表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
四章 魔導大国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/140

1話 船旅での出会い

誤字報告いつもありがとうございます。


 ソーパー王国での騒動を解決した一週間後、僕とよいやみは魔導大国ガストのあるオデット大陸に向かう船に乗っていた。

 今回のよいやみの帰国は、先日ソーパー王国で宰相のアストロさんと騎士団長のフラーブさんの養子を探すとよいやみが自身が約束したので、ガストに孤児を探しに行くのが目的だ。

 ガストに行くのはよいやみ一人でいいはずなのだが、よいやみの我が儘で何故か僕まで一緒に行く事となった。

 僕はアロン王国の勇者なので、本来は同盟を組んでいない国に勝手に行くのは好ましくはないそうだ。だが、今回はよいやみと一緒に行くので、ガストに行く事を王様に許可してもらった。

 いや、許可が出なかったら行かなくて良かったのに……。


 王様は今回の事を「助かった」と言っていた。

 アロン王国によいやみがいる事がバレてから、ガスト王から一度帰国を促すようにと何度も要請があったらしい。

 王様の話では、ガスト王は末娘であるよいやみにベタ甘らしくて、アロン王国に来ようとしていたらしい。

 王太子であるよいやみのお兄さんがそれを止めたそうだが、それからさらに要請が多くなったそうだ。

 王様も何度かよいやみに帰るように言っていたのだが、よいやみは悉く無視していたらしい。

 だけど、今回の事でようやく帰国してくれる気になってくれて良かったと言っていた。



 僕達が乗っている船は、巨大な風の魔法具を利用した大きな船で、速度も馬車の十数倍と速いらしい。それでもオデット大陸までは一週間かかるそうだ。


 本当はいつきさんに転移で送ってもらう予定だったのだが、連絡用の魔宝玉の有用性が世間に知られてしまったので、タチアナさんの勧誘に力を入れたいとの事で魔大陸に行ってしまい、船での移動を余儀なくされた。

 僕とよいやみは抵抗したのだが、帰りは迎えに行くと言われたので、行きだけは大人しく船旅を選ばされた。

 というよりも連れて行くだけなら転移魔法ですぐなんだし、何故船旅をしなきゃいけないのか良く分からない。


 ただ、いつきさんも僕達に悪いと思ってくれたのか、かなり良い船室を用意してくれた。

 本来はゆーちゃんも一緒にガストに行く予定だったんだけど、いつきさんと一緒に魔大陸に行くそうだ。


 しかし、船旅というのはここまで怖いモノだったんだね。

 最初は船の上だからと甲板に出て風を感じていたんだけど、そのうち体が震えだして、この部屋に帰ってくるのに結構な時間がかかってしまった。

 僕の水恐怖症はかなり酷いみたいだ。

 よいやみも僕と一緒に甲板にいたんだけど、僕が船室に戻ってから一時間も経たないうちに顔を青くして船室に帰って来た。


「どうしたの?」

「酔ったっす。気持ち悪いから寝るっす。みつきは船酔いはどうも無いんすか?」

「僕はまだ気持ち悪くないよ」


 このまま船酔いしなきゃいいけど、よいやみに担がれている時に酔っていたから、多分船酔いもするだろう。

 そうなる事を予想して、いつきさんが新開発した酔い止めポーションを用意してくれた。

 今回は味にもこだわったらしく、美味しいとの事だ。でも、それと引き換えに前の酔い止めは酔い防止にも使えたのに、今度のは酔ってからでないと効果がないらしい。


「よいやみ、酔い止めだよ」

 

 よいやみは酔い止めポーションを飲む。

 すると青い顔がどんどんと血色のいい顔色に戻っていく。


「みつき! 今回のは凄いっす」

「そうなの? 僕はまだ酔っていないから飲んでいないんだ」

「今回は甘いっす。ジュースみたいっす。もっと飲みたいっす」

「ダメだよ。今回用意してくれたのは四本。僕とよいやみで二本ずつだよ。効果は一週間は続くからこれは帰りの分。帰りはいつきさんが迎えに来てくれる予定だけど、万が一船で帰らなきゃいけなくなった場合に必要になるんだからね」

「分かってるっすよ。それよりもみつきは大丈夫なんすか?」

「僕は酔っていないよ」

「違うっす。さっきからベッドに三角座りしたまま、小刻みに震えているから心配しているっす」

「だ、大丈夫だよ」


 動こうとすれば動けるのだが、小刻みに震えるので船酔いが一気に来るのを恐れているのだ。

 流石にご飯とお風呂とトイレの時は動くしかないんだけど、それ以外はできるだけ動きたくない。


「本当に水がダメなんすね。船旅はみつきにとって地獄っすね」

「うん。僕もこうなると思わなかったよ……」


 小さい川とか、お風呂はどうも無いんだけど、大きな……特に底の見えない水が苦手みたいだ。

 そういえば、あの僕にトラウマを植え付けた川も底が見えなかったなぁ……。


「まぁ、お風呂にはあしが入れてやるっすから安心するっすよ」

「余計なお世話だよ。僕一人で入れるよ」


 ご飯の時間になって、僕はゆっくりと食堂へ向かう。

 すると業を煮やしたよいやみが僕を担いで食堂へ運んでくれた。

 そのおかげで酔いが一気にきて、トイレで吐いてしまった。

 普通の酔いより酷くて結局ご飯が食べられなかった。


 よいやみに部屋に運ばれてから、酔い止めポーションを飲むとスッキリした。相変わらず小刻みに震えるんだけど、今なら普通に動ける。

 さっきの苦しみを考えたら、とっとと酔って酔い止めポーションを飲んでおけば良かったよ。

 

 

 船旅も三日目。

 僕も随分と船に慣れたモノだ。今では甲板に出て海を見る事ができるようになった。まぁ、体の震えは止まらないけど、初日に比べれば遥かにマシだ。

 そういえば、この三日間気になっていた事をよいやみに聞いてみる。

 

「海にも魔物がいるはずなのに、この船は襲われないね」

「何すか? 襲われたいんすか?」

「違うよ。海の魔物からすればこんなに大きな船は格好の得物なのに何故襲って来ないのかな? と思ってね」


 海の魔物は凶暴なモノが多いと図鑑にも書いてあった。


「それは、海を渡る船には魔物避けの紋章が描かれているからっすよ」

「紋章?」

「アレ? みつきは紋章を知らないっすか?」


 紋章というのは、装備や道具に特殊なインクを使い模様を描く事で、装備や道具に属性や特殊な効果を付加させる事ができるそうだ。

 この船には魔物避けの紋章が書かれていて、魔物を寄せ付けないらしい。


「とはいっても、上級の魔物や王種にはあまり効果は無いんすよ。その為に、この船にも用心棒としてオリハルコンクラスの冒険者が数人、常駐しているらしいっすよ。まぁ、あしらの方がランクは上っすけどね」


 よいやみはオリハルコンだけど、僕は一応ヒヒイロカネだ。でも、一般の冒険者達はヒヒイロカネを知らない。だから僕も表向きのランクはオリハルコンだ。

 でも、この女神ランクはおかしいモノだよね。

 僕の方がランクは上だけど、全開魔力を使ったよいやみには手も足も出なかった。

 もしかしたらアルテミスなら勝てるかな? と思い、一度アルテミス化して戦ってもらったのだが、それでもよいやみは強かった。それなのにランクは僕の方が上っておかしい話だ。


「一つ聞きたいのだが」


 男性が僕達に声をかけてくる。

 その男性は細身だけど一目見て強いのがわかる。


「拙者はレギーナ帝国で冒険者をしているゴロクという。先ほど自分達の方がランクが上といっていたが、知っているのか?」

「え? 何をですか?」


 恐らくはランクの事だと思うけど僕はとぼける事にした。

 ヒヒイロカネというランクは秘匿なので、勝手に喋ると怒られる。


「ふむ。ギルドの中でも秘匿とされているから簡単に話さぬか。ならば、拙者の身分を話しておこう。拙者はガストのあるオデット大陸のさらに東にある国、レギーナ帝国の将軍をやっているでござるよ」

「将軍?」

「レギーナ帝国では軍事の最高指揮官の事を将軍と呼んでいるのだ。拙者のランクはオリハルコン。その上がある事も知っている。確かそのランクはヒヒイロカネ。伝説の鉱石の名だったな」


 ゴロクさんはギルドカードを見せてくれた。

 確かにそこには【職業:レギーナ帝国将軍】と書かれてあった。ランクはオリハルコン。間違いない。


「じゃあ、よいやみが言っていた、もしもの時の為の冒険者って……」

「拙者達の事だ。レギーナ帝国がこの船を護衛している。それで、拙者の質問に答えてくれぬか?」


 僕は迷ったが絶対誰にも話さないという約束をして貰って、話す事に決めた。



「な、なんと!? お主が噂のヒヒイロカネの勇者だったのか!?」

「噂?」

「あぁ、アロン王国に伝説の勇者【覇王】と同じヒヒイロカネの勇者が現れたと我が国の諜報員から報せが入ってな。もしアロン王国が敵に回った場合の事を考えて、拙者自ら真偽を確かめに来たのだ。だが、アロン王国のギルドも隠していたので、見つけられなかったのだよ」


 確かに、僕達はつい最近までソーパー王国にいた。

 だから、会おうと思っても会えなかったのだろう。

 アレ?

 僕が名乗ったのってかなり不味いんじゃ?


「アロン王国にスパイを入れている奴に知られては困るっす。ここで海に捨てておくのが良いっすね」


 よいやみは、臨戦態勢に入る。


「何か勘違いしていないか!? 拙者達は何も戦争を仕掛けるわけではない。むしろアロン王国と国交を結びたいと思っていのだ」

「何故っすか?」


 アレ?

 急にゴロクさんの雰囲気が変わった?

 もしかして、戦うつもり?


「それをお主に言うと思うでござるか? 魔導大国ガスト第六王女よいやみ姫」

「ははは。あしの正体を知っていたっすか。ガストとレギーナは停戦状態だったっすねぇ……やっぱりここで消しておくっすか?」


 二人から殺気があふれ出している。

 えぇ!?

 よいやみどうしたの!?

 こ、これどうしたらいいの!?

四章の始まりです。

旧クジ引きの道筋から大分離れているので、よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ