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クジ引きで勇者に選ばれた村娘。後に女神となる。  作者: ふるか162号
二章 人魔王編

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20話 魔法具屋にて


 嫌々特訓に向かうみつきさん達を見送った後、私達も魔法具屋へと出かける事にします。


 魔法具屋さんには、私とゆづきちゃん、それにルルさんにはるさんの四人で向かいます。

 私達三人はともかく、はるさんは、賢者と呼ばれているほどの人です。何を教わるのかと思っていたのですが、クロウディアさんの魔法研究が気になって仕方ないそうです。


 魔法職の人は、独自に魔法の研究をしている事が多くて、私やルルさんもそうですが、ゆづきちゃんも自分の魔法を研究したりしています。

 

 私の場合なんですが、今、一番重要視している研究は、ポーションの研究です。

 ポーションは、薬草に比べると効き目こそ薄いですが、非常に安価で大量に作る事が出来ます。とはいえ、私の研究に使うポーションは普通の方法では作れませんので、お父さんが魔大陸に行った時に採取してもらっていました。

 しかし、今は魔大陸にいるのです。材料がそこら中にあるので、私の研究もはかどります。

 それ以外にも空間魔法の研究などもしていますが、まだ完成していませんから誰にも話す事は出来ません。


 私達が魔法具屋に着くと看板に《本日臨時休業》と書かれた紙が貼られています。

 アレ? 休みですか?

 それとも、私達が来るので臨時休業にしてくれているのですかね。


 私は魔法具屋さんの引き戸にノックします。

 しかし反応はありません。仕方ないので、戸を引いてみると開いたので、クロウディアさんを呼びます。

 すると、体調が悪いのか、顔色の悪いクロウディアさんがだらしない格好で出て来ました。

 

 私はすぐにゆづきちゃんの目を手で塞ぎます。

 ゆづきちゃんは突然の事に驚いていますが、暴れる事はしません。私が無意味にこんな事をしないのを知っているからでしょう。


「クロウディアさん!! 服を着てください!!」


 私はだらしない格好のクロウディアさんに叫びます。

 クロウディアさんは、上半身裸で下は下着のみで私達を出迎えました。

 同性とはいえ、こんなものをゆづきちゃんに見せるわけにはいきません。


「あぁ~。大声出さないで……二日酔いで頭が痛いのよ~」


 はるさんは、クロウディアさんが情けないのか、杖で頭を何度も叩いて奥に着替えに行かせます。

 しかし、アレですね。

 もう五十近いと言っていましたが、見た目は三十代前半の女性があんな格好で出て来たら、男性は虜になるでしょうね。


 みつきさんのお母さんお話では、今でも一定のファンがいるそうで、ヴァイス魔国にも魔法具屋はあるのですが、クロウディアさん目当てで、わざわざこの店まで買いに来る人もいるとか……。

 商売人としては、店員の固定ファンと言うのも大事という事ですかね。


 私は決めました!!


 よいやみさんを教育して、お店に立たせましょう。

 よいやみさんは、黒姫一行の中でも圧倒的に男性ファンが多いですから、客寄せに協力してもらいましょう。


 あぁ、店に来て何も買わないという選択肢を無いですよ? そんな事を私が許すとでも?


 売り上げも上がる分、よいやみさんのお小遣いも上がるので、どっちもお得です。


「いつきちゃん、ルル、ゆづきの嬢ちゃん入っといで」


 はるさんから、クロウディアさんの着替えが終わったので、店の中に入るように言われました。

 店の中では、頭を押さえているクロウディアさんと、杖で頭に追撃を加えているはるさんがいました。


「師匠!! もう反省したから頭は叩かないで。二日酔いに響く!!」

「やかましい! お前は、あの頃から何も変わっとらんのぉ!!」


 聞けば、クロウディアさんははるさんの弟子をしていた時期があるそうで、その頃からこんな性格だったそうです。


「あ、そうです」


 二日酔いと言えば、まだ実験中ですが……。

 私は道具袋から、瓶を取り出します。そしてクロウディアさんに「飲んでみてください」と渡します。


「これは?」

「まだ、実験中ですが《酔い止めポーション》です。まだ、研究中なので効果があるかどうかは分かりませんが……父で試した時は、効いていたみたいです」

「え?」


 クロウディアさんは、私を疑うような目で見てきます。

 大丈夫です。飲んでも死ぬ事は無いので……。


「ほれ、アロン王国の聖女の慈愛による施しじゃ。飲め!!」


 はるさんが飲むように催促します。


 別に聖女の施しみたいな大層なものではないんですけどね……。


 クロウディアさんは、意を決して酔い止めポーションを飲みます。飲んだ瞬間にクロウディアさんの顔が歪みます。美人さんのして良い顔じゃありませんよ。


「このポーション不味いわねぇ……でも酔いはマシになったわ。ありがとうね。アドバイスをするのなら、次は味にこだわってみてはどうかしら?」


 味ですか……。

 今までは数を実験できないので、効果ばかりを見て、味にまで手が回っていませんでしたが、これからは味にもこだわってもいいかもしれませんね。


 私達は二日酔いから復活したクロウディアさんに連れられ、地下へと案内されます。

 魔法具屋さんの地下ならば、研究室か何かですかね?

 クロウディアさんが扉を開けると、そこには地下にあるとは思えないくらいに広い荒野が広がっていました。

 これを見た瞬間、はるさんがクロウディアさんを怒鳴ります。


「お前!! また、禁術に手を出しておったか!!」


 禁術? これがですか?


「はるさん、落ち着いてくれませんか? 空間魔法は禁術ではないでしょう?」

「空間魔法は禁術ではない。しかし、人間が入る事が出来る(・・・・・・・・・・)空間魔法は禁術に指定されておる!!」


 そうなんですか?

 私も空間魔法で中を広げたテントを開発中ですが……。


「いつきちゃんも、こんな研究をしておるんなら、今すぐ止めるのじゃ!! 時の番人が来るぞ!!」


 時の番人ですか……。

 おとぎ話の人達ですよね。

 なんでも世界のルールを外れた者に粛清しに来るという。


「師匠、大丈夫よ。アイツ等が禁止しているのはこれの流通。個人で仲間内に使う場合は問題ないわ」


 クロウディアさんまで、まるで時の番人がいると言っているみたいに……。

 もしかして……?


「時の番人がいるんですか?」

「いるわよ」「おるぞ」


 二人から肯定の言葉が出てきましたね。

 もし、いるとするならば、私達は危険という事になります。

 それはゆづきちゃんの存在です。


 ゆづきちゃんは、禁術である甦生魔法と即死魔法を気分で使っている。もし時の番人がいるのならば、これは物凄く危険ですねぇ……。


「ゆづきちゃん、時の番人がいるのならばゆづきちゃんの魔法は大変危険です。分かりますか?」

「ぜんぜん、いうこときくきない」


 そうです。この子は自分が気に入らない事は聞こうとしないのです。

 これは困りました……。


「どういう事かしら?」


 クロウディアさんが興味深そうに聞いてきます。

 私は、ゆづきちゃんの使う魔法について説明します。すると、はるさんも驚いた様子でゆづきちゃんの説得に回ります。


「はぁ……仕方がないわね。ゆづきちゃんにはゆづきちゃん専用の先生を用意する必要があるわね。そこは私に任せておきなさい。時の番人を黙らせるほどの先生を用意するわ」


 後日、ゆづきちゃんの為に異世界(・・・)から先生を呼んでくれる事になりましたが、まさか、その先生の影響で、ゆづきちゃんが更に凶暴になるとはこの時は想像していませんでした。


 私達はその後、クロウディアさんから属性魔法と空間魔法、ルルさんは蘇生魔法を教わり、その日はみつきさんの家に帰りました。


 家に帰ると、ボロボロのみつきさん達がいたので、ポーションを二個渡します。

 よいやみさんはポーションを知っているのですぐに飲みましたが、みつきさんは警戒している様でした。

 そして、味のせいでのたうち回るよいやみさんを見て、そっとポーションを返してきました。


 やはり、味の研究はした方が良いですね。

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