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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
四章 魔導大国編

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5話 ガスト王

次の話がなかなかまとまらないので、少し短くしました。

前に書いていた内容は忘れて頂けるとありがたいです。


 ガスト王は少し涙目になりながら、よいやみを見つめている。

 会えた事が嬉しいのだろう。

 それに比べて、よいやみの目は……うわぁ……蔑んだ目だ……。

 ガスト王は次いで僕に視線を移すのだが、何故か冷たい目で見られた。

 そんなガスト王にエスタさんが声をかける。


「やしゃ様……何をされているのですか?」

「エスタよ。それはこっちのセリフだ。なぜよいやみちゃんが帰って来たのに、わしの所ではなくお前の所にいるのだ?」


 エスタさんが答える前によいやみが答えた。


「今回帰って来たのは、エスタさんに用事があったからっす。親父に会うつもりは無かったっす」

「な、何ぃ!?」


 ガスト王はよいやみの言葉にショックを受けている。


「わ、わし……一応王だから、役に立つのに……」

「親父は頼りにならんっす。それに比べてエスタさんは頼りになるっす」

「はぅわ!?」


 よいやみの言葉がとどめになったらしく、ガスト王はその場に崩れ落ちた。

 それを見てエスタさんは溜息を吐く。


「陛下。よいやみ様だけではなく、お客人も一緒なのです。貴方は大国の王なのですよ。そんな情けない姿はやめて頂きたい」

「ぐぬぬ……。きゃ、客といっても、どこの馬の骨かもわからんおと……こ? どういう事だ? わしには小娘に見えるのだが……」

「小娘とは失礼っす。みつきはあしの恋人っす」

「だから、どうしてそんな嘘を吐くの!?」

「う、嘘?」


 ガスト王の顔が少しだけ明るくなる。

 そんな姿を見てエスタさんは呆れかえっている。


「もうバレてしまったのなら仕方ありません。陛下、やと様も妹姫に会いたいでしょう。王の執務室で話をしましょう」

「そ、そうだな。じゃあ、わしの執務室に行こうか」


 てっきり一緒に執務室に行くのかと思ったのだが、ガスト王は「よいやみちゃんの歓迎の準備をする」と言って走り去ってしまった。

 それを止める為にエスタさんもガスト王の後をついて行く。


 エスタさんの部屋には僕とよいやみだけが残された。


「ねぇ、よいやみのお父さん……ガスト王っていつもああなの?」

「そうっすよ。あしがウザいと言っていた意味が分かったっすか?」

「あ……うん」


 ガスト王には悪いけど、アレはウザいと思われても仕方がない。

 よいやみは面倒くさそうに「アロンに帰ってもいいっすかね?」と言い出した。


 流石に今帰ると更に面倒な事になりそうだから、一応よいやみを説得する。


「はぁ……じゃあ、案内するっす」


 僕とよいやみが廊下を歩いていると、前から綺麗なドレスを着た女性が歩いてくる。

 女性は僕達を見つけると、駆け寄って来た。


「あらあらあらあら」


 近くで見ると、綺麗な人だなぁ……。

 いつきさんよりも少し明るい茶色の長い髪の毛で、顔も整っていてスタイルもいい。

 よいやみよりもお姫様に見えるよ。よいやみのお姉さんかな?

 

「よいやみちゃん? 帰ってきていたのね」

「お久ぶりです。レイチェル義姉様。コッソリ挨拶に行くつもりだったっすけど、親父にバレてしまったっす」

「ふふふ。よいやみちゃん、口調が荒いわよ。ここはお城の中だからね。誰に聞かれているか分からないからね」

「あ、そうですね。申し訳ありません」


 よいやみは慌てて口調を変えた。

 どうやら口調だけで揚げ足を取る人でもいるのかな?


「そう言えば、やと様から恋人を連れて帰ってくると聞いていたんだけど……その子がそうなの?」

「私の恋人のみつきです」

「ちょっ!?」

「ふふふ。可愛らしい恋人ね。今日はお城に泊まるんでしょ? 夜によいやみちゃんのお部屋に行かせて貰うわ。アロン王国での活躍を聞きたいからね。せいな様とやよい様もよいやみちゃんの帰国と恋人を楽しみにしていたわよ」

「わかりました……夜にお待ちしています」

「じゃあ、また後でね」


 レイチェル様と別れた後、よいやみから恋人と紹介するのを辞めろと抗議したんだけどよいやみはこれを無視する。それどころか、「既成事実を作るっすか?」と意味の分からない事を言い始めた。


「あのレイチェル様って綺麗だよね」

「そうっす。アレがやと兄様の婚約者っす。ローレルに勝てると思うっすか?」

「あ……」


 確かローレルさんはよいやみのお兄さんに言い寄ったんだっけ?

 僕はローレルさんの姿、言動、行動を思い出す。どこを思い出しても、ローレルさんがレイチェル様に勝てると思えない。

 ローレルさんが、ちゃんとしたお姫様だったなら……それでも勝てると思えないや。

 あんな人が婚約者なのに、よく横やりを入れようとしたよね。ある意味凄いよ。


「くくく……。正直に言っていいっすよ」


 よいやみはとても楽しそうだった。



 執務室に入るとソファーがあって、真ん中にガスト王。その近くによいやみと同じ金髪の青年が座っている。ガスト王の斜め後ろにはエスタさんが立っていた。

 この男性が、よいやみのお兄さんのやと様かな?


「よいやみ。久しぶりだね。そちらのお嬢さんが手紙に書いていた恋人かな?」


 だから、なんで恋人とか書いてるんだよ。


「なに!? よいやみちゃんに恋人など不要だ!!」

「陛下は黙っていてください。お二人共そちらにお座りください」

「「はい」」


 僕達もソファーに座ると、エスタさんが紅茶を淹れてくれる。

 紅茶を淹れ終わると、エスタさんは元の場所に戻る。

 まずはやと様が口を開いた。


「まずは僕が自己紹介をしようかな。魔導大国ガストの王太子、よいやみの兄のやとです。よいやみがお世話になっているね」

「は、初めまして、みつきといいます」

「やと兄様お久しぶりっす」


 ガスト王を見た時はガストの王族を少し心配したけど、やと様は優しそうな人だ。

 次にガスト王が口を開いた。


「わしがガスト王のやしゃだ。早速聞こう。小娘。よいやみちゃんとどういう仲だ?」

「え?」

「恋人同士っす」

「だから、違うって!!」

「こ、恋人……。わしは認めんぞぉ!!」


 だ、だから、話を聞いて?

 ただでさえややこしくなりそうなのに、よいやみが更に余計な事を言う。


「別に認めて貰わんでいいっす。みつきとはこれからも仲良くやるっす。もうガストには帰ってこないっす。」

「そ、そんなぁ……」


 ガスト王はその場で落ち込む。

 その後に何かを言おうとするが、やとさんに止められていた。


「私からもよろしいですか?」


 エスタさんが先程までの優しい目ではなく、意志が強そうな目で僕とよいやみを見る。


「先程の話の続きを聞きたいのです。アロン王国に聖女が現れたというのは本当でしょうか?」


 僕はよいやみを見る。

 ここは僕が話すよりもよいやみが話した方が良いのかな?


「ん? 何の話だ?」


 ガスト王が顔を上げエスタさんを見る。


「先程陛下が邪魔をしたせいでちゃんと聞けなかったのですよ。アロン王国に聖女が現れたと聞きました。その真偽を確かめようと思いましてね」

「聖女か……」


 やと様も俯いて何かを考えている。

 そして顔を上げて、にこやかに笑う。


「よいやみ。説明してくれるかい?」

「はいっす」


 よいやみはいつきさんの事を説明する。

 まず、自分は勇者パーティ《黒女神》の一員である事を話した。

 聖女の事や、アルテミスの事も説明している。

 黒女神の一員という事は、人魔王の討伐にかかわっている事を意味している。

 だからか、よいやみは人魔王の事も説明した。


 しかし、人魔王の事はアロン王国の話になるのに勝手に話して良いのだろうか?


「みつき、何を心配しているかは知らんっすけど、ちゃんとレオン陛下から許可は貰っているっすよ。当然、あの事も話す予定っす」

「あの事?」


 もしかして、ヒヒイロカネの事かな?

 それとも魔大陸の事かな?


「まぁ、みつきは黙って聞いているっす。恋人云々はあしの趣味っすけど、これ以上話をややこしくはしないっすよ」


 ちょっと信用できないけど、僕はそれを信じる事にする。


「親父も、やと兄様もすでに知っていると思いますが、アロン王国にヒヒイロカネの勇者が現れました」


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