衛費の上乗せが必要な様だ」


おどける様に言った魔王に対し、ホルンは苦笑いを返した。







そんな会話も、探索兵の叫びによって掻き消される。







「魔王様!前方より超圧縮魔力を感知!!


    これはっ・・・・・・”ドラゴンブレス ですッ!!!!」







この場に居る全員が戦慄した。


瞬間、目の前が光ったと思うとほんの10m程横を黄金の「何か」が通過して行った。

近くに居るだけで全身が灼熱に覆われた様な熱を持ち、轟音が耳を打つ。

地面を削り、木を消し去り、森に穴を開ける。


近衛の一人が悲鳴を上げた。

見れば片腕をブレスに飲まれていた。「焼ける」なんてまだマシだ。

あれは消滅、右腕の存在そのものを飲み干す様に細切れになって消えて行く腕。

勢いに逆らえず地面へ投げ出された。そしてピクリとも動かない近衛兵。

黄金のドラゴンブレスはそのまま森を貫き、地平線の彼方へ消えて行く。

我に返った魔王は、直様すぐさま駆け寄った。


「おい!おい!しっかりしろッ!」


近衛兵に意識はない。

ブレスに呑まれた右腕が、まるで綺麗な刃物で切り落としたような断面をしていた

断面からは血の一滴も出てこない。


『癒しの息吹ヒール


回復魔術を唱える。

だがあまり効果は無いだろう、あるとしても痛みを和らげる程度のモノだ。


「近衛兵ッ!コイツを待機している兵の所まで連れていけ!

 そのまま馬で帝都まで戻り救護班に見せるんだ!」


「は、はッ!」


「お前も行け、2人の方が速い!」


2人に担がれ、足早と入口に戻っていく近衛兵

まさかドラゴンブレスが来るとは思っていなかっただろう。

”あの腕は二度と元に戻らない


「・・・こんな辺鄙へんぴな森で”ドラゴンブレス とは」


唇を強く噛むホルン。充分予測出来る結果だったと、自分を責めているんだろう

だが通常竜はドラゴンブレスを使う程の縄張り争いはしない。

そもそも奴らにとって縄張り争いとは「遊び程度」のモノでしかないのだ

そんなものに命を掛ける馬鹿は居ない。 


「これは・・・嫌な予感しかしないな」


魔王は身を翻し、黒龍の居るであろう場所へと急いだ

ドラゴンブレスの出元・・・つまり、この地面に深々と刻まれた「溝」に沿って行けば良い

魔王、ホルン、探索兵の3人は無心に走り続ける

そして数分か数十分か、はたまた1分も経っていないのか。


3人は森を抜け、ついに辿り着いた。





「なんだ・・・これは・・?」





魔王の目の前には、森であった筈の場所に。


延々と広がる荒野が有った。








ー そして其処に佇む一匹の竜と、一人の少女の姿が。

後編なのにまだ続くって言う


ごめんなさい。(・ω・`)


あ、主人公の強さですが最強よりちょい下って事にしようかと。(`・ω・´)

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