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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
三章 異国の教会編

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16話 女神セリティア1


 カレンとアディさんが、黒女神の拠点であるいつきさんのお店に来て三日が経った。

 僕としては、二人が早く加入できるように、ソーパー教会に乗り込みたいんだけど、シスタークリスがソーパー王国にいるらしいので今はまだ動けない。

 二日ほど前にいつきさんが、タチアナさんから連絡用の魔宝玉を譲ってもらえたらしく、王様とソーパー王に渡したと言っていた。

 これで、ソーパー教会がいつ動いても対応できるとの事だ。


 ソーパー王国の教会に突入するのは、ソーパー王の連絡が来てからでいいかもしれないけど、セリティア様だけは先に召喚しておいた方が良いのでは? と聞くと、いつきさんは苦笑いを浮かべていた。

「教会の事情もあるけれど、教会にソーパー教会の回し者がいるかもしれないのですよ」との事で、迂闊に動けないそうだ。


 まぁ、動きようがないのなら、僕はいつも通りのお仕事をするだけだ。


「さて、今日も狩りに行こうかな」

「あ、みつき」

「アディさん」

「アディでいいって。それより狩りか?」

「うん。ソーパー王からまだ連絡も無いし、シスタークリスもソーパーから帰ってきていないからね」

「アロン王国王都からソーパー王都まで高速馬車で二日だっけか? シスタークリスって人がソーパーにいる間は大司教は動かねぇのか?」

「いつきさんの話では動かないみたいだよ。大司教にしてもシスタークリスにしても、お互いの関係が表に出るのは良しとしていないみたいだしね。でも、いつきさんはもう知っているのにね」

「あぁ、そうだな。それよりも魔大陸に狩りに行くんなら、グレートビーストを追加で三匹頼めるか?」

「ん? えっと……常時依頼の二匹と合わせて五匹狩ってくればいいって事だね。もしかしたら、一匹か二匹になるかもしれないよ」

「それでも構わない。もし、余分に取れなかったら取れなかったで問題はないよ。それよりも、いつきに言っておいて欲しい事があるんだけど」

「え? 何を?」

「グレートビーストの牙を何かに利用できればと思ってな。でも、俺には鍛冶の能力はない。だから、鍛冶師を雇うなりなんなりしてくれねぇか? と聞いておいてくれ」

「うん。分かったよ」


 アディさん達が来てから三日だけど、カレンもそうだけど、アディさんはもう僕達に馴染んでいる。

 僕はアディさんと別れて魔大陸への転移魔法陣へと向かう。

 すると、よいやみが僕を呼び止めた。


「みつきー。待つっす」

「なに?」

「今日の狩りは中止っす。いつきから、すぐに帰って来いと連絡が入ったっす」

「え? でも、アディさんと約束したし」

「アディも知ってるっす。早く来るっす」


 僕はよいやみの肩に担がれる。


「ちょ、下ろしてよ」

「それは出来ないっす。みつきは変なところで強情っすっから、無理やり連れて帰って来いって言われているっす」

「いや、ちゃんと帰るから」

「ダメっす。あしが走った方が速いっす」


 そう言うと、よいやみはお店に向かって走り出す。

 よいやみに出会ってから何度か担がれているけど、走られるのはものすごく揺れるから大っ嫌いだ。気持ち悪くなる。


 下ろせと暴れているうちにお店に着いた。

 お店に着くとよいやみは僕を下ろしてくれる。地に足をつけた瞬間、吐き気がする。


「うぅ……気持ち悪い」

「だらしないっすよ。みつき、これを飲むっす」

「これ何?」

「いつきが開発した酔い止めポーションっす。不味いから気を付けるっすよ」

「吐きそうなのに不味いの? 絶対吐くよ」

「大丈夫っす。飲んだ瞬間、酔いは消えるっす」

 

 うぅ……。

 僕はこの液体を飲んでみる。

 うわっ……。

 確かに飲んだ瞬間に吐き気と目が回るのは収まったけど、口の中は苦いような甘いような変な後味が残る。

 こ、これは……。

 僕が嫌そうな顔をしているとよいやみが優しく笑う。


「みつき、悲しいけど半日はその後味が残るっす」

「ちょっ……お昼ごはんが最悪になるじゃないか!!」

「そうっす。最悪になるっす。それ以前に教会に行くらしいっすからお昼ご飯は食えないっす」


 カレンがお昼ごはん担当になってくれたおかげで、お昼ごはんが楽しみだったのに。


 お店に入ると、いつきさんとゆーちゃん、それにカレンとアディさんの二人も揃っていた。


「アディさん。ごめんね」

「いや、教会(こっち)の方が大事だろ」

「みつきさん、よいやみさん。先程シスタークリスがこちらに向かい走り出したそうです。明日の夜にはこちらに帰ってくるでしょう」

「じゃあ、今日セリティア様を召喚するの?」

「はい。今から教会に向かいます。シスタークリスを捕らえるのは、彼女が帰ってきてからです。カレンさんとアディさんはこの家にいる間は安全なので、今日と明日だけはお店から出ないでください」

「あぁ、俺達は大人しくしているよ。あんた達も気をつけなよ」

「はい。あ、アディさんに一言良いですか?」

「ん?」

「今日帰ってくるときに一人増えていますけど、その子を馬鹿にしちゃいけませんよ」

「ん? あぁ、子供の相手は得意だぜ。ってか、なんで俺だけに言うんだよ。」

「ふふふ……」


 子供って、誰だろう?

 それよりも、聞いておきたかった事を聞いておこう。

 

「いつきさん。どうしてシスタークリスがこっちに帰ってくるまで待っていたの? ソーパーの教会に二人が集まっている時に乗り込めば一網打尽だったんじゃないの?」


 僕がそう聞くとよいやみが呆れた顔をしている。

 何だよ。

 僕がよいやみを睨むといつきさんが優しく教えてくれた。


「それも考えていたんですが、ソーパーにシスタークリスがいるといろいろと問題が起こるのですよ」

 

 いつきさんが言うには、他国から派遣されたり礼拝に来る人は国に報告しなきゃいけないそうだ。いや、その為に入国審査があるのだ。でも、シスタークリスは大司教との親子関係を知られたくないみたいなので密入国したらしい。

 本当はそれだけでも犯罪なのに、僕達がソーパーの教会を潰したとした時、シスタークリスがその場にいると、アロン王国に責任を言及してくる貴族が出てくるかもしれないとの事だ。


 僕達が教会の前に行ってみると、いつもは礼拝に訪れたセリティア教の信徒さん達がいるのだが、今日は閑散としている。

 いつきさんに聞いてみると、えりかさんに事前に連絡して、一般の人や信徒の皆さんの礼拝は禁止にしてくれたようだ。

 禁止にしたら、それこそ大司教に知られるんじゃないの? と思ったんだけど、教会では巫女の調子や何かの問題が起きた時に教会内で秘密裏に問題解決をするために、一般の礼拝者を礼拝禁止にするという事は良くあるそうだ。だから大司教に知られる事は無いらしい。


 教会の入り口ではえりかさんが僕達を待っていた。


「いつき様。お待ちしていました」

「はい。準備は出来ていますか?」

「はい。今、教会の中には巫女以下の者はいません。セリティア様を呼び出したとしても外部に漏れる事は無いでしょう」

「はぁ……セリティア様の姿を一般の人に見せるわけにはいきませんからね」

「……はい」


 いつきさんとえりかさんは苦笑いを浮かべている。


 僕達は教会の中に入る。

 ここの教会には浄化の灰を貰いによく来るけど、いつも人であふれているからじっくりと見た事は無い。

 あ、ステンドグラスが奇麗だ。

 描かれているのがセリティア様かな?


 ステンドグラスには、金髪の長い髪の毛の美女が描かれている。翼の色は金色で二対四枚の翼が描かれている。と思ったら、一番目立つところにもセリティア様の像が置いてあった。

 スタイルもいいみたいで、今から会うのが楽しみだ。


『あまり期待しない方が良いですよ』


 え?

 アルテミスが期待するなって?


 そういえば、いつきさんもセリティア様はぐうたらだと言っていた気がする。


「どうしたんすか?」

「うん。セリティア様の像が気になって」

「あぁ、あの像はガストの教会にもあったっすよ。それにステンドグラスの絵の複製って結構な数が出回っているらしいっすね。あしも何枚か持っているっす」

「そうなんだ。僕も欲しいな……」


 僕とよいやみがセリティア様の像を見ながらしゃべっていると、いつきさんが「あと数分後に、その意見がガラッと変わりますよ」と呟いた。


「え?」

「どういう事っすか?」

「それは召喚した後のお楽しみです」


 いつきさんは唇に指を当ててくる。

 いつきさんについて、祈りの間と書かれた部屋に入る。

 その部屋は小さな部屋で魔法陣が敷かれ、やはりセリティア様の肖像画が飾られていた。


「この部屋で巫女はセリティア様と交信するんですよ。私の場合はセリティア様の気分で声をかけてくるんですがねぇ……」


 いつきさんは少しだけ呆れたように魔法陣の真ん中に膝を立てる。


「セリティア様、セリティア様……いらしたら、というよりも暇でしょうから声を聞かせてくださいな」


 ひ、暇だからって!?

 い、いや、そんな事を言ったら、セリティア様が怒るんじゃないの?


「はぁ……早く出て来なさい!! セリティア様!!」


 えぇーーー!!?

 い、いつきさん、何言ってるの!?


『は、はいぃいいいいい!!』


 え?

 今の声って……セリティア様の声って僕達にも聞こえるの?

 よいやみとゆーちゃんを見るとキョロキョロとしている。


「セリティア様。こちらに来れますか?」

『え? 何かあったの?』

「はい。あのババアがやらかしているそうです」

『あ? 分かったよ。すぐに行くから待ってて』


 セリティア様がそう言うと、セリティア様の肖像画が光り輝く。

 すると、そこから金髪の長い髪の毛をツインテールにした、目つきの悪い子供が現れる。ピンク色のワンピース姿が可愛い。

 背はゆーちゃんよりも少しだけ大きいかな?


「いつきー。来たよ」

「セリティア様、お久しぶりです。でも、そんな恰好で来るなんて……お説教が必要でしょうか?」

「ちょ、ちょっと待ってよ。お昼寝中だったんだよ!! すぐに来たのを褒めてよ!!」


 え?

 こ、この子がセリティア様……?


「しょ、肖像画詐欺っす……」


 よいやみの呟きに僕は無言で頷く。

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