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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
四章 魔導大国編

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9話 同性婚


 あぁ、巻き込まれたくなかったのに、巻き込まれてしまった。

 僕はやと様に目で助けを求めるけど、手でごめんと合図をされる。

 い、いや……僕はガストの人間じゃないし、本来無関係な人間なんだよ?

 僕は困惑してよいやみに助けを求める……が、よいやみはセブッソを思いっきり睨んでいて、僕の視線に気付いていない。。

 セブッソの視線を気持ち悪い気持ち悪い言っていたから、よいやみの気持ちも分からなくはない。

 よいやみがガスト王を睨みつける。


「父上! セブッソがどう言おうと、私の意思は変わりません!! もう一度言います! もし無理矢理婚約しろと言うのであれば、私は二度とガストの地を踏みません!!」


 よいやみは完全に怒っている。これにはガスト王も少し困った顔をしていた。

 しかし、ここで空気を読まずにセブッソが気持ち悪い事を言い出す。


「よいやみ姫!! 黒女神という汚れた(・・・)連中から君を救ってみせるよ!!」


 いや、僕達の事を全く知らない癖に、汚れたとか言われるとムカつくなぁ。


「おい小娘!! どうやってよいやみ姫をたぶらかしたかは知らないが、私が正義の鉄槌を下してやる!!」


 はぁ?

 僕がよいやみを騙しているとでも言いたいの?

 そもそも僕は女だ。

 女同士では結婚できないと思うんだけど……。


「気持ち悪いっす!! そもそも黒女神の悪口を言うんじゃないっすよ!! 四肢を引き千切ってやろうっすか!?」

「いや、君は騙されているんだ!! 君はそんな口調の子じゃなかった筈だ!!」

「あしの幼馴染でもなんでもないお前にあしの何がわかるんすか!! 気色悪いんすよ!!」


 よいやみとセブッソは言い合っている。

 この場をどう収めるのだろうと思っていると、ガスト王が低い声でセブッソを一喝した。


「そこまでだ……。ゼブッソよ。貴様はどこまでの覚悟がある? 王族を娶るという事はこれからは前線に出なければいけないという事だぞ? 今まで戦闘に参加せずに陰でコソコソ隠れてきたお前にその覚悟があるのか?」

「勿論です!! 今までの私は爪を隠してきただけで、ガストで誰よりも強いと自負しております!!」


 え?

 王族が前線に出るの!?

 普通の王族は指揮して、兵士や騎士が前戦で戦うんじゃないの?

 そういえば、せいなさんは魔導兵団隊長と言っていた。


 このセブッソの言葉にはやと様やガスト王だけでなく、この部屋で護衛についている護衛兵士も軽く眉が動いていた。

 おそらく「この男、何言ってんだ?」とでも思っているのだろう。

 僕が不思議そうにしているとよいやみが近付いてきた。


「アイツ、本当に気持ちが悪いっす。みつき、アイツを黙らせるっす」

「どうして僕が!?」

「あしの嫁ならばなんとかするっす」

「僕がいつよいやみの嫁になったの!?」

「昨日の夜お風呂で愛し合ったじゃないっすか!! その日の夜もベッドで愛し合ったっす!!」


 ちょっ!?

 大声で何言ってんだ!?


 これにはセブッソだけではなくガスト王も驚愕している。

 いやいや、僕達は同性だからね?

 そもそも、僕が嫁と言われているからね?


「き、キサマ!! よいやみ姫を汚したのか!!」

「だから僕は女だと言っているだろ!!」


 いい加減ムカついてきた。

 僕がセブッソを睨みつけていると、ガスト王が呆れた顔で余計な事を言い出す。


「セブッソよ。もし、よいやみの心を掴みたいのならば、よいやみが愛するみつき殿を倒して見よ」


 は?

 い、いや……ちょっと待って?


「分かりました!! よいやみ姫のハートを掴んで見せましょう!!」


 それを聞いたよいやみが物凄く嫌な顔をしている。

 しかし……。


「よし、決闘は今日の午後だ。セブッソとブルット公爵は訓練場で準備をするがいい。みつき殿とよいやみは少し執務室で残ってくれ」


 ガスト王はそう言ってセブッソの拘束を解くようによいやみに言う。

 よいやみは嫌そうだったが、拘束ロープの端を持ち、思いっきりセブッソを蹴る。

 セブッソはそのまま壁に激突したが拘束は解かれた。

「今は照れているみたいだけど、安心してね」とよいやみにウインクをして父親である公爵を連れて執務室から出て行った。


 さて……。

 怒りを抑えて……。


「ガスト王、どういう事ですか?」

「わしの方こそ聞きたいのだが、愛し合ったと聞いたが、本当にそういう仲なのか?」

「違います!! 僕がお風呂に入っていたら勝手に乱入してきて、夜だって目を覚ましたらよいやみが抱きついていただけです!!」

「そ、そんな。みつき、あんなに愛し合ったっすのに!?」

「あんたはそろそろ黙ってて」

「うす……」


 素直だな、おい。

 僕達のやり取りを見てガスト王はため息を吐く。

 ……いや、僕の方がため息を吐きたいよ……。


「まぁいい。本当はあのバカ公爵親子を問答無用で処罰すれば済むのだが、他の貴族も納得させるためには仕方なくてな……。しかし、よいやみちゃんを愛しているのならこのくらいの試練を乗り越えてくれなくては困るぞ」

 

 ガスト王の顔が少し怖い。

 明らかにお風呂とベッドの事を怒っているよね。


「だから、僕とよいやみは同性なんだよ!!」

「それがどうした?」


 え?


「ガストでは同性婚も認められているぞ?」

「は?」

「だから同姓でも結婚はできる。流石に王太子は跡継ぎが必要だから同性婚では許されないが、その他では王族であれ同性婚を許しているぞ? 実際、わしの娘でもあり、よいやみの姉の一人は同性婚をして伯爵家に降嫁した者もいる」

「えぇえええええ!!?」


 僕はよいやみを見る。

 するとよいやみは頬を染めて「結婚式はいつにするっすか?」とモジモジし始めた。


「……へ?」


 そ、そんな馬鹿な……。


 ガスト王も僕を巻き込んだ事を悪かったと思ってくれたらしく、お昼ご飯にはかなり豪華なモノを用意してくれたみたいだ。ただ、誤解されたままのような気がするんだけど、どうなんだろう……。

 しかし、ガストでは同性婚が認められているのには驚いた。

 町に出れば結構そう言う夫婦がいるそうだ。

 エスタさんの話では、レギーナ帝国でも同性婚は認められているらしい。


 巻き込まれて少し機嫌の悪い僕は黙々とご飯を食べているんだけど、僕の機嫌を取ろうとしているよいやみがウザい。


「みつきー。機嫌を直してくれっすー」


 僕はよいやみを無視するのだが、よいやみは必死に僕に抱きついたりしてくる。

 あぁ、鬱陶しい。

 いや、普通この状況で抱きついたりするか?

 どう考えても逆効果だと思うんだけど……。

 そろそろ呆れてきたので、もういいや。


「はぁ……どうして、よいやみ自身が戦わなかったの?」

「あぁ、ようやく喋ってくれたっす」


 僕が話しかけた事でホッとしているようだ。

 本当にしょうがないなぁ……。


「あしが戦わなかった理由っすけど、正直セブッソは物凄く弱いと思うっす。それが厄介なんすよ」

「え? 弱い事が厄介なの?」

「そうっす。仮にあしが戦った場合っすけど、あしが勝っても、いや、確実に勝つんすけど、アイツ等は負けても言い訳してくるんすよ」

「言い訳?」

「そうっす。愛する者を傷付けたくなかったから本気を出せなかった……とか言ってくるっす」


 はぁ?

 いくら何でも無茶苦茶だよね。

 僕の表情を見て、よいやみはため息を吐く。


「恥ずかしい話っすけど、そのくらいの事はしてくるっすよ」

「そ、そうなんだ……」


 本当に厄介な男なんだね。


「あ、さっき気になった事があるんだけど」

「なんすか?」

「ガストでは王族が率先して戦いに参加するの?」

「さっきの親父の話っすね。参加するっすよ。例えば、せいな姉様って魔導兵団の隊長なんすよ。隊長は最前線で指揮をするっす。ガスト王家の戦闘能力と魔力は高いっす。だからこそ、王族がガストの守護者になっているっす」

「それなら尚更、よいやみが戦った方が……」


 これには、よいやみも困った顔になる。


「いや、みつき。あしはアイツと戦ったら確実に殺す自信があるっす」


 そんな事をハッキリ言われても、僕も困るんだけど……。


「頼むっすぅ~」


 よいやみは涙目で懇願してくる。

 流石はお姫様。

 上目使いが可愛い……。

 うぅ……その目はずるいよ……。

 

「わかったよ。戦えばいいんでしょ」

「みつき、大好きっす」


 そう言って僕に抱きついてくる。

 ひとしきり僕をに抱きついた後、よいやみは真剣な顔になった。


「みつきには話しておく必要があるっす」

「なにを?」

「恐らく公爵は勝負に負けた後、私兵を出してくるっす」


 私兵?

 そんな馬鹿な。


「この後の決闘ってガスト王の前でするんでしょ? それなのにそんな事をするの?」

「アイツ等は平気でやるっす。むしろ親父もそれを狙っているっす」

「どういう事?」

「王族の居住区に侵入しただけではお家断絶まではできないっす。他にも理由が欲しいんすよ。きっと、王直属の騎士がブルット公爵家への家宅捜索の準備をしているっす。決闘が始まるまでに私兵を配置するはずっす。決闘が始まったら騎士による家宅捜索が始まるっすよ」

「じゃあ、決闘はする意味は無いと?」

「そうでは無いっす。家宅捜索しても何も出てこない時は、私兵にみつきを襲わせた事をつつくっす」

「用意周到だね……」


 流石王族というべきか……。


「私兵なんすけど、殺さないように蹴散らして欲しいっす」

「……」


 対人戦もできないわけじゃないけど、これは断らなきゃ……。


「よいやみ、それはできないよ」

「どうしてっすか?」

「僕の剣技を知っているでしょ?」

「……あ!?」


 よいやみも気付いてくれたみたいだ。

 僕の剣技の師匠はヴァイス魔国の吸血姫ハインさんだ。

 ハインさんの剣技は暗殺剣(・・・)

 そして弟子の僕も全ての攻撃が一撃必殺になっている。


「ちょっと待つっす。じゃあ、セブッソを殺すっすか!?」

「い、いや、殺さないよ!? 一対一ならどうとでもできるけど、多人数を相手にするとなると普通に一撃必殺を狙っちゃうから」

「そうっすか……。なら、あしが動くっすから、セブッソは頼むっす」

「うん」


 セブッソ相手には剣の腹を使えばいいけど……。

 あ、本当に弱かったら素手で戦ってもいいかもね……。

 その時は私兵と戦えるかな?

感想、気になる点、指摘、などがあればいつでもよろしくお願いします。

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